2016 Fiscal Year Annual Research Report
学校教育現場における無気力の規定因の解明:家庭環境と友人関係に着目した縦断的検討
Project Area | Creation and Promotion of the Will-Dynamics |
Project/Area Number |
16H06406
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
田中 あゆみ 同志社大学, 心理学部, 教授 (00373085)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村山 航 高知工科大学, 総合研究所, 客員准教授 (10748726)
榊 美知子 高知工科大学, 総合研究所, 客員准教授 (50748671)
鈴木 高志 高知工科大学, 共通教育教室, 准教授 (90725938)
村上 達也 高知工科大学, 共通教育教室, 講師 (00743791)
石川 信一 同志社大学, 心理学部, 教授 (90404392)
大谷 和大 北海道大学, 教育学研究院, 助教 (20609680)
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Project Period (FY) |
2016-06-30 – 2021-03-31
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Keywords | 無気力 / 動機づけ |
Outline of Annual Research Achievements |
28年度は,第一に,無気力に影響する主要な要因を探るために,また,必要な心理尺度の短縮版を作成する目的で,日本能率協会総合研究所に登録する全国のモニターから,2017年3月時点での中学生とその親1,000組を無作為に抽出し,2017年3月に調査を実施した。調査においては,まず,抑うつ,不安,ストレス反応,学校での幸福感,人生満足度など,無気力を多側面から測定した。また,無気力の規定因の候補として,睡眠・食事・運動などの生活習慣,基本的心理的欲求充足,達成目標,知能観などのヒューマン・モチベーションの要素,学習方略,主要な科目に対する興味の程度といった学習活動に関連する要素,また養育態度や親子関係に関連する要素,そして家庭の社会経済的地位といった属性などについて広く測定した。 第二に,学校教育現場における無気力に関する社会・神経的要因を検討するために,ある中高一貫校における中学1年生から高校2年生までの全生徒についての縦断的な調査を開始した。通常の質問紙に加えて,(1)誰がどの人の友人であるといったような友人のネットワーク情報,(2)一部の生徒からは機能的磁気共鳴画像法によって静止時・課題時の脳活動のデータについての第一回のデータ収集を行った。今後,学校における無気力感が生徒の友人関係を通して伝染していくという仮説を検証する際に,脳活動のデータを得ることによって,この伝染の効果が,脳活動のレベルでも見られる可能性を検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上述の第二の研究について,平成28年11月までに事前準備(実験計画),事前準備(対象校との打合せ),対象校生徒への脳イメージング調査の実施を行い,平成29年3月までに脳イメージング調査を完了させる予定であったが,脳イメージング機器(MRIスキャナ)が,機器を保持・メンテナンスする機関による予期せぬ交換・調整工事のためしばらくの期間使用不能になった。機器の交換と調整が完全に終了するまでに5ヶ月間を要したため,研究の進捗が遅れた。
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Strategy for Future Research Activity |
29年度は主に3つのことを進める。第一に,実際の学校現場において縦断調査を行うにあたって,調査対象者の負担およびデータの欠損を最小限に抑えるため,質問数を最小限に留める必要がある。そこで28年度に取得した調査データを用いて,本調査で用いる変数を精選するとともに,必要な尺度の中で標準化がされていないものについては標準化を実施すること,また,項目数が多い尺度については,短縮版を作成し,論文として公表することを目指す。 第二に,学校教育現場での無気力の規定因を探るための縦断調査を実施するために,複数の教育委員会および小・中学校にアプローチし,協力依頼をする。承諾が得られ次第,縦断調査を開始する。全体で1500名以上の協力を得ることを目指す。 第三に,生理指標を取り入れた研究のための予備調査を行う。本調査において予定されている経験サンプリング法は、心理学においてほとんど先例が見られない。心拍数等の生理指標との関連で経験サンプリング法を用いて本調査を行うため、その方法の開発を目的とした予備調査を行う。
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