2019 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Creation, function and structure of neo-self |
Project/Area Number |
16H06498
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
宇高 恵子 高知大学, 教育研究部医療学系基礎医学部門, 教授 (40263066)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西村 泰治 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 名誉教授 (10156119)
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Project Period (FY) |
2016-06-30 – 2021-03-31
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Keywords | 腫瘍免疫学 / 免疫療法 / 分子認識 / バイオインフォマティクス / トランスレーショナルリサーチ |
Outline of Annual Research Achievements |
腫瘍血管内皮細胞(EC)の抗原提示による腫瘍特異的T細胞の浸潤機構について、データの補完と、材料や方法に関する論文(HLA-Aのペプチド解析に適したmAbの開発)発表を行った。自己の腫瘍抗原を認識するT細胞を用いた実験は、事前に特許出願が必要であり、論文投稿を保留した。ECによるMHC class II分子による腫瘍特異的ヘルパーT細胞(Th)、MHC class I分子による細胞傷害性T細胞(CTL)の浸潤機構、ECのクロスプレゼンテーション能の検証と、その結果起こるCTLの腫瘍組織への直接浸潤機構を論文にまとめた。また、従来の免疫法では生体内で長期にわたって抗腫瘍活性を維持するT細胞を誘導することは困難であったが、樹状細胞にペプチドを届けるミセル溶剤により誘導活性を高めた(論文執筆中)。(宇高)
すでに樹立したCisplatin耐性のマウス膀胱がん細胞株に対する、in vivo腫瘍免疫解析系を確立した。さらに、がん細胞株のRNAseq解析により正常細胞には、ほとんど発現しないがん関連抗原ならびにネオ抗原を多数同定した。これらの抗原に由来し、MHCクラスIまたはII分子に結合するペプチドを、既存のアルゴリズムを用いて推定した。これらのペプチドを合成し樹状細胞に負荷してマウスに免疫することにより、細胞傷害性T細胞(CTL)のみならず1型ヘルパーT(Th1)細胞を誘導可能な長鎖ペプチドを同定できた。 この長鎖ペプチドを負荷した樹状細胞の免疫により腫瘍増殖を予防ならびに治療でき、さらに抗PD-1抗体との著明な併用効果を観察した。抗腫瘍効果は、抗CD4抗体または抗CD8抗体のいずれの投与によっても解除されたため、CTLとTh1細胞がともに寄与していると考えられた。さらに抗腫瘍効果と腫瘍内浸潤T細胞に発現するT細胞受容体レパトアの収束との間に、相関があることを観察した。(西村)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
腫瘍血管ECの抗原提示による腫瘍特異的T細胞の浸潤機構について、Th 、CTLの浸潤機構、ECのクロスプレゼンテーションによるCTLの直接浸潤機構、抗原提示作用薬U2317によるCTLの浸潤促進機構を論文にまとめた。新たに、EC特異的にMHC class IIを欠損するマウスを用いて制御性T細胞(Treg)の腫瘍内浸潤を調べ、TregもECが提示する腫瘍ペプチド依存性に浸潤することが明らかにした。内因性の抗腫瘍Thの活性を除いてTreg活性を単離する実験系で再現性を確認中である。また、EC由来のmiRNAが生体内の抗腫瘍活性を反映する可能性を考え、免疫チェックポイント阻害抗体(ICI)を使用中の腎細胞癌患者の血漿を調べたところ、健常人の数十~百倍の高発現がみられた。現在、検体数を増やして解析中である。(宇高)
昨年度に予定していた研究計画を、ほぼ予定通りに遂行して成果を得ることができ、これらの成果を学会で5回発表し、英文論文として投稿準備中である。平成30年度には達成できなかった、マウスMHCクラスII拘束性Th1細胞を誘導できる長鎖ペプチドで、その免疫によりCD4+T細胞とCD8+T細胞に依存して、in vivoにおける抗腫瘍免疫を強力に誘導できるペプチドを同定できたことは大きな進歩である。 この長鎖ペプチドは、従来の研究で同定したCTLを誘導する単鎖ペプチドワクチンと比較して、より強力な腫瘍免疫を誘導でき、ワクチンあるいは抗PD-1抗体の単独療法では無効なCisplatin耐性膀胱がんの治療モデルにおいて、併用療法により約50%の担がんマウスに腫瘍の完全消滅を誘導できた。複合免疫療法の効果の機序を解明すべく、T細胞レパトアの変動に関する解析を、本研究班の小笠原教授ならびに岸教授らとの共同研究により遂行している。総評として研究は、順調に進んでいると言える。(西村)
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Strategy for Future Research Activity |
ECの抗原提示能を活かし、SN腫瘍抗原を標的とした複合型ペプチド免疫療法のマウスモデルの複数の論文受理を達成する。MHC class II結合性ペプチドの測定原理を示した論文(特許取得済み)を投稿し、さらに質問学習法を用いてHLA class II結合性ペプチドの自動予測を可能にした論文の受理も目指す。HLA class I, class II分子結合性ペプチドレパートリーのallele間での重なりを調べた論文発表を行う(データは、ほぼ取得済み)。 ECによる抗原提示が臓器特異的自己免疫疾患の発症に関係することを示す結果が得られたため、実験的自己免疫性脳脊髄炎モデルについて論文をまとめる。(宇高)
マウスMHCクラスII (I-Ab) 拘束性Th1細胞が認識する、がん抗原長鎖ペプチドの同定については、RNAseqデータに基づいて宇高研究代表者らとの共同研究により、新規アルゴリズムを利用してこれらを推定し、さらに抗腫瘍免疫の誘導能がより強力な多種類の長鎖ペプチドを同定する。 また、がん抗原ペプチド負荷樹状細胞ワクチンと抗PD-1抗体の併用免疫療法の前後の、腫瘍浸潤T細胞や所属リンパ節中のT細胞が発現するT細胞受容体のレパトア解析をA01研究班の小笠原研究代表者と、さらに優勢を占めるT細胞レパトアに属する単一T細胞に発現するTCR遺伝子の同定と抗原特異性の解析を、A01研究班の岸研究代表者との共同研究により継続して実施する。このように次世代複合がん免疫療法の効果について多面的に解析して、その開発研究を推進する予定である。(西村)
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Research Products
(30 results)
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[Journal Article] Development of a novel monoclonal antibody that binds to most HLA-A allomorphs in a conformation-dependent yet peptide-promiscuous fashion.2020
Author(s)
Komatsu T, Shimizu T, Kanoh M, Miyakawa T, Satta Y, Yasukochi Y, Fujimoto R, Tada M, Machida K, Kataoka S, Udaka K.
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Journal Title
Immunogenetics
Volume: 72
Pages: 143-153
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] A phase I study of multi-HLA binding peptides derived from heat shock protein 70/glypican-3 and a novel combination adjuvant of hLAG-3Ig and Poly-ICLC for patients with metastatic gastrointestinal cancers: YNP01 trial.2020
Author(s)
Nakajima M, Hazama S, Tamada K, Udaka K, Kouki Y, Uematsu T, Arima H, Saito A, Doi S, Matsui H, Shindo Y, Matsukuma S, Kanekiyo S, Tokumitsu Y, Tomochika S, Iida M, Yoshida S, Nakagami Y, Suzuki N, Takeda S, Yamamoto S, Yoshino S, Ueno T, Nagano H
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Journal Title
Cancer Immunol Immunother
Volume: -
Pages: -
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Identification of a Promiscuous Epitope Peptide Derived From HSP70.2019
Author(s)
Matsui H, Hazama S, Tamada K, Udaka, K, Irie A, Nishimura Y, Miyakawa T, Doi S, Nakajima M, Kanekiyo S, Tokumitsu Y, Shindo Y, Tomochika S, Yoshida S, Iida M, Suzuki N, Takeda S, Yamamoto S, Yoshino S, Ueno T, Nagano H
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Journal Title
J Immunother
Volume: 42
Pages: 244-250
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Type I Interferon Delivery by iPSC-Derived Myeloid Cells Elicits Antitumor Immunity via XCR1+ Dendritic Cells.2019
Author(s)
Tsuchiya N, Zhang R, Iwama T, Ueda N, Liu T, Tatsumi M, Sasaki Y, Shimoda R, Osako Y, Sawada Y, Kubo Y, Miyashita A, Fukushima S, Cheng Z, Nakaki R, Takubo K, Okada S, Kaneko S, Ihn H, Kaisho T, Nishimura Y, Senju S, Endo I, Nakatsura T, Uemura Y
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Journal Title
Cell Reports
Volume: 29
Pages: 162-175.e9
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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