2016 Fiscal Year Annual Research Report
ウイルス潜在感染による植物への環境ストレス耐性付与と生態系の恒常性維持の基盤解析
Project Area | Neo-virology: the raison d'etre of viruses |
Project/Area Number |
16H06435
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高橋 英樹 東北大学, 農学研究科, 教授 (20197164)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福原 敏行 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (90228924)
|
Project Period (FY) |
2016-06-30 – 2021-03-31
|
Keywords | ウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
鉱山地帯の河川流域に自生し、明瞭な病徴を示していないハクサンハタザオ(Arabidopsis halleri)から単離されたキュウリモザイクウイルス(CMV)Ho7-2c系統は、シロイヌナズナ(A. thaliana) ecotype Col-0にも無病徴感染する。この無病徴感染を決定するウイルスゲノム因子を決定するために、CMV(Ho7-2c)感染性RNA転写ベクターを構築し、病原性系統であるCMV(Y)との間で、Reassortantウイルスを作出し、シロイヌナズナに接種し、応答を解析した。その結果、CMV(Ho7-2c)のRNA2が、無病徴感染を決定していることが明らかになった。RNA2はタンパク質2aと2bをコードすることから、両コード領域を相互に置換したキメラウイルス作出し、シロイヌナズナにおける応答を解析したところ、2bタンパク質のコード領域がCMV(Ho7-2c)に由来するウイルスがシロイヌナズナに無病徴感染したことから、無病徴感染の成立には、CMV(Ho7-2c)RNA2の2bタンパク質コード領域が関与していることを見出した。CMV(Ho7-2c)とCMV(Y)のアミノ酸配列を比較すると、2アミノ酸(77残基目と106残基目)が異なっていたことから、いずれか一方のアミノ酸置換を生じたCMV(Y)系統、および2アミノ酸置換を生じたCMV(Y)系統を作出し、シロイヌナズナに接種したところ、2アミノ酸置換CMV(Y)のみが無病徴感染した。したがって、CMV(Ho7-2c)の2bタンパク質の2アミノ酸(77残基目と106残基目)置換が、無病徴感染を決定しているウイルス因子と考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、無病徴感染を決定しているウイルス因子の解析と、無病徴感染のより宿主植物に生じる生存戦略上のメリットを明らかにすることを最終目的としているが、当該年度の研究により、目的に一つであるウイルス因子を明らかにすることができた。よって、研究は、概ね順調に進展していると判断できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究では、無病徴感染を決定しているウイルス因子の解析と、無病徴感染のより宿主植物に生じる生存戦略上のメリットを明らかにすることを最終目的としていることから、現在、ウイルスが無病徴感染した宿主植物の網羅的遺伝子発現解析を、RNA-seq法により行っている。発現変動が認められた遺伝子が支配している宿主植物の形質を明らかにすることにより、無病徴感染宿主植物における生存戦略上のメリットを分子レベルで明らかにする計画である。
|