2017 Fiscal Year Annual Research Report
複二倍体種形成時の受粉・ゲノム安定性に機能する「鍵と鍵穴」因子の解析
Project Area | Determining the principles of the birth of new plant species: molecular elucidation of the lock-and-key systems in sexual reproduction |
Project/Area Number |
16H06470
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
渡辺 正夫 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (90240522)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 剛 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (10314444)
諏訪部 圭太 三重大学, 生物資源学研究科, 准教授 (50451612)
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Project Period (FY) |
2016-06-30 – 2021-03-31
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Keywords | アブラナ科植物 / 雌雄間自他識別システム / 複二倍体種形成 / 生殖隔離 / 遺伝子重複 |
Outline of Annual Research Achievements |
高等植物の生殖過程には、「他の植物種と交雑することなく自らのゲノムを維持するシステム」が存在するとともに、種内の遺伝的多様性を保持する機構である自家不和合性(SI)に雌雄間自他識別システムがあり、これには、リガンド・レセプターという「鍵と鍵穴」が機能している。一方、「鍵と鍵穴」が機能せず、SIを失った複二倍体種も自然界には多く存在する。両親複二倍体種はSIであり、その種から合成した人工複二倍体種もSIを維持するのに対して、栽培化の歴史の中で選抜された自然複二倍体種は自家和合性(SC)に変化している。本研究では、この変化に着目し、倍数性・ゲノム安定性という観点から複二倍体種がSIからSCへと変化できる分子機構に関わる「鍵と鍵穴」を領域内共同研究として展開し、解明することを目的とする。さらに関連した「鍵と鍵穴」分子の機能解析も行う。 本年度は、B. napusの受粉システムの変化を理解するために、分離世代でのS対立遺伝子の挙動と表現型の連関を調査し、S遺伝子での説明が困難であることが判明した。新規一側性不和合性については、これまでの研究成果をNature Plantsに発表した。新規な「鍵と鍵穴」分子について、低分子ペプチドについて、in vitroでの実験の再現に可能性を見いだした。 アウトリーチ活動も行い、50件を超える出前講義等を行い、講義後の手紙に返事を書き、実施した小学校、高校の教員から高い評価を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
B. napusの自家和合性については、分離世代でのS対立遺伝子の挙動と表現型の連関を調査し、単純な分離ではないことが判明した。一方で、交雑組合せにより分離比が異なることから、適切な組合せを選ぶことで、遺伝学的な解析が可能になる可能性があると考えた。一側性不和合性については、Nature Plantsに科研費番号が記載された形で、受理・掲載された。また、この研究発表が「日本育種学会優秀発表賞」を受賞した。さらに、 この発表の波及効果として、いくつかの日本語での雑誌など(ライフサイエンス新着論文レビュー、アグリバイオ、Nature Plantsインタビュー記事)に発表でき、日本国内の研究者・国民により分かりやすい形で公表できたことは、評価できる。一方、低分子ペプチドの機能解明に向けたin vitroでの実験系がin vivoでの実験と類似の表現型を示したことから、この系を発展させることが有意義であると判断した。 アウトリーチ活動については、仙台市教育委員会から感謝状を贈呈され、公式にこうした活動が評価されていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
B. napusの自家和合性の遺伝学的な解析については、S対立遺伝子上に存在する雌雄S因子であるSP11、SRKの構造を詳細に解析し、エピゲノム情報についても獲得を目指す。また、起源の異なる集団間で生じる一側性不和合性については、多様な起源のB. rapa、B. oleaceaなどを材料として、PUI1, SUI1の対立遺伝子を可能な限り習得し、その多様性と機能との関連を調査する。受粉に関連した因子の解析では、その遺伝子破壊系統と野生型の表現型を比較して、受粉時の機能を解明する。 また、アウトリーチ活動を20件以上行い、国民への情報発信、社会貢献にも寄与する。
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Remarks |
アウトリーチ活動については http://www.ige.tohoku.ac.jp/prg/watanabe/activty/delivery/ 参照
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Research Products
(24 results)
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[Journal Article] Duplicated incompatibility genes create a reproductive barrier in Brassica rapa.2017
Author(s)
Takada, Y., Murase, K., Shimosato-Asano, Y., Sato, T., Nakanishi, H., Suwabe, K., Shimizu, K. K., Lim, Y.-P., Takayama, S., Suzuki, G., and Watanabe M.
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Journal Title
Nature Plants
Volume: 3
Pages: 17096
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Presentation] Novel unilateral incompatibility in Brassica rapa is regulated by duplicated self-incompatibility genes, PUI1 and SUI1.2018
Author(s)
Takada, Y., Murase, K., Shimosato-Adano, H., Sato, T., Nakanishi, H., Suwabe, K., Shimizu, K. K., Lim, Y. P., Takayama, S., Suzuki, G., and Watanabe, M.
Organizer
International Plant & Animal Genome XXVI,
Int'l Joint Research / Invited
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[Presentation] Identification and characterization of the novel pollen-stigma recognition factors for unilateral incompatibility in Brassica rapa.2017
Author(s)
Takada, Y., Murase, K., Shimosato-Adano, H., Sato, T., Nakanishi, H., Suwabe, K., Shimizu, K. K., Lim, Y. P., Takayama, S., Suzuki, G., and Watanabe, M.
Organizer
Taiwan-Japan Plant Biology 2017
Int'l Joint Research / Invited
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[Presentation] Brassica rapaの種内一側性不和合性を制御するSUI1-PUI1遺伝子2017
Author(s)
高田美信, 鈴木剛, 村瀬浩司, 浅野(下里)裕子, 佐藤陽洋, 中西ほのか, 諏訪部圭太, Lim Yong Pyo, 清水健太郎, 高山誠司, 渡辺正夫
Organizer
日本植物細胞分子生物学会
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[Presentation] 自己花粉を認識するリガンド・レセプター遺伝子セットの重複が非自己花粉の拒絶を引き起こす.2017
Author(s)
高田美信, 鈴木剛, 中西ほのか, 村瀬浩司, 浅野(下里)裕子, 佐藤陽洋, 諏訪部圭太, Lim Yong Pyo, 清水健太郎, 高山誠司, 渡辺正夫
Organizer
日本遺伝学会
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[Presentation] Brassica rapaのA04染色体には新規生殖障壁遺伝子が存在する2017
Author(s)
高田美信, 中西ほのか, 村瀬浩司, 浅野(下里)裕子, 佐藤陽洋, Yong Pyo Lim, 清水健太郎, 高山誠司, 諏訪部圭太, 鈴木剛, 渡辺正夫
Organizer
日本染色体学会
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[Presentation] Brassica rapaの種内一側性不和合性を支配する花粉・柱頭認識因子の決定2017
Author(s)
高田美信, 村瀬浩二, 浅野(下里)裕子, 佐藤陽洋, 中西ほのか, 諏訪部圭太, Lim Yong Pyo, 清水健太郎, 高山誠司, 鈴木剛, 渡辺正夫
Organizer
日本育種学会第132回講演会
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[Presentation] ABA-mediated stress response mechanism modulates stigmatic papillae development in Arabidopsis thaliana.2017
Author(s)
Egusa, W., Takeda, S., Ochiai, K., Morimoto, H., Kagaya, Y., Suzuki, G., Watanabe, M., and Suwabe, K.
Organizer
Global Conference on Plant Science and Molecular Biology
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