2018 Fiscal Year Annual Research Report
New heavy particle search using the LHC accelerator
Project Area | New expansion of particle physics of post-Higgs era by LHC revealing the vacuum and space-time structure |
Project/Area Number |
16H06494
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石野 雅也 東京大学, 素粒子物理国際研究センター, 教授 (30334238)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
南條 創 大阪大学, 理学研究科, 准教授 (40419445)
寄田 浩平 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (60530590)
隅田 土詞 京都大学, 理学研究科, 助教 (80624543)
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Project Period (FY) |
2016-06-30 – 2021-03-31
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Keywords | 新重粒子探索 / ウィークボソン同定の新手法 / 大半径ジェット / 高速飛跡トリガー |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度に引き続き、2018年度も「新粒子探索」と「高速飛跡再構成システムの運用」の2本柱で研究を進めた。 1本目の柱である新粒子探索については、ウィークボソンの散乱測定による標準模型の検証と新物理探索について、我々が新しく開発したセミレプトニック崩壊過程の解析を論文にまとめた。これと並行して進めてきた、高運動量のW/Zボソンの同定手法に関する論文も2本受理された。 これに加え、2018年度から新たな新重粒子「レプトクォーク」の探索を開始した。Bハドロンを使った精密測定をおこなっている他の実験によって、この新粒子の存在が示唆されている。今回は特にレプトクォークが第3世代粒子へ崩壊する過程にフォーカスして解析を設計した。過去におこなわれたことのない終状態が対象であり、Run2で取得したデータをすべてもちいることで、質量1TeVまで探索範囲を広げることが可能であることを明らかにした。 2本目の柱である高速飛跡再構成システム(FTK)は、高速リアルタイムで荷電粒子の飛跡を再構成するシステムである。2018年度は複数の電子回路を組み合わせて実際のデータを使った試験を進めた。2018年末には、LHCのデザインルミノシティを超える実験環境において安定的な飛跡再構成を安定しておこなうことに成功した。 FTKソフトウェアの観点においても、実際のシステム運用に向けた準備を進めた。加速器の運転状況に対応したフィット定数、及びパターンバンクの生成をデータ収集中におこない続け、タイムリーに更新する経験を積み上げ、FTKシステムの稼働に向けて大きく前進した。 トリガーでの有用性を定量化するためのシミュレーションの開発も進めて新重粒子等の探索感度を向上させる研究を進めている。次年度以降のシャットダウン中に複合試験をおこなうことで、2021年度からの本格安定稼働を目指している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
LHC加速器のビームエネルギーが13TeVにあがった最初の年(2015年)に取得できたデータは3 /fbと極めて少なかったが、続く3年(2016-2018)は適切な加速器の運転条件を見つけることができ、新重粒子探索に使えるデータを大量に取得した。物理解析に使用可能なデータは139 /fbまで到達した。 2016年度までに、新粒子がレプトン対に崩壊するモードの解析や2本のジェットに崩壊するモードの解析を終え、2017年は新粒子がウィークボソン対に崩壊するモードについての最初の結果を公表した。新粒子のスピンが、0,1,2の場合に分けて解析を最適化して慎重に新粒子探索をおこない、それまでの探索領域を1TeV程度高い質量領域まで押し上げた。 高い質量の新粒子がウィークボソン対に崩壊した場合、強くブーストされて最終的に発生する複数のジェットが1つの大きなジェットに見えてしまう。2017年度以降、これを正しく取り扱うための手法の開発に着手し、今年度、それをまとめた論文を発表することができた。この手法を用いて新重粒子の探索感度を向上させることが可能である。 新たな飛跡トリガーの開発については開発の段階を過ぎて、安定動作を実データを実際に処理しながら検証するフェーズに突入した。データ取得中にその性能をリアルタイムでモニターするシステムの整備も進み、運転パラメーターを随時アップデートすることで加速器の運転状況にあわせたオペレーションが連続的におこなえることをデモンストレーションすることに成功した。この飛跡トリガーアルゴリズムの出力を使って物理探索領域を開拓する研究が進められている。より特殊な物理モデルの探索短距離飛跡の同定など、多様な物理に感度をもつトリガーシステムの構築に向けて進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
新重粒子探索については、Run2の期間に取得したすべてのデータ(139 /fb)を使って新重粒子の発見に挑戦する。新粒子がウィークボソン対に崩壊するモードについては、2018年度に開発を完了したブーストジェットの処理方法を実際に応用して、新粒子の探索感度を向上させていく。また、トラック情報とカロリメター情報を総合したウィークボソン同定アルゴリズムを導入することで、大半径ジェットとなるW/Zボソンの終状態を同定する技術の開発にも挑戦する。
飛跡トリガーの開発においては、そのプロトタイプであるところのFTKシステムのコミッショニングを更に進めることで、本研究で開発中の大規模飛跡トリガーシステムを構築するための経験値を積みあげる。 実際のデータを使ったデバッグ、コミッショニングが2018年度で一段落した。ひと通りの動作検証をおこなうことが出来たが、より安定してシステム全体動作するように、データのない環境で仕上げていくためのシステムを構築する(2019年度、2020年度は加速器が運転されない)。 飛跡トリガーが参照する飛跡データバンクの作成は、システムの性能を決める重要な要素である。また、検出器のアラインメントも逐次リアルタイムでおこなっていく必要がある。現在までのところ、一部のエキスパートがつきっきりになることでシステムの安定運用が可能になっているが、そのままでは10年使い続けられるシステムとは言えない。各種の自動化、モニターシステムの充実等をさらに推し進め、次世代飛跡トリガーシステムの仕様に反映させていく。
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