2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Interplay of developmental clock and extracellular environment in brain formation |
Project/Area Number |
16H06484
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
見学 美根子 京都大学, 高等研究院, 教授 (10303801)
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Project Period (FY) |
2016-06-30 – 2021-03-31
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Keywords | 発生・分化 / 細胞・組織 / 脳・神経 |
Outline of Annual Research Achievements |
哺乳類脳の皮質形成において、構成細胞の増加、配置変化、形態分化に伴い組織に生じる応力-ひずみ場などの物理的環境は刻々と変化する。本研究では、発生脳の「場」の力学的特性の変化が、皮質形成過程の神経幹細胞増殖、分化、遊走をフィードバック制御する未知の機構を同定することを目指している。 小脳皮質構築過程の顆粒細胞を単離し、核の物性に影響すると予想される核ラミナ分子の発現を解析した。その結果、ラミンAなどいくつかの分子の発現変動があることが明らかになった。また遊走するニューロンの核が移動方向に回転する現象を見出し、その分子機構解析を行った。変異分子発現と薬理実験により、核回転は核ラミナ分子Nesprin-1/2と微小管モーターcytoplasmic dyneinまたはkinesin-1の結合を介した局所的な力で駆動されることが明らかになった。 脳組織内で狙ったタイミングで発現誘導する実験系の構築を試みた。金ナノロッド粒子に近赤外光を照射すると安定な細胞温度上昇を操作できることを利用し、熱ショックプロモータ制御下の遺伝子を導入して、1細胞単位で遺伝子発現を近赤外光で誘導できることを示した。 移動時のニューロン核に作用する外力を定量できる蛍光プローブの開発を行った。接着斑に作用する力測定の目的で開発されたTsModを参考に張力センサーFRETユニットを設計し、核膜分子(ラミンまたはNesprin)に挿入することを計画した。しかし予備実験でラミン、Nesprinとも強制発現により核の動態が変化してしまうことがわかった。並行して培養細胞の発生する力を測定する牽引力顕微鏡(traction force microscopy; TFM)を最適化し、蛍光ビーズを混濁したゲル上で顆粒細胞を移動させてビーズの微小な動きを解析し、ピコニュートン単位の力を算出する粒子流速計測が可能であることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
皮質形成過程の様々なステージのニューロン核の物性測定を行い、発現変動のある核ラミナ分子が物性に寄与するかを解析する予定であったが、その過程で核が移動方向に回転する現象を見出した。核回転は移動を駆動する力が変換された運動と考えられたため、当初の予定を変えて核回転の分子機構解析を優先して行った。解析の結果、核ラミナ分子のNesprin-1/2と微小管モーターの結合が核膜局所の変形や回転を引き起こす力を発生することを見出した。予期しない発見があり、解析の順序を変えたため当初の計画はやや遅延しているが、目的である皮質形成における核ラミナ分子の機能解析に関して全体の進捗は順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
皮質形成過程でニューロン核の物性が動的に変化するかを原子間力顕微鏡によるヤング率計測で検証する。 Nesprin-1/2と微小管モーターの相互作用で生み出される力により起こる核運動の皮質形成における生理的意義を明らかにする。 牽引力顕微鏡を確立し、核を蛍光標識してビーズの動きと同時に2色ライブ観察を行うことで、周辺基質の応力分布の時空間変化と核の形態・位置ゆらぎとの相関を解析する実験系を確立する。
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