2017 Fiscal Year Annual Research Report
Structural analysis of neo-self
Project Area | Creation, function and structure of neo-self |
Project/Area Number |
16H06500
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
横山 茂之 国立研究開発法人理化学研究所, 横山構造生物学研究室, 上席研究員 (00159229)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笹月 健彦 九州大学, 高等研究院, 特別主幹教授 (50014121)
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Project Period (FY) |
2016-06-30 – 2021-03-31
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Keywords | 免疫学 / タンパク質 / アレルギー・ぜんそく / 立体構造 / MHC / TCR |
Outline of Annual Research Achievements |
1. HLA-DP5を発現したマウス抗原提示細胞の表面に提示されるpCry j-1の量は、ペプチドのN末端側隣接領域や、HLA-DP5のホモ会合界面への変異導入により、著しく減少した。このことから、HLA-DP5のホモ会合は、提示細胞における抗原提示を著しく強化することが明らかになった。(横山) 2. HLA-DP5とpCry j-1を認識するTCR(岸班)をTG40細胞に発現し、HLA-DP5発現マウス抗原提示細胞とpCry j-1によって刺激し、T細胞活性化(IL-2産生量)を解析した。ペプチド隣接領域や、HLA-DP5ホモ会合界面の変異により、T細胞活性化が著しく低下した。このことから、T細胞活性化におけるホモ会合体の重要性が明らかになった。(笹月) 3. pCry j-1融合HLA-DP5とTCR(αβ)の細胞外領域同士の結合は弱く、結晶構造解析は容易ではないことが判明した。そこで、独自の無細胞タンパク質合成法のS-MF法により、膜貫通領域を含む全長のTCR(αβ)とCD3(γε・δε・ζζ)のヘテロ8量体を大量調製することに成功した。(横山) 4. HLA-DP5が相関するアレルギー疾患(スギ花粉症)と比較することを目指して、同じHLA-DP5が相関する自己免疫疾患(グレーブス病)に関して、甲状腺刺激ホルモン受容体(TSHR)全領域の中からT細胞を活性化するペプチドを同定し、これを認識するT細胞からTCRαとTCRβの遺伝子を複数クローニングした。(笹月、岸) 5. 橋本病(HT)からグレーブス病(GD)に転換(conversion)した患者(cGD)87名とHT、GD、健常コントロールとの比較から、転換を正に支配するHLAと、負に支配するHLAをそれぞれ同定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. アレルギー疾患(スギ花粉症)における外来抗原ペプチド(pCry j-1)とHLA-DP5との複合体の結晶構造解析によって発見したホモ会合体形成に関して、構造情報から設計したペプチドおよびHLA-DP5の変異体を用いた機能解析を行い、HLA-DP5ホモ会合体形成が、抗原提示細胞上でのペプチド提示量を増大し、さらに、T細胞活性化をも増強することを解明した。これにより、HLAの会合様式が、「ネオ・セルフ」の解明において、抗原提示様式の鍵となる課題であることが実証された。 2. 「ネオ・セルフ」を特徴付ける抗原提示様式の解明に向けて、HLAとTCRの結合様式を構造解析によって解明することが中核的な目標となる。今年度は、これまでの標準的なアプローチであるHLAやTCRの細胞外領域の試料の使用は、本研究の目的には適さないことが明らかになってきた。そこで新たな戦略として、膜貫通領域を含む試料を作成して、膜タンパク質としてのHLAおよびTCRの会合を再現することに目標を切り換えた。さらに、TCRの会合には、CD3との複合体形成が必須であると考えられるため、全長のTCR(αβ)とCD3(γε・δε・ζζ)の複合体の調製を目指し、独自の無細胞タンパク質合成法を活用することによって、優れた試料の調製法を確立することに成功した。 3. スギ花粉症等の外来抗原と、自己免疫疾患における自己抗原の「ネオ・セルフ」の共通性と特異性を解明することが、「ネオ・セルフ」の普遍的な解明に重要である。今年度には、スギ花粉症と同じくHLA-DP5が発症を支配する自己免疫疾患(グレーブス病、GD)に関して、甲状腺刺激ホルモン受容体(TSHR)全領域からT細胞を活性化するペプチドを同定し、これを認識するT細胞からTCRαとTCRβの遺伝子を複数クローニングした。これにより、構造解析を開始することが可能になった。
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Strategy for Future Research Activity |
1. HLA-DP5・pCry j-1複合体を認識する患者由来TCRについて膜貫通領域を含むTCR・CD3ヘテロ8量体試料を調製し、結晶化スクリーニングを進めるとともに、低温電子顕微鏡(cryo-EM)の単粒子解析の適用可能性を検討して、TCR・CD3ヘテロ8量体の立体構造として世界初の成果を目指す(横山)。 2. 上述1.のTCR・CD3ヘテロ8量体について、HLA-DP5・pCry j-1との複合体の構造解析に向けて、手法の検討を進める。HLA-DP5側については、膜貫通領域を含む全長試料と、細胞外領域試料について並行して検討する(横山)。 3. HLA-DP5・pCry j-1のホモ会合体形成とTCRのナノクラスター形成との間の関連を検討するため、横須賀班の1分子イメージングと連携し、試料および情報を提供する(横山)。 4. HLA-DP5と、グレーブス病の自己抗原TSHR由来ペプチドとの複合体の結晶構造解析を進め(横山)、HLA-DP5・pCry j-1の結晶構造と比較して、自己抗原と外来抗原についての提示様式の差異と共通性を明らかにすることを目指す(笹月)。 5.外来抗原と自己抗原のネオ・セルフを比較する第二のターゲットとして、HLA-DR53を取り上げ、スギ花粉症のCry j-2と自己免疫疾患(橋本病)のTGについて、反応する患者T細胞を用いて、ペプチドの同定とTCR遺伝子のクローニングを進める(笹月、岸)。最終的には、HLA-DR53・pCry j-2とHLA-D53・pTGの結晶構造解析を行い、HLA-DP5・pCry j-1とHLA-DP5・pTSHRとの比較と合わせて、ネオ・セルフの普遍的な解明を目指す(横山・笹月)。
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Research Products
(3 results)