2017 Fiscal Year Annual Research Report
感覚入力特異的なスクラップ&ビルドによる大脳皮質内の多細胞ネットワーク形成機構
Project Area | Dynamic regulation of brain function by Scrap & Build system |
Project/Area Number |
16H06460
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
吉村 由美子 生理学研究所, 基盤神経科学研究領域, 教授 (10291907)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 亘彦 大阪大学, 生命機能研究科, 教授 (00191429)
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Project Period (FY) |
2016-06-30 – 2021-03-31
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Keywords | 大脳皮質 / 方位選択性 / 経験依存的発達 / 神経活動依存的マーカー / RNAシークエンス |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、単一細胞RNA-seq解析の技術を確立させると共に、その手法により縦縞刺激に反応したVenus陽性細胞と反応しなかったVenus陰性細胞(錐体型細胞)をそれぞれ10個以上、視覚野の2/3層からパッチピペットにより採取し、RNA抽出、cDNA合成・増幅、RNA-seq解析を行った。その結果、採取した細胞の半数以上で単一細胞レベルで十分な遺伝子発現解析が達成され、Venus陽性細胞と陰性細胞に分けて、一方に強く発現する遺伝子が複数個見出された。統計的な解析から、これらの遺伝子の発現がVenus陽性細胞で有意に増大していることも示され、特定の方位選択性を持つ細胞に特有の遺伝子発現があることが示唆された。 また、マウス大脳皮質視覚野において、経験依存的に調節される新たな機能を見出す目的で、生後発達の様々な時期に両目への視覚入力を1週間遮断し、その影響をin vivo2光子励起カルシウムイメージングにより解析した。正常な視覚環境下で飼育したマウスは、発達に伴い視覚野神経細胞が高空間周波数の視覚刺激に強く反応するようになるが、視覚遮断されたマウスの視覚野では低空間周波数に強く反応する細胞が多く、幼若型の反応が維持されていた。また、この過程で、視覚経験に依存して発達する細胞群と非依存的な発達を示す細胞群を見出した。今後は、両群に発現する分子の違いを見出すために、各細胞から採取を行い、RNA-seq解析を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度、特定の方位選択性を有する視覚野細胞の遺伝子発現を単一細胞レベルで解析することに成功し、かつその手法によって特有の遺伝子発現プロファイルを得ることができた。また視覚野において、新たな経験依存的に発達する視覚反応特性を見出した。これらのことから、今後の進展が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでは、Venus陽性細胞と陰性細胞との間で遺伝子発現解析を行ったが、次は異なる方位選択性(縦縞と横縞)を有する細胞間で比較し、その遺伝子発現パターンを解析するとともに、変化のあった遺伝子の特徴、機能的な解析を進める。また、個々の神経細胞の視覚反応特性をより詳細に同定した細胞からサンプリングを行うために、in vivo2光子励起カルシウムイメージング下で、パッチピペットにより採取を行うことを試みる。これらの解析により、視覚体験依存的・非依存的な発達の分子機構を明らかにする。
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