2017 Fiscal Year Annual Research Report
Genetic analysis of neo-self
Project Area | Creation, function and structure of neo-self |
Project/Area Number |
16H06502
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
椎名 隆 東海大学, 医学部, 准教授 (00317744)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
細道 一善 金沢大学, 医学系, 准教授 (50420948)
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Project Period (FY) |
2016-06-30 – 2021-03-31
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Keywords | ネオ・セルフ / HLA / 疾患感受性 / 多型 / アレル / 遺伝子発現 / NGS |
Outline of Annual Research Achievements |
特定のHLAアレルとの関連性が示されている疾患は100種以上に及ぶが、「なぜHLAと疾患が関連するのか?」という疑問は長年未解決のままである。本研究班では、NGSの革新的技術を駆使し、「ネオ・セルフ」に起因する疾患発症機序を明らかにすることに挑戦している。ネオ・セルフ形成に関わる先天的および後天的な遺伝要因をゲノム研究の観点から包括的に理解する類似研究はなく、本国がこの分野での主導権を握る上での急務の課題である。日本人に高頻度なHLAアレル、計253種類の塩基配列を遺伝子全領域レベルで決定した。同種造血幹細胞移植に伴う急性GVHD はHLA-DPB1のエキソン3 - 3’UTRがリスクとなることを明らかにした。NGSによる各HLA座のアレルごとのRNA発現解析法を開発し、HLA-DRAを除けば1.3-7.3倍のRNA発現量のアレル間差異があることを明らかにした。このアレル間差異はin vitro実験でも再現性があることを実証した。日本人 (n=1,120) の33個のHLA遺伝子のNGSによる高解像度HLAタイピングとそれらの連鎖不平衡構造を元にHLA imputationのためのリファレンスを作成した。日本人集団における膨大なGWASデータ (n=166,190) のSNPデータからHLA imputationを実施し、52の表現型において顕著な遺伝子型-表現型の関連を同定した。HLA領域における多型情報およびHLA遺伝子間の相関ネットワーク解析から、複数のHLA遺伝子による構造パターンが異なる表現型間で共有されることを見出した。AA患者白血球におけるHLA片アレル分子欠損を対象にNGS解析からHLA-Bアレルを介した造血幹/前駆細胞による細胞傷害性T細胞への抗原提示がAAの発症機序となっている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
NGSによる疾患ゲノム解析の手法を開発し、その有用性を実証しつつあるため、概ね順調に進展していると言える。また、研究開始当初からの目的に変更は無く、大きな計画変更も無い。ところが、この2年間の研究成果から見えてきたのは、HLA領域のゲノム多様性と疾患の関連は当初の予想よりも複雑であるということであった。関連する疾患とHLA領域全体で推定される遺伝的効果および各HLA遺伝子間の遺伝的相関ネットワーク解析から、表現型に共有される複数のHLA遺伝子による構造パターンが見出された。この複雑さは当初から予測しており、HLA領域の網羅的なゲノム情報、転写制御を含む機能的な多型情報、HLAハプロタイプを考慮したRNA-seqによるトランスクリプトーム解析、ATAC-seqによるオープンクロマチン領域解析、DNAメチル化解析を視野に入れた計画としていた。トランスクリプトームおよびエピジェネティック形質は組織・細胞特異性があるため、当初の計画に加えて細胞間異質性も考慮した一細胞レベルでの解析も検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
HLAアレル情報やRNA発現情報の基盤整備とそれらを駆使した疾患関連機能的HLAの検索、HLA-PheWASによるネオ・セルフ惹起因子の検索、の2つのテーマを計画する。これらの研究は現在までの成果に基づく新たな解析手法や知見に基づくものであり、疾患やがんにおけるHLA変化を多型とRNA発現の両面から明らかにすることを目指す。 ① 406ドナー・AML患者ペア、計812検体のアレル塩基配列を対象に、新規アレルの同定などHLA多型の特徴付けを行うことにより日本人におけるHLA多型情報を整備する。NGSによるRNA発現解析を引き続き実施し、HLA RNA発現プロファイルを完成させ、最終的には、多型とRNA発現を融合させた本研究班独自のHLAタイピング法を提唱したい。また、この方法を駆使しながらAMLやATLなどの白血病細胞や筋炎における遺伝子発現に重要な役割を担うネオ・セルフ生成の遺伝要因をHLA多型とRNA発現の両面から明らかにする。 ② 種々のHLA関連疾患のデータを基盤とし、HLA領域における転写制御領域も含めた解析を実施し、より詳細な遺伝子型-表現型の関連の構造を解明する。HLA領域の各遺伝子に転写調節領域多型も含めた遺伝的相関ネットワーク解析から、表現型に共有されるHLA遺伝子および転写調節領域多型による構造パターンを検討し、MHCランドスケープ(MHC-PheWAS) 成果からのネオ・セルフ惹起因子を特定する。MHC-PheWASから明らかになった遺伝子型-表現型の関連の構造はどのように機能的し、なぜ疾患発症に至るのか、ゲノムDNA、RNAおよび転写制御メカニズムを明らかにするためのエピジェネティック解析を統合したオミックス解析手法により明らかにする。発症機序を理解することは病態を制御することにも繋がり、新たな治療のアプローチも期待できることから、MHC-PheWASの結果とオミックス解析から、創薬ターゲットとなる機能的な遺伝子型-表現型の関連を同定し、将来的にその現象を制御することを目指す。
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[Journal Article] Antibody against GRP94 induced in MHC-matched macaques by transplantation of tumor cells derived from iPS cells with a homozygous MHC haplotype2017
Author(s)
Ishigaki H, Maeda T, Inoue H, Akagi T, Sasamura T, Ishida H, Inubushi T, Okahara J, Shiina T, Nakayama M, Itoh Y, Ogasawara K
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Journal Title
Cancer Res.
Volume: 77
Pages: 6001~6010
DOI
Peer Reviewed
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