2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Determining the principles of the birth of new plant species: molecular elucidation of the lock-and-key systems in sexual reproduction |
Project/Area Number |
16H06465
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
東山 哲也 名古屋大学, 理学研究科(WPI), 教授 (00313205)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金岡 雅浩 名古屋大学, 理学研究科, 講師 (10467277)
Bode Jeffrey 名古屋大学, トランスフォーマティブ生命分子研究所, 客員教授 (90727900)
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Project Period (FY) |
2016-06-30 – 2021-03-31
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Keywords | 受精 / 花粉管 / 種間障壁 / リガンド・レセプター / ペプチド |
Outline of Annual Research Achievements |
植物の受精過程には、2 つの主要な種間障壁(2 セットの重要な鍵と鍵穴)が存在することが示唆されている。我々は、そのうちの一つ、受精のために分泌される花粉管誘引物質「LURE ペプチド」を発見した。残された主要な障壁は、花粉管から精細胞を放出させるステップにある。LUREの作動原理の解明に加え、こうした分子の同定と制御、さらにはゲノム倍化を効率良く行う分子の開発により、種間障壁の理解と制御を達成する。 (1) 花粉管誘引におけるLURE およびその受容体複合体の作動実態解明: トレニアとシロイヌナズナのLUREにおけるドメインスワッピングから、種認証に重要な3アミノ酸を特定した。また、シロイヌナズナと、その近縁種セイヨウミヤマハタザオの組み合わせをモデルとして、実際に交雑授粉を行った場合の種間障壁の解析を進めた。LURE1およびPRK6の役割、LURE1とは異なる他の助細胞由来の誘引物質の関与、長距離ガイダンスの役割について、解析を進めている。PRKファミリーの作動原理の解析も進めている。 (2) 精細胞放出における鍵と鍵穴分子の同定および動態解明: シロイヌナズナとセイヨウミヤマハタザオを用いて、種認証過程をライブセル解析する系の確立を進めた。カルシウムイメージングにより、交雑時の助細胞―花粉管の細胞間コミュニケーションについて解析を進めた。また、種認証に関わる候補遺伝子について、スワップにより障壁が打破されるか、準備を進めた。 (3) 種の壁の理解: 配偶子融合で働く受精装置の構成的な解析に向け、動物培養細胞を用いた実験系の確立を進めた。また、雌雄の細胞の稔性を向上させる分子を見出し、有機合成化学を駆使した解析を進めた。種間交雑の効率を向上させるためにも重要な分子と期待され、特許申請を行った。生殖における多くの鍵と鍵穴をひらく、重要な分子と期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本課題では、植物受精における種間障壁のメカニズム解明とその打破を目的とし、シロイヌナズナおよびトレニア、そしてそれらの近縁種を複数用いた解析を実施している。種間障壁を担う鍵と鍵穴分子の同定およびその解析が計画通りに進展しており、さらにこれらの鍵と鍵穴分子の多くを上流で制御するマスター因子を、当初の想定を超えた進展として発見した。本領域の目指す有機合成化学との異分野融合研究により、論文発表の準備のみならず、特許の出願を達成した。なお、こうした進展にともない、本課題の実験材料である、トレニア、セイヨウミヤマハタザオ、ウリクサ、アゼトウガラシといった、「非モデル植物」を用いた解析の必要性が増している。明視野像や蛍光像など、様々な画像を高解像度で取得できるカラーカメラ、組織培養を伴う遺伝子組換え実験のためのクリーンベンチ、これらの植物からの遺伝子のクローニングが、解析の律速となっている。これらのための機器を購入し、本課題の想定を超えた解析をさらに加速させ、受精における種間障壁のメカニズム解明とその打破を大きく進展させることにした。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 花粉管誘引におけるLURE およびその受容体複合体の作動実態解明 LURE は約70 アミノ酸からなり、システイン残基も複数持つため、ペプチドの合成は容易ではない。我々は短いペプチド鎖をつなぐ独自のKAHAライゲーション(Bode; Nat.Chem. 2014a, 2014b, 2015)により、LURE の効率的合成や、ペプチド鎖の組合せを変えるスワッピングを実現している。トレニア、シロイヌナズナ、および各近縁種でのドメインスワッピング、ミューテーション解析、非天然のダウンサイズLURE の作製を進め、同定した種特異性に重要な3アミノ酸について発表する(金岡、Bode)。さらに、シロイヌナズナLURE1の受容体であることを証明したPRK6について(Nature 2016; Nat.Commun. 2017)、近縁種A. lyrataとの主要な障壁分子として働いているのか、実際の雌しべ内での障壁を深部イメージングで確認するとともに、詳細なin vitro実験により明らかにする。(東山) (2) 精細胞放出における鍵と鍵穴分子の同定および動態解明 近縁種A. lyrata の花粉をシロイヌナズナに授粉した場合、胚珠への花粉管誘引ステップ、精細胞放出のステップの両者において効率が下がることが明らかとなっている。確立したカルシウムイメージングの実験系を基盤に、異種花粉管に対する助細胞の応答や、鍵・鍵穴分子の候補をシロイヌナズナで発現することで種間障壁が打破されるものがないか調べる。(東山) (3) 種の壁の理解:種間障壁の打破による異質倍数体ハイブリッドの作出 異種間受精から高効率で異質倍数体を確立するために、効率良く初期発生においてゲノム倍加を誘導する化合物スクリーニングを継続する。(東山)
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Remarks |
代表者が所属する研究機関で、主な成果は本ホームページから発信する。
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Research Products
(15 results)