2019 Fiscal Year Annual Research Report
New heavy particle search using the LHC accelerator
Project Area | New expansion of particle physics of post-Higgs era by LHC revealing the vacuum and space-time structure |
Project/Area Number |
16H06494
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石野 雅也 東京大学, 素粒子物理国際研究センター, 教授 (30334238)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
南條 創 大阪大学, 理学研究科, 准教授 (40419445) [Withdrawn]
廣瀬 穣 大阪大学, 理学研究科, 助教 (30816880)
寄田 浩平 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (60530590)
隅田 土詞 京都大学, 理学研究科, 助教 (80624543)
|
Project Period (FY) |
2016-06-30 – 2021-03-31
|
Keywords | 新重粒子探索 / ウィークボソン同定の新手法 / 大半径ジェット / 高速飛跡トリガー |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、「新重粒子探索」とリアルタイムでの「高速飛跡再構成システムの開発・運用」という2つのテーマを軸にして研究を進めた。 1つ目のテーマである新重粒子探索については、LHCの第2期運転(2015-2018)に取得した全データ139 /fbを使った解析を進めた。全てのデータを使った新粒子探索の論文を3本公表した。1つ目は高エネルギーの荷電レプトンと高い消失運動量を持った事象を残す荷電ボソンの探索、2つ目はレプトン対に崩壊する新粒子の探索、3つ目は2本のジェット対に崩壊する新粒子の探索である。これらのすべての崩壊モードについて、新粒子を発見できなかった。全データを使って統計をあげる、また、データにもとづいたキャリブレーション手法を新たに開発することによって探索領域が大きく広がり、いよいよTeVスケールに探索領域が到達し始めている。36 /fbまでのデータを使って、トップクォーク対に崩壊する新粒子探索の結果や、Vector-Likeトップクォークと呼ばれる特殊なトップクォークの探索の結果なども公表した。これらの新しい解析についても、1年以内に全データを使った結果を公表する予定である。 2つ目のテーマである高速飛跡再構成システムの開発・運用であるが、2018年の加速器稼働中に取得したデータを使った性能評価を進めた。また、2022年度以降のLHC第3期運転に向けて、さらにシステムの性能を向上させるためのテストシステムの構築・運用を開始した。加速器の複数の運転モード、瞬間輝度の変化を再現したテストデータの供給システムを完成させることで、加速器がシャットダウンされる2019, 2020, 2021年の間もシステム性能を改善させる準備を整えた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度(2018年度)までにLHC加速器の第2運転期間が終了し、合計139 /fbのデータを取得することができた。この全データを解析した新粒子探索結果を多様な終状態に対して、包括的に進め、論文として結果を公表したり、国際会議等で多くの発表をおこなった。 2019年度に第2期運転での全データを使った新粒子探索としては、終状態が比較的単純な3つの崩壊モードを持つ物理仮定であり、それぞれ、(1) 高エネルギーレプトンと大きな消失運動量が終状態にあらわれる新粒子 (2) 高エネルギーのレプトン対に崩壊する新粒子 (3) 2つのジェットに崩壊する新粒子であった。これまでの解析では高い運動量・エネルギーを持つ粒子のキャリブレーションをデータでおこなうことが困難であったため、シミュレーションに依存した校正をおこない、評価しきれない部分については大きめの系統誤差をつけて評価するとしていた。しかしながら、2019年度は、取得した大きなデータ量をフルに活用することで、データを使ったキャリブレーション手法を確立することに成功し、これによって探索領域を大きく広げることに成功した。 また、上記の比較的単純な終状態を持つと仮定した新粒子の探索以外にも、終状態にトップクォークを含む新粒子探索や、ウィークボソン対に崩壊する新粒子探索にも着手した。途中段階のデータ(36 /fb)を使った結果の公表を完了し、次のステップとして全データを使ってこれらの新粒子を探索するための準備を整えることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究プログラムの最終年度を迎えるにあたり、LHC第2運転期間に取得した全データ139 /fbをすべて使った新重粒子探索結果を公表する。2019年度に、2ジェット、レプトン対、レプトン+消失運動量という終状態を持つタイプの新粒子探索結果を公表したが、弱ボソン対への崩壊結果、トップクォーク対への崩壊など、より複雑な終状態を持つ新粒子探索についても、全データを使った解析をおこない、探索領域を最大化する。 また、2018年度から開始した新しい新粒子候補「レプトクォーク」の探索についても、全データを使った探索結果を公表する。Bハドロンの崩壊においてレプトンフレーバーのアノマリの存在が示唆されているが、これが新粒子レプトクォークによって引き起こされたという解釈も可能であり、近い将来、この存在の有無を明らかにする価値が高いと考えている。 リアルタイムでの高速飛跡再構成回路の開発・運用については、テストベンチシステムを稼働させることで、性能の向上、運用の経験を蓄積し、2022年のLHC加速器の運転再開に向けてスムーズに実戦投入が可能な状態を作る。ビーム衝突の環境の変化に対してロバストなモニター・ソフトウエア等の開発を続ける。
|