2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | New Photosynthesis : Reoptimization of the solar energy conversion system |
Project/Area Number |
16H06553
|
Research Institution | National Institute for Basic Biology |
Principal Investigator |
皆川 純 基礎生物学研究所, 環境光生物学研究部門, 教授 (80280725)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
園池 公毅 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (30226716)
秋本 誠志 神戸大学, 理学研究科, 准教授 (40250477)
|
Project Period (FY) |
2016-06-30 – 2021-03-31
|
Keywords | 光合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.NPQ作動原理の解明 III ― NPQ作動原理の解明には、PSII超複合体の安定単離方法の確立は必須である。特に、構造解析や、周辺集光サブユニットが光環境に応じて集合離散する過程の機能解析には欠かせないが、これまでは技術的な困難が研究を阻んできた。本年は界面活性剤の一種アンフィポールを用いこれを可能とする技術を開発した。まず従来の洗剤型界面活性剤を用いてPSII超複合体を単離したのち、即座に洗剤型からアンフィポール型へ界面活性剤を置換することで周辺集光装置が超複合体から脱離することを防ぐことで、無傷の超複合体を高収量で得ることができるようになった。周辺集光サブユニットの脱離過程解析は再び洗剤型界面活性剤に置換することで行い、キネティクス解析によりそれぞれのサブユニットの結合定数を決定した。 2.強光シグナル伝達系の解明III ― フォトトロピンからの青色光シグナルがいかにLHCSR3遺伝子まで伝わるのかを調べるため、phot欠失変異株から3株の抑圧変異株を取得し解析した。その結果、ヒトを含め動物・植物に広く分布しているCUL4型E3ユビキチンリガーゼのサブユニット変異株ddb1-1、さらに、それと相互作用する因子の変異株det1-1, det1-2が得られた。これらのE3リガーゼ因子は陸上植物では光形態形成において重要な役割を果たすことがわかっており、その変異植物は暗所でも芽生えがおこる。一方、ヒトでは細胞周期や細胞死に関わっているとされ、がん抑制遺伝子や前がん遺伝子の制御に関わっていると報告されている。3つの抑圧変異株の解析から、DDB1、DET1、さらにE3リガーゼの足場サブユニットであるCUL4が互いに複合体を形成していること、これらの抑圧変異株では、LHCSR3ばかりでなく、LHCSR1遺伝子も誘導され、大きな強光耐性能力が実現されることなどが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究には、3つの柱がある。1)NPQ作動原理の解明、2)強光シグナル伝達系の解明、3)NPQの生理作用点の解明。このうち、本年度は技術的なブレークスルーがあり、1)の研究が大きくすすんだ、また2)の変異株の解析も緑藻に限らず広く真核生物全般にかかわる問題に広がり、1)、2)ともに当初の予想を超えて研究は進展している。次年度以降に向け、新しい変異株の取得も順調に進んだ。一方で、NPQ生理作用点の解明については、同分野で世界的な研究の流れが変わってきていること、実験系の改良に時間を要したことから、まだ目に見える成果は出てきていない。ただし、実験系は完成し、結果は出始めている状況である。全体としてみれば、「おおむね順調に進展している」との評価とする。
|
Strategy for Future Research Activity |
1.NPQ作動原理の解明 IV:陸上植物PSII超複合体との比較を通した緑藻PSII-LHCSR3超複合体におけるNPQ機構の解明。双方の超複合体のレーザー励起によるクロロフィル蛍光の詳細な単光子計測解析を行い、エネルギー散逸機構を比較する。緑藻PSII-LHCSR3超複合体の構造安定性の解析。緑藻PSIIアンテナ系の熱安定性を蛍光スペクトルを用いて解析し、アンテナ主導NPQの可能性を追求する。 2.強光シグナル伝達系の解明IV:LHCSR1/LHCSR3-ルシフェラーゼレポーター系を利用した強光シグナル伝達系変異株の解析。光保護タンパク質である、LHCSR1,LHCSR3,PsbS等のmRNA発現量,タンパク質発現量解析。NPQ機能解析を行う。また、キサントフィルサイクルカロテノイドの発現量解析、強光阻害解析を行う。 3.NPQによる光化学系II保護機構の解明I:強光にさらされた緑藻細胞がNPQ機能により保護されることは知られているが、光化学系IIが障害から保護されるのか、あるいは障害からの復帰が促進されるのかは明らかではない。この点を生化学的、および分光学的に明らかにする。
|
Research Products
(21 results)