2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Establishing a new paradigm of social/human sciences based on rerational studies: in order to overcome contemporary global crisis |
Project/Area Number |
16H06547
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
松永 泰行 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (20328678)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 恵美 早稲田大学, イスラーム地域研究機構, 主任研究員(研究院准教授) (00535437)
井上 あえか 就実大学, 人文科学部, 教授 (30388988)
増原 綾子 亜細亜大学, 国際関係学部, 准教授 (70422425)
岩坂 将充 同志社大学, 高等研究教育機構, 准教授 (80725341)
中山 裕美 東京外国語大学, 現代アフリカ地域研究センター, 講師 (90634014)
錦田 愛子 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 准教授 (70451979)
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Project Period (FY) |
2016-06-30 – 2021-03-31
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Keywords | 国家 / 制度 / 関係性 / トランスナショナル / 変容 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画は、主体・制度としての国家が、地域やグローバルなレベルにおける諸変動の影響、さらに難民・移民の到来や宗教・宗派・民族間の対立など越境的事象の拡散や浸透に抗しながら、いかにその領域主権国家性を維持しているかという観点から、実証的な調査研究を行い、「グローバル関係学」構築に資することを目指している。2017年度では、国内外のダイナミズムを含めた調査研究の主要対象国として、イラン、トルコ、エジプト、パキスタン、インドネシアに焦点を当てる一方で、特定の制度的構築のあり方のゆえに顕在化している、難民・移民の移動や受け入れに関わるガバナンスや国際レジームの構築に関する多国間連携の動態、さらに難民・移民の長期的滞在が引き起こすホスト社会における統合・非統合の問題についても、パレスチナ人およびシリア難民に関しヨルダンとスウェーデンで調査研究を実施した。とりわけ、ヨルダンとインドネシアでは、現地の調査機関の協力を得て、独自の世論調査を実施した。 加えて、研究領域全体に関わる「グローバル関係学」の理論的視座の構築のための全体集会、移民・難民に関する研究計画横断プロジェクト、2018年1月に領域全体が企画・共催したシンガポール国立大学での難民の移動とそれを巡る様々な問題をテーマとする国際会議に積極的に参加した。 さらに、研究計画独自で、イランとトルコにおける近代国家の歴史的構築過程を、上からの制度的な世俗化、それに対抗する下からの政治・国家の宗教化、さらにそれらを受けた再世俗化の模索の観点から、比較実証研究する国際研究集会を企画し、2017年11月に在ベイルート(レバノン)の中東研究日本センター(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所)において、トルコ、オーストラリア、イギリスから5名の研究者を招聘し、2日間に亘り実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理論的・分析的な視座に関して、第2年次である2017年度末までに、本研究計画の主題の観点から見た、十分に「関係学」的な新学術領域の一形態として、 様々な「通時的関係性」(変化を内包した順系列的、 過程的で社会構築的な繋がり)が、いかに複雑かつ状況依存的な形で錯綜し「グローバル危機」を形作っているかを研究する手がありうるとの共通理解を、ほぼ構築できた点が大きな理由の一つとして挙げられる。このことは、より本研究計画の主題に即すると、国境 の内外あるいは国境近辺における国家(領域主権「国民」国家)と制度(institutional arrangements and practices) が織り成す関係性(国際レジームを含む)のダイナミズムとそれに纏わる、あるいはそれが引き起こす諸問題を、複雑な「通時的関係性」の複層的かつ状況依存的 な錯綜の解明をめざす観点から検証・議論する必要があるという認識に要約できる。 第2年次においては、移民・難民に関する研究計画横断プロジェクト、さらに2018年1月に領域全体が企画・共催したシンガポール国立大学での難民の移動とそれを巡る様々な問題をテーマとする国際会議に積極的に参加したこも、共同研究の進展を具体的に示すものとして挙げられる。 また研究計画独自で進めている、イランとトルコにおける近代国家の歴史的構築過程を、上からの制度的な世俗化、それに対抗する下からの政治・国家の宗教化、さらにそれらを受けた再世俗化の模索の観点から、比較実証研究する国際的な共同研究も、2017年11月に第2回目の国際研究集会の開催することができ、議論を深めることができた点も、順調な進捗状況を示すものとして挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
第3年次である2018年度においては、過去1年半に亘り研究領域内で提起され議論されてきた、複数の「グローバル関係学」の視座を踏まえ、本研究計画として、「国家と制度」研究の観点から、「グローバル関係学」の構築に、引き続き、理論・概念面および個別実証研を通じて貢献することを目指す。より具体的には、国境の内外あるいは国境近辺における国家と制度が織り成す関係性(国際レジームを含む)のダイナミズムとそれに纏わる、あるいはそれが引き起こす諸問題を関係学的に検証する作業を、個別研究および共同研究の形で進めることを計画している。2018年度に関しては、主な研究対象に含めている国・地域は、イラン・イラク・トルコ・エジプト・パキスタン・ヨルダン・レバノン・ドイツ・インドネシア・ミャンマーである。また同様の観点から、グローバルおよび地域レベルにおける難民・移民の移動とそれを巡る国際レジームやガバナンスの問題の実証研究も行う。 加えて、当座の研究成果を国内外の関係学会(日本国際政治学会、日本比較政治学会、日本中東学会、グローバル・ガバナンス学会、世界政治学会他)で報告することも予定している。
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Research Products
(21 results)