2018 Fiscal Year Annual Research Report
ウイルス潜在感染による植物への環境ストレス耐性付与と生態系の恒常性維持の基盤解析
Project Area | Neo-virology: the raison d'etre of viruses |
Project/Area Number |
16H06435
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高橋 英樹 東北大学, 農学研究科, 教授 (20197164)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福原 敏行 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (90228924)
|
Project Period (FY) |
2016-06-30 – 2021-03-31
|
Keywords | 植物ウイルス / 不顕性感染 |
Outline of Annual Research Achievements |
病徴を示していないハクサンハタザオ(Arabidopsis halleli)から単離されたキュウリモザイクウイルスHo系統[CMV(Ho)]は、シロイヌナズナ(A. thaliana)にも不顕性感染する。病原性を持つCMV[CMV(Y)]とCMV(Ho)の比較解析から、CMVの2bタンパク遺伝子が、CMV(Ho)の不顕性感染を決定することを明らかにした。さらに昨年度は、CMV(Ho)2bタンパク質が、宿主のAGO4タンパク質と相互作用することを見出した。 本年度は、2bタンパク質の機能について、さらに解析を進めた。CMV(Ho)とCMV(Y)の2b遺伝子にFLAGタグ配列を付加したコンストラクトをシロイヌナズナに形質転換したところ、CMV(Y)の2b-FLAGタンパク質を蓄積する形質転換体では、形態異常を示したが、CMV(Ho)の2b-FLAGタンパク質を蓄積する形質転換シロイヌナズナでは、非形質転換植物と同様に正常な形態を示したことから、CMV(Ho)の2bタンパク質蓄積は、形態異常を誘導しないことが再確認された。 また、CMV(Ho)の2bタンパク質が相互作用する宿主AGO4タンパク質は、宿主ゲノムDNAのメチル化/脱メチル化に関与しており、実際にCMV(Ho)に不顕性感染しているシロイヌナズナでは、ゲノム上の多くの遺伝子(候補遺伝子)のメチル化/脱メチル化レベルが変化していることを見出した。さらに、CMV(Ho)の2bタンパク質を蓄積する形質転換体において、上述の候補遺伝子のコード領域とプロモーター領域のメチル化変動解析をバイサルファイトシークエンス法により個別に解析し、予想通りにメチル化レベルが変動しているかどうかの解析を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ウイルスの不顕性感染した宿主植物では、宿主ゲノムDNAの多くの遺伝子(候補遺伝子)のプロモーター領域やコード領域で、メチル化/脱メチル化レベルが変化していることが明らかになった。さらに、MV(Ho)の2bタンパク質を蓄積する形質転換体を用いて、バイサルファイトシークエンス法により、個々の候補遺伝子についてメチル化/脱メチル化レベルが変化しているかどうか解析を行っている。すでに、2種類の転写因子遺伝子プロモーター配列で、メチル化/脱メチル化レベルの変化が確認できていることから、研究はおおむね順調に進展していると判断される。
|
Strategy for Future Research Activity |
CMV(Ho)の2bタンパク質を蓄積する形質転換体において、上述の候補遺伝子のコード領域とプロモーター領域のメチル化変動解析をバイサルファイトシークエンス法により個別に解析し、予想通りにメチル化レベルが変動しているかどうかの解析をさらに進める。さらに、プロモーター領域やコード領域でメチル化/脱メチル化レベルが変化していることが見出された遺伝子発現の変動が、植物の器官分化やストレス耐性などの形質への関与しているかを解析し、植物の生存におけるウイルス不顕性感染の役割を明らかにする。
|