2018 Fiscal Year Annual Research Report
Imaging genomic analysis for deciphering cell and brain individuality
Project Area | Integrative research toward elucidation of generative brain systems for individuality |
Project/Area Number |
16H06531
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Research Institution | Center for Novel Science Initatives, National Institutes of Natural Sciences |
Principal Investigator |
郷 康広 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(新分野創成センター、アストロバイオロジーセンター、生命創成探究, 生命創成探究センター, 特任准教授 (50377123)
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Project Period (FY) |
2016-06-30 – 2021-03-31
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Keywords | 個性 / シングルセル / ゲノム / 細胞 / 脳 / 疾患モデル / 霊長類 / 精神疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
「個性」とは何か?どのように創発されるのか?それらの問題に対して,ゲノム科学と脳科学の学際的研究領域である認知ゲノミクス的アプローチをヒトに近縁な霊長類に対して用いることによって,脳とこころの「個性」創発メカニズムを分子のことばことはで実証的に理解することを目的とする.
「個性」創発の最も基盤となるゲノムの個体差の網羅的解析を,アカゲザルとマーモセットを用いて解析した.脳とこころの「個性」創発メカニズム解明に向けたアプローチのひとつとして,脳やこころが正常でない状態である精神疾患にある脳やその身体の状態を理解し,正常状態との比較を行う方法が考えられる.そこで,アカゲザルとマーモセットにおいて,ヒト精神疾患関連遺伝子の変異解析を行い,霊長類における精神疾患自然発症モデルの同定を行った.精神疾患に関与が強く疑われる約500遺伝子を解析対象とし,マカクザル831個体,マーモセット1328個体を対象とした遺伝子機能喪失変異保有個体の同定を行った.その結果,マカクザルでは53遺伝子,マーモセットでは142遺伝子おいて稀な(集団アリル頻度5%以下)遺伝子機能喪失変異を持つ個体を同定した.
また,細胞の個性を単一細胞ごとに高精度に計測するための実験系をたちあげ,マウスおよびマーモセット脳を対象とした,細胞の個性解析システムに関する実験を行った.従来の細胞からの単一細胞の調整方法に加えて,細胞核を対象とした単一細胞核由来トランスクリプトーム解析技術の開発を行った.それらの技術を用いて,他の計画研究班(2件)および公募班(1件)との連携研究としてシングルセルトランスクリプトーム研究を推進した.また,微量(数細胞から100細胞程度)から特定の脳領域(数百万細胞)のさまざまなスケールにおけるトランスクリプトーム研究を連携研究として行った(計画研究4件,公募研究1件).
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
霊長類(マカクザルおよびマーモセット)を対象とし,精神疾患に関与が強く疑われる約500遺伝子に対して遺伝子機能喪失変異保有個体の同定を行った結果,多くの興味深い遺伝子機能変異異常個体を同定した.また,そのうちのいくつかは形態学的,生理学的,行動学的な表現型と密接に関連する疾患を呈する個体であった.
細胞の個性を単一細胞ごとに高精度かつハイスループットに計測するための実験系を確立することができた.特に細胞核を用いた実験系を確立することができた.具体的には,組織から細胞核を抽出し,DAPIで染色したあと,セルソーターを用いてDAPI陽性の細胞を回収する方法を開発した.セルソーターの回収液に逆転写酵素以外の反応バッファーをあらかじめ用意することで,回収後の細胞核を遠心操作など一切せずにライブラリ作製装置に持ち込むことで短時間・高効率・良質なライブラリを作製できる実験系を確立することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きヒト精神・神経疾患病態解明のための霊長類モデル動物の開発にむけ,マカクザルおよびマーモセットにおける遺伝子機能喪失変異を持つ個体の同定を進めていく.2019年4月時点で,マカクザル1488個体,マーモセット2154個体のDNAおよびRNA試料を保有している.特にマーモセットに関しては,日本の主な飼育施設の個体群を網羅しており,極めて貴重なバイオリソースである.解析においては,解析処理のための並列化パイプラインの再構築を行い,遺伝子機能喪失変異保有個体の同定を速やかに進めていく.
マカクザル,マーモセットともにそれぞれ1000個体以上の遺伝子解析に目処がたち,数多くの精神・神経疾患関連遺伝子に遺伝子機能喪失変異をヘテロ接合で保有する個体が同定できた.今後,これまでの解析で明らかになった遺伝的情報を用いたモデル動物の作出を進める.具体的には,ヘテロ保有個体同士の人工授精などによる交配を行いホモ個体の作出を目指す.また,遺伝子機能喪失変異を保有する個体とその対照となる個体を用いた中間表現型解析の標準化も重要な課題である.有望な中間表現型として,VBMや拡散テンソル画像を用いた脳構造解析,安静時機能的MRIなどの脳機能解析,集団(社会)の中での定量的な行動解析などが考えられる.すでに,生理学研究所,理化学研究所などとの共同研究として,高磁場MRI装置を用いたマカクザル,マーモセットにおける脳構造・機能解析の共同研究を開始している.また,本新学術領域内の連携研究としてマカクザルを中心としたマーカレスモーションキャプチャーシステムの構築と行動データの自動取得・機械学習によるデータの定量化に向けた研究を推進する.
また,シングルセルトランスクリプトーム解析を含めた細胞の「個性」解析のための技術開発を進め,新学術領域班員への技術支援を積極的に行い,領域内連携研究をさらに推進する.
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Research Products
(13 results)