2019 Fiscal Year Annual Research Report
マウス体性感覚野をモデルとした大脳皮質回路の早期スクラップ&ビルドの解析
Project Area | Dynamic regulation of brain function by Scrap & Build system |
Project/Area Number |
16H06459
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
岩里 琢治 国立遺伝学研究所, 遺伝形質研究系, 教授 (00311332)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下郡 智美 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, チームリーダー (30391981)
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Project Period (FY) |
2016-06-30 – 2021-03-31
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Keywords | 神経科学 / 大脳皮質 / 神経回路 / 発達 |
Outline of Annual Research Achievements |
哺乳類の大脳皮質の神経回路が正常に発達するためには、生後発達の初期に自発活動や感覚入力などの神経活動によるスクラップアンドビルドを受けることが必要である。我々はマウス体性感覚野をモデルとしてそのメカニズムの解明を目指している。バレル形成中にあたる生後5日目のマウスの大脳皮質体性感覚野にパッチワーク型の自発活動が観察され、それが視床皮質軸索を介して末梢から大脳皮質第4層へと伝達されることを先に報告した。本年度はより詳細な解析を行い、バレル形成前にあたる生後1日目の段階ですでにパッチワーク型の活動が見られること、バレル形成が完了した生後9日目の段階ではパッチワーク型の活動はみられず、複数のバレルにまたがる広範な領域での同期活動が観察されることを明らかにした。そして、生後11日目には同じバレルに属する神経細胞であっても個別に活動し、体性感覚野全体でスパースに発火することを見つけた。このように生後2週間の間に体性感覚野第4層の自発活動の空間パターンは少なくとも3つのフェーズを遷移することが明らかとなった。また、これまでに大脳皮質体性感覚野の有棘星状細胞が神経活動依存的に樹状突起の形態変化を起こす分子メカニズムを明らかにしてきたが、これらの分子は脳室帯から生まれた興奮性神経細胞が有棘星状細胞に分化した時点で発現が起きる。一方で同じ脳室帯から生まれた錐体細胞にはこれらの分子が発現していないことから、錐体細胞と有棘星状細胞への分化が起きるタイミングでこれらの因子が発現するメカニズムを明らかにした。さらに、錐体細胞が有棘星状細胞に分化するための因子を同定していることから、この因子の発現を胎生期に操作することにより、体性感覚野に錐体細胞しか存在しないマウスの作製に成功した。このマウスの行動実験を行うと、ヒゲを使った物質の識別行動の一部に障害があることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
生後発達期のマウス体性感覚野第4層にみられる自発活動に関して、前年度に発表した論文の研究を発展させる解析を進め、上述のとおり、様々な新しい知見が得られた。また、第4層神経細胞の分化の分子メカニズムに関しても、多くの知見が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
幼若期のマウス体性感覚野で観察される自発活動の空間パターンが発達段階とともに遷移するメカニズムを明らかにする。また、体性感覚野に有棘星状細胞がないマウスでは、神経回路が変化していることが考えられる。そこで、体性感覚野に錐体細胞しか存在しないマウスでの神経回路を狂犬病ウィルスなどを用いて明らかにし、有棘星状細胞の脳内での存在意義を明らかにする。
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Research Products
(17 results)