2017 Fiscal Year Annual Research Report
表面配位に基づく非対称ナノ粒子システムの構築と光・電子機能開拓
Project Area | Coordination Asymmetry: Design of Asymmetric Coordination Sphere and Anisotropic Assembly for the Creation of Functional Molecules |
Project/Area Number |
16H06522
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
中嶋 琢也 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 准教授 (70379543)
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Project Period (FY) |
2016-06-30 – 2021-03-31
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Keywords | 半導体ナノ結晶 / ナノクラスター / 円二色性 / 円偏光発光 |
Outline of Annual Research Achievements |
特定原子数のAg(原子、イオン)からなるナノクラスター(NC)は錯体やナノ粒子とも異なる特異的な電子遷移を示し、しばしば強い発光を与える。ジヒドロリポ酸(DHLA)の両エナンチオマーを用いてAg29 NCを合成し、ミラー対称形のCDとCPLスペクトルを初めて見出している。今年度は、Ag29表面におけるキラル構造と発光特性の相関を評価するため、Ag29(DHLA)12をモデル構造として、DHLAの2つのチオール基とカルボキシ基による三座配位構造の構造安定性の観点から錯体の安定性を考察した。即ち、Ag NCの表面キラル構造はDHLAの表面三座配位構造を通じたクラスターの安定化と強く相関していることを明らかにした。この考察に従って、来年度の研究を推進する。 一方、硫化水銀(HgS)の最安定結晶構造は三方晶系のキラル結晶(シナバー)である。HgSナノ粒子は、一旦、アキラルなメタシナバー晶を経由してキラル晶へと変換されることが見出されており、これがキラル誘起過程と言える。しかし、配位子の表面配位構造の役割、ならびにキラル誘起過程の動力学は未解明である。本年度は、キラル配位子の化学構造とHgSキラル晶誘起の相関を評価し、特に、単一キラル配位子(N-メチル-L-システイン:Ac-L-Cys)を用いたキラル反転現象を見出した。調製直後Ac-L-Cys被覆HgSナノ粒子は正の第一コットン効果を示した。これを80度で加熱したところ、CDスペクトルが連続的に変化し、最終的に正負逆転したCDスペクトルを与えた。Ac-L-Csyはチオールとカルボキシ基またはチオールとアミド基の二座配位パターンを形成し、これらはほぼ鏡像関係にある。即ち、この表面における二座配位パターンの変化がHgSナノ粒子のキラル原子配列の反転を誘起していると考察した。さらに、FTIR測定、ならびに量子化学計算の結果から、キラル配位子の表面二座配位パターンがHgSナノ粒子コアのキラル誘起に重要な役割を果たしていることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
漠然とした表面キラル構造ではなく、キラル配位子の化学構造に基づいた表面金属原子・イオンへのキラル配位構造とナノ粒子・クラスターの物性との相関まで踏み込んで評価することが出来ている。これは当初の計画通りの進展であり、順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、表面キラル配位構造とキラリティ誘起の相関について研究を進める。 特に、表面キラル配位子の光学純度を系統的に制御し、発光特性、円二色性並びに構造安定性を指標とすることで表面キラリティがナノ粒子系に与えている役割について明らかにしていく方針である。
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