2018 Fiscal Year Annual Research Report
Paleoclimate dynamics of the Southern Ocean
Project Area | Giant reservoirs of heat/water/material : Global environmental changes driven by the Southern Ocean and the Antarctic Ice Sheet |
Project/Area Number |
17H06318
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
池原 実 高知大学, 教育研究部自然科学系理工学部門, 教授 (90335919)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関 宰 北海道大学, 低温科学研究所, 准教授 (30374648)
板木 拓也 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 主任研究員 (30509724)
佐藤 暢 専修大学, 経営学部, 教授 (50365847)
井尻 暁 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 高知コア研究所, 主任研究員 (70374212)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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Keywords | 南大洋 / 気候変動 / プロキシ / 酸素同位体 / 珪藻 / AI / 鮮新世 / 古水温変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
生物源オパールの微量試料での酸素同位体分析法の確立をめざし、海底堆積物から珪藻化石を高純度で分離濃縮するための前処理法を検討した。その結果、化学処理、比重分離、メッシュ分画による事前濃縮をした上でセルソーターを用いて珪藻と不純物(鉱物破片など)を分離する方法が有効であることが新たに判明した。 マイクロ・マニピュレーターとAI深層学習ソフトを備えたシステムを活用し、産総研の微化石(放散虫)試料を活用した学習画像の取得とそれらの学習によるAIモデルの構築を進めた。その結果、特定の放散虫種の画像鑑定正答率は90%を越えるまでになり、本システムを用いて群集組成を自動で解析することや特定の微化石を自動的に摘出することが可能となり、南大洋の海底コアへの応用に向けた実用段階に至った。 デルカノライズの海底コアDCR-1PCについて、底生有孔虫化石の酸素同位体層序による年代モデルを新たに構築するとともに、浮遊性有孔虫の群集解析に基づいて過去15万年間の表層水温変化および極前線の南北シフトの復元を行った。スーパー温暖期(12.5万年前)には、亜熱帯種が微量ながら産出することから、完新世に比べて温暖であった可能性を示唆する。 南大洋の深海掘削コアから得たアルケノン古水温変動の結果を土台とし、南大洋の既存の表層水温(SST)プロキシデータも集約し、鮮新世から更新世にかけての南大洋SSTスタックデータを構築した。その結果、第四紀の南大洋SST変動は南極の気温やCO2濃度の変動と極めて良く一致していることが明らかとなり、南半球の気候と炭素循環との密接な関連が示された。また、南極氷床が現在よりも融解していたスーパー間氷期のSSTは現在より1度程度高いことが示され、氷床の融解に対する海洋温暖化の重要性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
海底堆積物から特定の珪藻化石を分離濃縮する前処理法の検討は概ね最終段階にあり、ルーチン化に向けた検討実験を継続している状況である。また、前処理法の検討と並行して、氷期と間氷期のテスト試料を用いて珪藻化石の酸素同位体比を分析したところ、先行研究と比較して有効な分析値が得られていることを確認した。よって、珪藻殻酸素同位体分析法の確立については概ね順調に進行している。 AIモデルを活用した放散虫の自動抽出法も概ね実用段階まで到達しており、海底コア解析や酸素同位体分析のための特定放散虫種の大量抽出などへの応用が見込まれる。 既存の海底コア(COR-1bPC、DCR-1PC、IODPコア)のプロキシ分析も概ね順調に進んでいる。例えば、DCR-1PCから抽出した浮遊性有孔虫と底生有孔虫の酸素・炭素同位体分析は約500試料について実行し、良質なデータが生産されている。いくつかのテーマについてはデータのまとめと成果論文の執筆段階にある。 長期スケールの気候変動に関しては、構築したSSTスタックデータを基にいくつかの解析が進められている。南大洋において350-330万年前と200-150万年前の期間において著しいSST低下が明らかとなり、鮮新世における北半球の氷床発達に先駆けて南極で寒冷化が開始されたという従来の仮説や、前期更新世に現在型の気候モードが確立したという本プロジェクトで検証すべき仮説と調和的であり、南大洋が長期スケールの全球気候変動を駆動している可能性を示唆する結果も得られている。 また、2019年1-2月に実施した白鳳丸KH-19-1次航海において、新たに2本の海底コアを採取するとともに、セジメントトラップを回収することに成功し1年間の沈降粒子サンプルを得た。デルカノライズおよびコンラッドライズから反射法地震探査プロファイルを取得し、セジメントウェーブの分布情報を追加した。
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Strategy for Future Research Activity |
・南大洋における古環境プロキシの開発・検証と高精度化に資する新たな分析法の確立や試料前処理システムの構築などが概ね順調に進んできている。今後はそれらを現生試料(表面海水、海水濾過試料、表層堆積物など)に適用する。珪藻や放散虫の酸素同位体比が持つ古環境プロキシとしての有効性を改めて評価した上で海底コア解析を行い、より確度の高い南大洋の古環境データセットを構築していく。 ・セジメントトラップ沈降粒子について、微古生物学的分析と地球化学的分析を行い、粒子フラックス、生物組成、化学組成などの季節変化を明らかにし、海洋表層環境変化と生物地球化学サイクルの関連を明らかにする。生態系班との連携を強化し、トラップ試料の共有化、分析手法の共通化を図り、沈降粒子の解析を効率的に進めていく。 ・2019年に相次いで実施された白鳳丸KH-19-1次航海、マリオンデフレンヌCLOTALE航海、IODP Exp.382(スコシア海)等で得られた堆積物コアから、本プロジェクトの目的を達成するために最適な試料を選別し、洗練された古環境プロキシ分析を応用することで、より効率的かつ効果的に古環境データを生産していくことを目指す。 ・他班(氷床班、固体地球班、モデル班)との情報共有を図り、多角的に南大洋の古海洋変動を復元していくことを推進する。そのために、領域全体の会合や班レベルの合同ワークショップを随時行う。
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Research Products
(26 results)
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[Patent(Industrial Property Rights)] 分類装置、分類方法およびプログラム2018
Inventor(s)
鍬守直樹,平陽介,板木拓也,前林利典,竹島哲,戸谷健二商事)
Industrial Property Rights Holder
鍬守直樹,平陽介,板木拓也,前林利典,竹島哲,戸谷健二商事)
Industrial Property Rights Type
特許
Industrial Property Number
特願2018-163981