2019 Fiscal Year Annual Research Report
アシンメトリック配位空間を鋳型とした機能性ナノ材料創製
Project Area | Coordination Asymmetry: Design of Asymmetric Coordination Sphere and Anisotropic Assembly for the Creation of Functional Molecules |
Project/Area Number |
16H06517
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
植村 卓史 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (50346079)
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Project Period (FY) |
2016-06-30 – 2021-03-31
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Keywords | MOF / キラル / 複合体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、キラルMOFを用いることで、不斉炭素を持たずアキラルな平面構造を持つ多環芳香族炭化水素(polycyclic aromatic hydrocarbon、PAH)へのキラリティ付与に取り組んだ。PAHとしてアントラセンおよびテトラセンを用いた。また、ホストMOFとしてLaイオンと1,3,5-ベンゼントリスベンゾアート(BTB)から構成され、10.7×10.7Å2の一次元ナノ細孔を有するMOF, LaBTBを用いた。LaBTBは合成時にキラル指向剤を用いることでキラルな配位環境を有する鏡像異性体を作り分けることができる。 これまで行われてこなかった非修飾アセンへのキラリティ誘起をキラルMOFのナノ細孔内に導入することで行った。複合体のCDスペクトルから、L体とD体で鏡像関係のシグナルが観測されたことから、アントラセンおよびテトラセンのキラリティ発現を確認した。また、修飾によってねじれさせたアセンとの比較により、ゲスト分子がねじれている可能性が考えられる。今後、ねじれていることの確認として単結晶X線構造解析を行い、直接観測を行うことを考えている。 キラルMOFは、自己集合を利用することで、キラリティの制御された精密なナノ空間を簡便に作り出すことができる。このナノ空間内に拘束することでねじれが誘起されるのならば、その特異な構造ゆえに遅れていたねじれたアセンの物性の調査や応用が促進されることが期待される。また、ねじれることによって電子構造が変わるので、バルクでは不可能である新たな反応経路への応用も可能であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高分子だけにとどまらず、アセンなどのナノカーボン系材料へもキラリティ付与が可能と明らかになったため。
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Strategy for Future Research Activity |
この手法は様々な形の多環芳香族化合物に対して適用可能であり、グラフェンナノリボンやカーボンナノチューブ、あるいはさらに対称性の高い物質などへのキラル誘起が期待される。例えば、グラフェンナノリボンを細孔内でねじらせたのちに重合することで、キラルな構造制御のなされたカーボンナノチューブの精密合成ができる。このようにいままでは困難だったような様々なキラル材料の創製へとつながっていくことが期待でできる。
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