2019 Fiscal Year Annual Research Report
フォノン科学による特異構造3次元分光評価と応用欠陥物性
Project Area | Materials Science and Advanced Elecronics created by singularity |
Project/Area Number |
16H06425
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
石谷 善博 千葉大学, 大学院工学研究院, 教授 (60291481)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
篠塚 雄三 和歌山大学, 学内共同利用施設等, 名誉教授 (30144918)
MA BEI 千葉大学, 大学院工学研究院, 助教 (90718420)
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Project Period (FY) |
2016-06-30 – 2021-03-31
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Keywords | フォノン / 深い準位 / 2波長ラマン分光 / 表面マイクロ構造 / 励起子ダイナミクス / THz輻射 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、フォノンに着目した結晶欠陥を中心とする結晶構造解析およびフォノン制御を行う特異構造の提案、キャリアダイナミクス評価・制御方法提案を目的としており,2019年度は以下の進展があった。 励起子ダイナミクスでは、フォノン過程を取り入れた励起子ダイナミクス計算により励起子輻射速度の温度依存性の決定要因の解明が進められ,活性層n型ドーピングによる輻射効率の制御が可能であることが分かった。 共焦点ラマン分光による構造評価では,532nmと325nmのレーザの同時照射により熱発生箇所とラマン信号プローブ箇所を空間的に一致させた測定により,GaInN/GaN界面近傍のミスフィット転位近傍でGaInNからGaNへの熱輸送がブロックされてGaInNの温度が上がり易くなること,その温度上昇度の定量的解析が進んだ。この結果に関する論文はAppl.Phys.Lett.誌で注目論文に指定された。また,532nmパルスレーザから2倍波266nm光を生成するシステムが構築され,時間分解ポンププローブラマン測定システムの構築が進んだ。 GaNの深い準位について,禁制帯幅以下のエネルギーをもつレーザ励起により,深い準位による発光の上準位の選択的励起が可能であること,従来は可視光の発光のみが観測されてきたが,赤外発光成分が含まれることが分かった。今後,深い準位のエネルギー構造解明と局在準位の熱的励起と電子遷移の活性化に関する解析を進展できる。 金属-半導体表面ストライプ構造では,間接遷移型半導体では高電子密度試料でもLOフォノンに共鳴した中赤外輻射がなされること,GaInP混晶でメサ構造採用により電磁誘起透明化に繋がる2種LOモードに共鳴する赤外輻射の増強が得られた。GaAsではLOフォノン共鳴THz輻射強度のメサ高さ・ストライプ幅依存性が分かり,輻射強度増加手法に関する解析が進んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度交付申請に基づいて進捗状況を省みた。界面ポラリトンに関して,これまでにAlN/GaN界面などで研究を進めてきた。表面およびヘテロ界面に局在するポラリトンの挙動の解明が進んできた。一方で2次元電子ガスについては100cm-1程度以下の赤外分光が必要であることも分かった。しかし,実験的定量評価には達していない。ラマン散乱装置の空間分解における環境温度の安定度において厳しい要求があり,苦戦している。一方で,半導体表面での金属ナノ構造形成による表面近傍評価が進められており,代替的かつ簡便な方法の検討が進められた。これらの点からやや遅れているが対策がなされていると判断している。 キャリアや励起子とフォノン相互作用制御とその応用については,理論では輻射速度の決定機構について概ね解明がなされた点で研究が大いに進んだ。一方実験面では,量子井戸構造の検討までは及んでいない。表面マイクロ構造を用いたキャリア・励起子‐フォノン制御では,構造形成に時間がかかっており,特にアンドープGaAs/n-GaNのストライプ形成に苦戦している。この基礎検討としての高密度SiドープGaNの赤外・ラマン評価はほぼ終了した。一方で,禁制帯幅以下のエネルギーをもつ光による欠陥準位の励起を用いたフォノンと欠陥の相互作用評価が進められ,この点から熱制御に関する情報が得られた。構造形成に元なう欠陥生成などの点で難題が表面化し,対策は進められているが,デバイス構造応用を含めて結果的にやや遅れているものがある。 表面金属半導体構造ではフォノン系電磁誘起透明化に繋がるステップを着実に踏んでいる。この項目に関しては概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は,昨年度まで開拓してきたフォノン輸送評価手法をさらに展開し,転位における熱輸送評価を転位1本にまでの分解,ポラリトンなどを利用した界面近傍評価を進め,さらに超格子界面におけるフォノン輸送異方性評価を進める。これにあたり,ラマン分光装置の環境温度安定性を図るための高温壁の設置を行う。また時間分解ラマン分光の立上げを進め、時空間分解のラマン評価手法を応用する。励起子安定性について量子井戸構造におけるフォノン過程に着目した励起子ダイナミクス安定化と太陽電池におけるキャリア取出しへの方向性を得る。 一方,表面金属‐半導体マイクロ構造におけるキャリアーフォノン相互作用評価によりキャリアダイナミクス制御の可能性について検討を進め,どのような可能性があるかを実証する。この表面構造では,縦光学フォノンに共鳴したTHz波の発生が可能であることもすでに実証しており,その原理の解明を進め,輻射強度増加方法を明らかにする。 ラマン評価および赤外分光評価手法を紫外発光素子やHEMTに用いられるAlGaN系結晶評価に応用し,欠陥構造評価および熱的評価を行う。欠陥評価では昨年度立ち上げた深い準位を介した赤外波長域フォトルミネッセンス測定を行い,深い準位のエネルギー構造の解析を進め,電子遷移の熱的活性化過程の解明を行う。 以上より,フォノンに着目した結晶欠陥評価,熱的輸送評価,表面構造を用いたキャリアの熱的ダイナミクス制御・赤外輻射制御についてまとめ,特異構造についてフォノンの観点から展開する学術についてまとめる。
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