2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Transomic Analysis of Metabolic Adaptation |
Project/Area Number |
17H06303
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松田 史生 大阪大学, 情報科学研究科, 教授 (50462734)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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Keywords | 代謝フラックス解析 / 代謝アダプテーション / トランスオミクス解析 / 薬剤抵抗性 / 代謝工学 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの成果を踏まえ、2018年度は下記のような成果を得た。 薬剤耐性の「短期」代謝アダプテーション:ヒト乳がん細胞株(MCF7)に代謝阻害剤(ロテノン)や抗がん剤(タキソール、タモキシフェン)を処理した。短期的な応答過程のタイムコースのメタボロームデータを取得することに成功した。 数理代謝モデルの構築:トランスオミクスデータを読み解き、代謝アダプテーション機構の全貌を解明する方法論として、数理代謝モデルを用いた新規アプローチを構築した。ヒトにくらべてトランスオミクスデータの取得が進んでいた光合成微生物エタノール生産シアノバクテリアSynechocystis sp. PCC 6803のデータセットを用いた解析を行った。代謝物濃度、酵素発現量、代謝フラックス分布からなるトランスオミクスデータセットを、シアノバクテリアの分析及び先行研究から取得した。独立栄養条件の代謝物濃度、酵素発現量、代謝フラックス実測値を再現可能な反応速度パラメタをランダムに生成し、1,000,000個の動的代謝モデルを作成した。ついで、酵素発現量を混合栄養条件のものに変更し、混合栄養条件における代謝フラックスおよび代謝物濃度の予測を行った。予測精度を実測値との残差二乗和によって評価し、予測力の高いモデルを100個選抜した。このモデルアンサンブルを用いた代謝コントロール解析によって、PGKとPRK反応が、代謝フラックス階層と代謝酵素階層間をつなぐ責任酵素として、代謝アダプテーションおよび恒常性維持に重要な役割を果たすと考えられた。エタノール生産株に、これらの酵素を追加で過剰発現した株を実際に作成したところ、PGKの過剰発現株ではエタノール生産量が1.4倍に向上していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒトがん細胞株の薬剤耐性の代謝アダプテーションの解析にむけた基盤技術として、13C代謝フラックス解析法を研究計画通りH30年度までに構築した。また代謝阻害剤や抗がん剤等を処理した際の代謝アダプテーションを測定可能な13C代謝フラックス解析法を開発した。有用物質生産微生物のメタボローム及び代謝フラックスデータを用い、ギブス自由エネルギー変化ΔGと酵素のミカエリス定数 (Km)との比較を行った。ヒト乳がん細胞株(MCF7)に代謝阻害剤や抗がん剤を処理し、12時間後までの短期的な応答過程のメタボローム、発現プロテオームデータを計画通りに取得した。また、H30の予定を前倒して、トランスオミクスデータを読み解き、代謝アダプテーション機構の全貌を解明するための、数理代謝モデル構築の新規アプローチを試みエタノール生産シアノバクテリアSynechocystis sp. PCC 6803の解析を通じて技術的課題の解決をおこなった。以上の結果から、2.おおむね順調に進展している。とした。
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Strategy for Future Research Activity |
薬剤耐性の「短期」代謝アダプテーション:これまでに取得した時系列データから代謝フラックスの短期的な応答過程のトランスオミクスネットワークを構築する。各反応のΔG、ミカエリス定数等をを加味したトランスオミクス時系列ネットワークを構築し、薬剤の標的となり得るキナーゼ、代謝酵素等の責任因子を同定する。13C-代謝フラックス解析を拡張した手法を開発し、代謝フラックスの短期的な応答過程を計測する。 数理代謝モデルを用いた代謝アダプテーションの解析法の構築:トランスオミクスデータを読み解き、代謝アダプテーション機構の全貌を解明する新たな方法論であるアンサンブルモデリング法を確立し、その有用性を光合成微生物の解析で実証した。そこで、抗がん剤に対する短期的な代謝応答の予測を目指し、乳がん細胞中心代謝のモデル化を行う。
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Research Products
(13 results)