2017 Fiscal Year Annual Research Report
フラビウイルスの共生と進化に関与する宿主及びウイルス因子の解析
Project Area | Neo-virology: the raison d'etre of viruses |
Project/Area Number |
16H06432
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松浦 善治 大阪大学, 微生物病研究所, 教授 (50157252)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉住 朋晴 九州大学, 医学研究院, 准教授 (80363373)
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Project Period (FY) |
2016-06-30 – 2021-03-31
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Keywords | フラビウイルス / ウイルス粒子産生 / 共生 / 進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)C型肝炎ウイルス(HCV)及びペスチウイルスの粒子形成において宿主由来のアポリポ蛋白質とウイルス由来のNS1及びErnsが共通した機能を持つことを明らかにした。アポリポ蛋白質を欠損したHuh7細胞及びErnsを欠損したペスチウイルスのリバースジェネティクス系を用いてそれらの分泌蛋白質の共通した役割を解明し、その内容を報告した(PLoS Pathogens 2017)。このことから、フラビウイルス科ウイルスが進化の過程でウイルス粒子産生に必要な因子をウイルス由来と宿主由来で使い分けながら進化したことが予想される。さらに、分泌蛋白質の機能解析を進めるツールとして様々なフラビウイルス科ウイルスにスプリットnLucレポーターを搭載したウイルス(HCV、ペスチウイルス、デングウイルス、日本脳炎ウイルス)を作出し、報告した(J Viriol 2018)。さらに、最近NS1の機能を欠損したフラビウイルスの作出に成功し、現在ウイルス複製またはウイルス粒子形成に関与するNS1の変異体を探索している。 2)九州大学との共同研究によってペギウイルス陽性の臨床検体の収集を開始した。これまでに、肝臓移植後の患者ではペギウイルス陽性率が健常人と比べて明らかに高いことが明らかになった。また、ペギウイルス陽性末梢血単核球では非感染と比較してISGの発現が誘導されていることがRNA-seq解析から明らかになった。このことから、持続感染しているペギウイルスも症状は認めないものの、免疫応答に少なくとも影響を与えている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予想していた通り、フラビウイルス科ウイルスの進化の中における宿主またはウイルス由来の分泌蛋白質の使い分けが明らかになってきた。さらに、その中で最も重要な分泌蛋白質であるErnsとNS1の役割を解析するツールとして、様々なフラビウイルス科ウイルスでレポーターウイルスの作出に成功した。このことから分泌蛋白質から見たフラビウイルス科ウイルスの進化に関する研究は概ね順調に進んでいると思われる。 一方、ペギウイルスの研究に関しては、in vitroでの増殖系の確立が難航しているが、個体での役割が少しずつ明らかになってきており、この側面からペギウイルスの共生機構を解明しこうと考えている。このことからもペギウイルス研究も少し方向性が変わりつつあるものの、概ね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
1)フラビウイルスのNS1蛋白質はDimer及びHexamerをとるが、構造学的予測を利用し、Dimer形成及びHexamerフォームに関わる変異を同定する。また、それらの違いが複製複合体形成へ、またはウイルス粒子形成にどのように関与しているのかを明らかにする。 2)ペギウイルスの感染はISGの誘導に関わることを示してきた。その中でどのようなメカニズムで持続感染を可能にしているのかをin vitroで明らかにしていく。
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