2017 Fiscal Year Annual Research Report
Control of proton motive force components by ion transport system
Project Area | New Photosynthesis : Reoptimization of the solar energy conversion system |
Project/Area Number |
16H06558
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
魚住 信之 東北大学, 工学研究科, 教授 (40223515)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川崎 寿 東京電機大学, 工学部, 教授 (90349788)
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Project Period (FY) |
2016-06-30 – 2021-03-31
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Keywords | アンチポーター / 葉緑体 / 藍藻 / イオン輸送体 / 膜電位 / カリウム / ナトリウム / プロトン駆動力 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.NhaS3の細胞内局在性はチラコイド膜であることをmGFPの融合蛋白質をもちいて検討した.フレンチプレスで細胞を破砕後,ショ糖密度遠心により原形質膜とチラコイド膜を分離し,western blottingによるタンパク質の検出を行った.チラコイド膜タンパク質にNhaS3融合タンパク質が検出されたことから,チラコイド膜に存在することを確認した.両膜画分のコンタミネーションが観察されることが多いにもかかわらずチラコイド膜に濃いバンドが検出できた.(研究代表者)。 2.シロイヌナズナ葉緑体のKEA4-KEA6のKおよびNaの輸送活性に関して,大腸菌変異株用いた発現系にて測定した.K輸送変異をKEA4-KEA6は相補したことから,Kを吸収する活性があることが分かった.さらに,Kの取り込み輸送活性を測定しても,同様にその輸送活性が認められた.一方,K排出活性に関してKEA1-KEA3に加えてKEA5において検出されたが,KEA4とKEA6は検出できなかった.これらの相補テストの結果からK取込み活性を有することが示唆されている。一方,反転膜を調製後,K/Hアンチポーター活性の測定を行ったがその輸送活性は検出されなかった(研究代表者). 3. 16種類のK,Na,Clに関わる輸送体のプロモーター領域をルシフェラーゼ遺伝子に連結した遺伝子を導入したラン藻を獲得した.藍藻のClチャネル遺伝子候補についてもルシフェラーゼ遺伝子を連結した遺伝子を導入した藍藻を構築した(研究代表者). 4. 前年度につづいてラン藻の陰イオンチャネル機能解析のため、発現量向上および過剰なタグの削減を目的に発現プラスミドを再構築した。sll0855については,Cl-イオン輸送体遺伝子破壊大腸菌の膜での発現を確認した.また、sll1024の発現プラスミドの再構築を完了した.シロイヌナズナのチラコイド膜をパッチクランプ法で解析する方法を検討し,whole bleb様構造体の形成に成功した(研究分担者).
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. 藍藻のNhaS3は輸送活性が強いことから,発現量の増減が細胞に強い影響を与えてしまうことが推定されていたことから,NhaS3の膜局在性の確認は容易ではなかったと考えられる.今回,チラコイド膜に発現することの確証が得られたことから,NhaS3が光合成電子伝達機構と関連していることが強く示唆される結果となった.シロイヌナズナのKEA3も葉緑体のチラコイド膜に発現しており,NPQと関係することが報告されていることから,NhaS3に関しても同様もしくはこれまで知られていない生理学的知見の取得が期待される(研究代表者). 2. 藍藻のNhaS1-NhaS6のホモログであるシロイヌナズナ葉緑体のKEA1-KEA6の輸送活性の決定は,両輸送体の機能と生理学的役割に関する知見に強く貢献することとなる.今回,KEA1-KEA6の輸送活性を直接測定した.これまでに実測の報告はなかったが,K輸送活性があることが証明された.しかし,予想されていたK/H加えてアンチポーター活性は検出できなかった.このことは,本来アンチポーター活性を持たないことが考えられるが,補助因子が必要など他の条件に依存している輸送体である可能性もある(研究代表者)。 3. 16種類の輸送体のプロモーター領域をルシフェラーゼ遺伝子による活性測定を行うための藍藻形質展開体の取得には時間が要した.しかし,ほぼすべての藍藻がそろったことから,解析に行うことができる状態となった(研究代表者). 4.藍藻の陰イオンチャネル機能解析をめざしてsll0855については,Cl-イオン輸送体遺伝子破壊大腸菌の膜での発現を確認したことから,電流の測定にむけた検討をすすめている.また,シロイヌナズナのチラコイド膜を含むwhole bleb様構造体の形成を確認したことから今後この膜のイオン輸送活性の測定を検討する(研究分担者).
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Strategy for Future Research Activity |
1.シロイヌナズナのKEA1-KEA6の内向きと外向きのK輸送活性は確認したが,そのアナログであるNaの輸送活性の有無を明確にする.藍藻のホモログのNhaS3は強いNa輸送活性を示すことから,輸送活性の比較はとても重要である.同時に,NhaS3のイオン選択制に関しても検討する.方法は,大腸菌の反転膜を調製しアクリジンオレンジを用いた蛍光の消光を測定する(研究代表者). 2.今回,KEA3の輸送活性が測定されたことから,機能解析をすすめる.KEA3のC末端領域に存在する輸送活性の調節領域を検討する.C末端領域を除去した短縮タンパク質を作成して大腸菌変異株を用いてアンチポーター輸送活性を調べる.NaとKを選択するアミノ酸と考えられているアミノ酸がKEA3とNha3では異なることから,KとNaの輸送活性の差異とともに,重要と考えられる 配列が KEA3には存在していない。この配列の置換を行うことにより,KEA3とNhaS3の機能の差を調べる(研究代表者). 3. 藍藻のKチャネル,Na/Hアンチポーター,Clチャネルの細胞内局在性を調べる.光合成と関係する可能性の高い,チラコイド膜に局在する輸送体候補を明らかにするために,構造遺伝子の下流に GFP を融合したタンパク質を作成してその遺伝子を藍藻に導入する。(研究代表者). 4.大腸菌の内膜での発現に成功したラン藻の陰イオンチャネルをコードするsll0855の輸送活性の測定をパッチクランプ法で検討する.また,シロイヌナズナのチラコイド膜様の生体膜の調製を確立するとともに,本膜の成分の分析を行う(研究分担者).
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