2018 Fiscal Year Annual Research Report
フォノン科学による特異構造3次元分光評価と応用欠陥物性
Project Area | Materials Science and Advanced Elecronics created by singularity |
Project/Area Number |
16H06425
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
石谷 善博 千葉大学, 大学院工学研究院, 教授 (60291481)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
篠塚 雄三 和歌山大学, 学内共同利用施設等, 名誉教授 (30144918)
MA BEI 千葉大学, 大学院工学研究院, 助教 (90718420)
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Project Period (FY) |
2016-06-30 – 2021-03-31
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Keywords | 共焦点ラマン散乱 / LOフォノン / 励起子 / フォノン輸送 / ミスフィット転位 / 窒化物半導体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,フォノン系に着目した結晶欠陥を中心とする結晶構造解析およびフォノン制御を行う特異構造の提案、キャリアダイナミクス評価・制御方法の提案を目的としている。 励起子ダイナミクスでは,フォノン過程を取り入れた準位間のポピュレーション分布の解析コードを用いて,直感的に分かりにくい励起子準位間のポピュレーシ比の実験結果を解釈できることが分かった。また,LAフォノンより状態占有度が圧倒的に小さいLOフォノンが100-150K程度以上の温度で励起子準位の励起要因の主要素となることが分かり,LOフォノンを制御の主対象モードとした。共焦点ラマン分光による構造評価では,532nmと325nmのレーザの同時照射によりGaInN/GaN界面近傍のミスフィット転位近傍では熱伝導が低く,このためにGaInNからGaNへの熱輸送がブロックされてGaNの温度が上がりにくくなっていることが分かった。本ラマン分光測定系では266nmレーザも導入され,GaN層では1光子当たり11-12個のLOフォノンの放出が可能になった。これを用いて,金属-半導体ストライプ構造におけるGaN中の局所的フォノン‐励起子相互作用の解析が開始された。また,時間分解ラマン分光用のレーザおよび光学系が導入された。 深い準位については,赤色発光の基になる準位は上準位・下準位ともに局在準位にあること,電子遷移は輻射遷移が主過程であること,150Kまでは温度上昇によりこの遷移速度が早くなることが分かった。今後この発光をもたらす欠陥準位の構造についてラマン散乱などを用いて解析を進める。 金属-半導体ストライプ構造では,これまでプランク輻射に対する強度が小さかった6um幅のGaAsストライプ構造でもメサ高さを高くすることによりこの強度比を上げることが可能であることが分かり,この構造による電子‐フォノン相互作用制御の可能性があることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
[1] ラマン分光や赤外分光による特異構造評価手法の展開と応用では,2種レーザを導入したラマン散乱分光により熱輸送状態の解明をGaN上に成長したGaInN結晶を用いて行った。ミスフィット転位が熱輸送をブロックしている一方,膜内では観測精度範囲において温度上昇が均一であることが分かり,フォノン輸送解析が予定通り進んでいる。赤外分光ではH29までに構築されたFDTD計算コードを発展させて,金属-半導体ストライプ構造における輻射解析が進んだが,量子としてのフォノンの解析が今後必要であることが明確となった。 [2] フォノン工学からの結晶特異構造物性利用法の開拓では,金属-半導体ストライプ構造における局所フォノン場と励起子の解析が進んだ。これは当初の超格子の解析から変更されたが,特異構造としての重要性が高いとの判断から行った。超格子によるフォノン輸送制御については今後行う。結晶欠陥におけるエネルギー局在性について,GaNの赤色発光をもたらす欠陥種について解析が進み,格子振動エネルギーを吸収できる欠陥種であることが分かった。これらにより,特異構造の利用に関する検討が進められている。 [3] THz輻射を可能とする特異構造評価と輻射物性では,金属-半導体複合構造のTHz輻射の高効率化の過程でフォノン散乱と界面分極に着目した構造・物性評価が行われた。解析はまだ不十分であり,今後至急一定の目途を得る必要がある一方,2種LOフォノンを有する半導体での輻射が観測されるなどの新たな進展もあった。 以上に基づいて判断すると,当初より進展している部分と若干遅れている部分とがあり,総合的には概ね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
[1] 本研究におけるラマン分光・赤外分光評価手法の応用性の展開では,H30までの技術開発に基づき,AlGaN/GaN界面2次元電子ガスの散乱要因や電極/半導体界面の界面準位情報について,界面ポラリトンの分光やラマン散乱の2次元・3次限イメージングにより解析し,A01,A02へ情報を提供する。特にラマン分光では熱伝導の異方性の結晶面方位依存性に着目して特異構造評価を行う。金属‐半導体ストライプ構造による局所フォノン場を用いた評価手法を完成させる。 [2] フォノン工学からの結晶特異構造物性利用法開拓では,(2-1)フォノン局在を可能とする特異構造の提案と構造評価:量子井戸からの電子・正孔放出に着目してフォノン局在化による太陽電池の電流取り出し効率向上へ応用について検討を行う。 (2-2)フォノン排除を可能とする特異構造の提案と構造評価:特異構造によるフォノン排除機能の設計を進め,紫外発光素子や電子素子への応用について検討を行う。 [3] THz輻射を可能とする特異構造評価と輻射物性では,金属-半導体や高電子密度領域-絶縁領域の複合構造によるTHzから中赤外の光吸・放出特性とそれを決定する物理について展開を進める。
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