2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Integrative system of autonomous environmental signal recognition and memorization for plant plasticity |
Project/Area Number |
15H05963
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
角谷 徹仁 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (20332174)
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Project Period (FY) |
2015-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | エピジェネティクス / DNAメチル化 / ヒストン修飾 |
Outline of Annual Research Achievements |
プロモーターのクロマチン修飾は遺伝子発現のON/OFF状態の記憶に働く。一方、多くの真核生物で、遺伝子のコード領域にもクロマチン修飾がみつかるが、その機能は未解明である。本研究では、遺伝子内のクロマチン修飾に影響する変異体を用いた遺伝学とゲノミクスによるアプローチで、環境に対する応答性や細胞増殖の文脈で遺伝子内クロマチン修飾の制御機構と役割とを研究することを計画している。我々は、活性な遺伝子の内部に抑制目印が蓄積するシロイヌナズナの変異体を用いて、遺伝子内部におけるクロマチン修飾の制御と意義にアプローチした。シロイヌナズナの変異体ibm1では、多数の活性遺伝子の内部にH3K9meやDNAメチル化が蓄積し、それにともない発生異常が引き起こされる。今回の研究では、ibm1変異体背景であるにも関わらず発生異常が生じない新たな変異体を同定し、これを用いることで下流経路の理解を目指した。同定された変異体の原因遺伝子であるLDL2はヒストン脱メチル化酵素をコードしていた。ヒストン修飾解析などから、LDL2が遺伝子内部の修飾による転写抑制を仲介することがわかった。興味深いことにLDL2は、H3リジン4のモノメチル化(H3K4me1)を遺伝子内部において減少させることで転写抑制を引き起こしていた。同様の経路が多くのトランスポゾンでも働いていた。動物ではH3K4me1はエンハンサーの修飾と考えられているが、本研究は、遺伝子内部のH3K4me1の重要性を示した。また、ibm1による発生異常にともない病害応答関連遺伝子の活性化が起こる。遺伝子内抑制クロマチンと病害応答経路の関連は、今後の重要な研究課題になると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定したように研究が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は以下の研究を計画している。 (1) 転写されている遺伝子の内部のDNAメチル化の機能についての研究を進める。CGメチル化酵素変異体を用いたアプローチをとる。なぜか遺伝子内CGメチル化の分布はH3K4me1と強い相関があるので、このつながりの意味を理解する。 (2) シロイヌナズナの変異体でH3K4me1に影響するものを探す。 (3) 遺伝子内抑制クロマチンと病害応答のつながりの理解を目指す。ゲノミクスと遺伝学的なアプローチをとる。
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Research Products
(7 results)