2018 Fiscal Year Annual Research Report
線虫の全脳イメージングによる探索型ナビゲーション神経基盤の解明
Project Area | Systems Science of Bio-navigation |
Project/Area Number |
16H06545
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
木村 幸太郎 名古屋市立大学, 大学院システム自然科学研究科, 教授 (20370116)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石原 健 九州大学, 理学研究院, 教授 (10249948)
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Project Period (FY) |
2016-06-30 – 2021-03-31
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Keywords | 脳・神経 / ナビゲーション / 行動 / イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
探索型ナビゲーションは、環境からの乏しい情報を元に目的地にたどり着くための手段であり、これには効率的な情報の抽出や蓄積、判断、行動の制御など、様々な脳活動が必要である。線虫C. エレガンスは、化学物質(匂いや味)に対して探索型ナビゲーションを行う事、わずか302個の神経細胞から構成される全回路構造が解明されている事、神経機能に必要な遺伝子はヒトなどと高い共通性を持つ事などから、探索型ナビゲーションを制御する神経細胞活動を明らかにするためのモデルとして優れている。本研究では、探索型ナビゲーションに関わる神経活動の全貌を解明するために、「課題1:刺激-行動対応解明のための半自動分析方法の確立」「課題2:全脳神経活動の同時イメージング」「課題3:刺激と行動を結ぶ脳機能のモデル化とシステム同定」「課題4:フィードバック介入実験によるモデルの検証」を目指している。 課題1 刺激-行動の対応解明のための半自動分析方法の確立:領域内の分野融合的共同研究として、ペンギン・ショウジョウバエ・ラットのデータを解析することで、本研究で開発した行動解析手法の正しさおよび適用範囲の広さを検証し、投稿した。 課題2 全脳神経活動の同時イメージング: 開発した三次元追跡ソフトを、国際共同研究としてゼブラフィッシュ幼魚の心筋細胞の追跡に適用した。この結果を合わせて、プレプリントサーバに投稿した。 課題3 脳機能のモデル化:課題2で抽出したC. エレガンス全脳の神経細胞およそ150個の活動のモデル化を行った。 課題4 フィードバック介入実験によるモデルの検証:フィードバック介入に必要な形質転換株作成のための実験を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
大きく進展した課題1と2について主に報告する。 課題1:領域内のB01生態グループ高橋班からペンギンの採餌行動のデータを得て、解析を行った。本手法で半自動的に推定した行動状態と、水深情報などを用いて専門家(高橋)が推定した状態とを比較した結果、ほぼ90%以上の精度が得られた。C. エレガンスとペンギンはその行動が距離的および時間的スケールにおいて非常に大きく異なるにも関わらず、統一した手法で精度の高い結果(C. エレガンスも90%以上)が得られるという予想外の結果となった。これ以外にも、ショウジョウバエやラットの行動データを解析し、従来には無かった知見を得る事ができた。これらの結果を合わせて、国際専門誌に論文を再投稿した。 課題2:深層学習技術を用いた神経細胞の三次元追跡ソフトが完成した。さらに国際共同研究として、米国コロンビア大学Hillman教授が取得したゼブラフィッシュ幼魚の心筋細胞を三次元追跡する機会を得た。Hillman教授は従来とは全く異なる光学系を持つ超高速三次元顕微鏡装置SCAPE 2.0を開発して、自然な状態のゼブラフィッシュ幼魚の心臓の拍動を細胞レベルで観察することを可能にしたが、三次元空間を大きく動き回る細胞を適切に追跡する汎用性の高いソフトウェアが存在せず、未解析のままであった。我々がC. エレガンス用に開発したソフトを適用した結果、90%近くの細胞を1000立体像に渡って追跡することができた。これらの結果をまとめて、国際専門誌に論文を投稿した。 課題3:課題2で得られたC. エレガンス全脳神経細胞の活動データを用いて、データ駆動型動的モデルによって神経細胞間の活動関連の解明を行う手法の検討を開始した。 課題4:フィードバック介入に必要なDNAなどの作成を開始した。
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Strategy for Future Research Activity |
課題1 刺激-行動の対応解明のための半自動分析方法の確立:現在再投稿中の論文の受理を目指す。また、本手法を様々な動物の行動データに用い、重要な知識の発見を目指す。 課題2 全脳神経活動の同時イメージング:投稿中の論文の受理を目指す。 課題3 刺激と行動を結ぶ脳機能のモデル化とシステム同定:今年度は、課題2で得られたC. エレガンス全脳神経細胞の活動データを用いて、データ駆動型動的モデルによって神経細胞間の活動関連を解明する手法の検討を開始した。特定の神経細胞の活動を1単位時間前の他の全ての細胞の活動の関数として表すこと目標とし、様々なモデルを試している。来年度は、この手法の確立を目指す。 課題4 フィードバック介入実験によるモデルの検証:フィードバック介入のためには、数理モデルによって強い関連が示唆された細胞間において、上流の神経細胞を光遺伝学的操作で活性化し、下流の神経細胞の活動をカルシウムイメージングで計測する必要がある。今年度は、これらを可能にする形質転換株樹立のため、必要な細胞選択的プロモータの検討を開始した。来年度は細胞選択的プロモータを決定し、さらに光刺激依存的陽イオンチャネルChrimsonを発現する形質転換株の樹立をめざす。
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Research Products
(11 results)