2018 Fiscal Year Annual Research Report
Reconstruction of ancient Chinese food culture based on ethnoarchaeology and chemical analyses of food resiude
Project Area | Rice Farming and Chinese Civilization : Renovation of Integrated Studies of Rice-based Civilizations. |
Project/Area Number |
15H05967
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Research Institution | Hokuriku Gakuin University |
Principal Investigator |
小林 正史 北陸学院大学, 人間総合学部(社会学科), 教授 (50225538)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
細谷 葵 お茶の水女子大学, グローバルリーダーシップ研究所, 特任准教授 (40455233) [Withdrawn]
庄田 慎矢 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 主任研究員 (50566940)
村上 由美子 京都大学, 総合博物館, 准教授 (50572749)
西田 泰民 新潟県立歴史博物館, その他部局等, 参事 (80172667)
大川 裕子 日本女子大学, 文学部, 研究員 (70609073)
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Project Period (FY) |
2015-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | 理化学的分析 / 民族考古学 / 中国初期稲作社会 / 広範囲経済 / 田螺山遺跡 / 良渚遺跡 / 木器 / ススコゲ |
Outline of Annual Research Achievements |
A03 班では、寧紹盆地(田螺山遺跡)と太湖平原(良渚遺跡群など)の調理道具遺物の分析から初期稲作期の食文化を復元・比較、その視点を通して、太湖平原で集約的な稲作社会が成立した要因を考察することを目的としている。 民族誌の比較分析は、長江下流域における野生植物の採集・保存方法と農業技術の研究(水管理についての文献研究を含む)と東南アジア地域における伝統的(薪と土鍋を用いた)米調理方法の比較分析の2面から実施した。細谷・大川が担当する前者では、寧紹盆地および太湖平原の農村部を対象として、聞き取り調査による人の記憶にある伝統技術の情報の収集と、民俗博物館などでの伝統農具・食品加工具などの視察を組み合わせた方法で実施した。その結果、聞き取り調査では、ヒシの茎の利用・水中保存・移植栽培、エダマメの燻製保存、ダイダイの乾燥保存、エダマメ・ダイダイを茶に混ぜて飲む習慣、自宅傍らの菜園でとれた青菜の塩漬け等、16~17 世紀の文献記載に残される植物の加工技術の一端を確認することができた。 後者の炊飯民族誌の比較分析(小林とA01班久保田が担当)については、2018年度は北タイの焼畑稲作民カレン族の約20村を調査した。その結果、「側面加熱を伴う湯取り法」が伝統的主食調理方法だったこと、および、具たくさん粥(カオブア)が現在でも多用されていることが確認された。 木器の分析(村上担当)では、図化と樹種同定を進めながら、竪杵・容器類・食事具や農具関連の木器の類例の把握を継続している。また、石斧による加工技術についても検討を深め、柱材に残る刃こぼれ痕が石器によっても生じることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度は、以下の点で新たな知見が得られた。 第一に、長江流域の野生植物利用についての民族誌調査では、浙江省ではドングリ・イモ・筍・ヤマモモなどが目立つ「陸生寄りのパターン」が観察されたのに対し、太湖周辺では水セリ・マコモ・クワイ・ヒシなどが目立つ「水生寄りのパターン」が観察された。このような民族誌における地域差は、新石器時代における寧紹盆地(河姆渡文化→塔山文化)と太湖平原(馬家浜文化→良渚文化)の地域差を解釈する上で参考になるであろう。 第二に、北タイの焼畑稲作民カレン族の民族誌調査では、「側面加熱を伴う湯取り法」が伝統的炊飯方法だったことが確認されたその結果、この方法が東南アジアの伝統的炊飯方法だったことが明らかになってきた。田螺山遺跡出土の球胴鍋では側面加熱痕が付くことから、同様の炊飯方法が用いられた可能性が高まった。 第3に、カレン族で確認された「具たくさん粥」では、①かつてはより高い頻度で調理されていた、②近年ではオカズの一種として炊いた米とセットとなって食される(鍋もオカズ用鍋を用いる)が、かつては「主食と副食を兼用する」調理として単独で調理し食された、という時間的変化が見いだされたことから、「主食・副食兼用の具たくさん雑炊は、米収量の少ない状況において多用される」という民族誌モデルが提示できる。この民族誌モデルは、田螺山の下層から上層への「具たくさん粥を調理したと推定される内傾タイプの減少と、湯取り法炊飯に用いられたと推定される球胴タイプの増加」の背景を説明するために有効である。 土器の供給体制を明らかにするための胎土分析(西田担当)では、茅山遺跡で脂質分析用に採取した器胎粉末をサンプルとして、蛍光X 線、LIBS による元素分析を行った。その結果、器形、器種に対応して胎土の元素濃度に違いが認められ、馬家浜文化の段階で複数の供給地が存在したことが確認された。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、田螺山遺跡・良渚遺跡群出土の遺物・遺構、民族誌の比較分析、理化学的分析という3者の調査結果を有機的に結びつけるために、以下の分析を行う予定である。 第一に、民族誌の比較分析は、長江下流域における野生植物の採集・保存方法と農業技術の調査(水管理についての文献研究を含む)と東南アジアにおける米調理方法の調査の2方向で実施されており、上述のような成果を上げてきた。今後は、①長江下流域における伝統的米(主食)調理方法の調査を進める、②東南アジアの各地における野生植物利用の調査を進める、などの点で、両者の調査成果を結び付けて、統合していくことが望まれる。 第二に、ススコゲ分析において明らかにされてきた「具たくさん粥と湯取り法炊飯の組合せが特徴の河姆渡文化期」から「蒸したウルチ米が主食となった良渚文化期」への変化について、脂質分析や同位体分析により検証していくこと必要がある。 第三に、河姆渡文化期に用いられた竪杵・収穫ナイフ・独楽・中空円筒木器(太鼓?)などの木製品について、考古資料の類例を探し、蓄積することに加えて、民族誌においても類例を蓄積し、制作方法や使い方を復元していくことが望まれる。
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Research Products
(21 results)