2018 Fiscal Year Annual Research Report
Analysis of genes that affect individuality
Project Area | Integrative research toward elucidation of generative brain systems for individuality |
Project/Area Number |
16H06528
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
星野 幹雄 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 病態生化学研究部, 部長 (70301273)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 高良 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 疾病研究第六部, 室長 (20370984)
菅野 康太 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 准教授 (80722470) [Withdrawn]
天野 睦紀 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (90304170)
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Project Period (FY) |
2016-06-30 – 2021-03-31
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Keywords | 脳 / 個性 / 遺伝子 / AUTS2 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトを含む哺乳類の脳は「臨界期」と呼ばれる時期にテストステロン刺激を受けると男性化し、その刺激を受けないと女性化する。しかし「臨界期」以前の脳の性分化機構についてはよくわかっていなかった。まず、膵臓や小脳の発達に関わるPtf1a遺伝子が「臨界期」より遥かに前の胎児期において視床下部と呼ばれる脳領域の神経前駆細胞で発現することを見出した。その領域でPtf1a遺伝子を破壊したノックアウトマウスを作製したところ、その脳は「臨界期」にテストステロン刺激を受けても男性化できず、その一方でテストステロン刺激を受けない場合でも女性化できないことが観察された。このことから、(1)脳の性分化(男性化または女性化)のためには、「臨界期」以前に「性分化準備状態」になる必要があること、そして(2)胎児期の視床下部Ptf1aが脳を「性分化準備状態」へと導き、その後の「臨界期」でのテストステロン刺激・非刺激によって男性脳・女性脳へと性分化させるということが明らかになった(Fujiyama et al., Cell Reports, 2018)。Ptf1aはそれらの中で最も早く働く最上流遺伝子であり、脳の性分化の最初期段階を明らかにしたとも考えられる。AUTS2遺伝子については、前年度に引き続き終脳特異的、小脳特異的コンディショナルノックアウト(cKO)マウスの解析を行った。また、前年度までに解剖学的解析をある程度終えていたが、本年度には行動解析(通常のふるまい、平衡感覚、社会性行動等)を行い、優位な変化を検出することができた。本年度は、前年度からの研究に引き続いて、ヒトのAUTS2ゲノム領域のBAC トランスジェニック(BAC-Tg)-LacZマウスを作成し、どのゲノム領域にどのようなエンハンサー活性があるか調べ、どんどんと絞り込むことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
胎児視床下部において転写因子Ptfa1が脳を「性分化準備状態」へと導き、その後の臨界期におけるテストステロン刺激の有無に対応して、脳の男性化・女性化がもたらされるということを明らかにすることができた。これは、脳の性分化の最上流メカニズムを見出したということでもあり、また男性らしさ、女性らしさという個性表出の理解にもつながると思われる。人についての男らしさ、女性らしさというのは、マウスなどに比べると社会的要因も大きいとは思われるが、しかしこうした生物学的なバックボーンを見出したことは、個性理解について大きな貢献をすると思われる。 AUTS2遺伝子については、前年度に引き続き終脳特異的、小脳特異的コンディショナルノックアウト(cKO)マウスの解析を行った。大脳皮質浅層ニューロンの数がなぜ現象するのか、海馬が縮小するのはなぜか、などのメカニズム解明に取り組んできた。また、行動解析(通常のふるまい、平衡感覚、社会性行動等)を行い、優位な変化を検出することができた。BAC トランスジェニック(BAC-Tg)-LacZマウスの解析については、今年度新たに5系統作製しており、おおむね順調である。様々な脳領域で発現する複数種類のエンハンサーを含むゲノムを同定した。その他、AUTS2がシナプスの数の制限に働くこと、その調節がうまくいかないと振る舞い(個性につながると考えている)に変化が生じること、などがわかってきた。 以上から、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
脳の性分化機構についてはPtf1aの下流分子のに果たす機能について、さらに解析する。今後はBAC トランスジェニック(BAC-Tg)-LacZマウスの解析については、もう少し系統の数を増やして、そのエンハンサー領域の同定と絞り込みを行う。特に大脳皮質(しかも前側)、および小脳のエンハンサーの同定と絞り込みに努める。AUTS2の終脳特異的cKOマウスについては、Intermediate Progenitorの機能異常を見出しつつあるので、その機能解析を精力的に行う。この研究は、ヒトの脳の進化についても言及できるのではないかと考えている。小脳特異的cKOマウスについては、その解析が最終段階に入っており(小脳の縮小、シナプス形成異常、行動異常など)、その結果を論文として発表する。
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Research Products
(14 results)
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[Journal Article] Forebrain Ptf1a Is Required for Sexual Differentiation of the Brain2018
Author(s)
Fujiyama Tomoyuki、Miyashita Satoshi、Tsuneoka Yousuke、Kanemaru Kazumasa、Kakizaki Miyo、Kanno Satomi、Ishikawa Yukiko、Yamashita Mariko、Owa Tomoo、Nagaoka Mai、Kawaguchi Yoshiya、Yanagawa Yuchio、Magnuson Mark A.、Muratani Masafumi、Shibuya Akira、Nabeshima Yo-ichi、Yanagisawa Masashi、Funato Hiromasa、Hoshino Mikio
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Journal Title
Cell Reports
Volume: 24
Pages: 79~94
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Presentation] Loss of Auts2 induces the defects of synaptic function and cognitive brain functions2018
Author(s)
Hori K, Nagai T, Shan W, Yamad M, Shiraishi R, Sakamoto A, Kanno K, Abe M, Yamada K, Sakimura K, Hoshino M
Organizer
新学術領域個性創発脳第1回国際シンポジウム
Int'l Joint Research / Invited
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