2018 Fiscal Year Annual Research Report
Ecosystem dynamics in the Antarctic sea ice zone
Project Area | Giant reservoirs of heat/water/material : Global environmental changes driven by the Southern Ocean and the Antarctic Ice Sheet |
Project/Area Number |
17H06319
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
茂木 正人 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (50330684)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
綿貫 豊 北海道大学, 水産科学研究院, 教授 (40192819)
真壁 竜介 国立極地研究所, 研究教育系, 助教 (40469599)
小達 恒夫 国立極地研究所, 研究教育系, 教授 (60224250)
須藤 斎 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (80432227)
高尾 信太郎 国立極地研究所, 研究教育系, 助教 (80767955)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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Keywords | カイアシ類 / ハダカエソ科 / 小型動物プランクトン / 海氷 / 南大洋 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)2016~2018年の夏季、東南極の3地点で採取された海氷について、海氷中のカイアシ類の組成を調べ、海氷を採取した場所の周辺海水から得られたカイアシ類組成との比較を行った。本研究から、放出された海氷性カイアシ類は比較的速やかに他の生物に捕食されるなどして水柱から除去される可能性が示唆された。本成果は、海氷の生成期と融解期、さらには海氷中の微小生物を定量化し比較したもので、SIBが海氷下の生態系にインプットされるプロセスの一端を明らかにした。 2)氷縁付近のアイスアルジーの種組成を明らかにするとともに、周辺の水柱の組成と比較することにより、ブルームの形成とアイスアルジーの関与について明らかにした。アイスアルジーは海氷から放出された後、多くの種が消失してしまうが、6種の珪藻類については増殖しブルームに寄与することが確かめられた。また、ブルームに寄与することが知られるハプト藻の一種についても、サンプルの固定法を変更することによってより確かな現存量を把握することに成功した。これにより、これまでの知見が大きく過少評価であったことが示唆された。 3)ハダカイワシ類と同様に重要な分類群のひとつハダカエソ科2種の仔魚についても分布様式が明らかとなった。仔魚は2種ともに季節海氷域南部に発達する寒冷な水塊と温暖な周極深層水の間に位置する水塊に高密度で分布することが分かった。この水塊にはハダカイワシやソコイワシの仔魚も高密度で分布しており、仔魚の生残りに有利な環境が備わっていることが示唆される。 4)船舶に装備された表層ポンプシステムと20 μmメッシュのネットを組み合わせた手法を採用し、南大洋ではこれまであまり注目されて来なかった小型動物プランクトンの分布様式を明らかにした。個体数密度は季節海氷域の北側海域で顕著に高いことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年8月と10月には、東京海洋大学練習船「海鷹丸」の国内航海の機会を利用しての観測手順の確認作業(練習航海)を、2019年1月には南大洋ビンセネス湾沖(インド洋セクター)における本観測(海鷹丸、2018年1月)を実施した。 本観測では、新規に導入した大型開閉式プランクトンネットMOHTを始め各種ネット による生物採集の他、110°Eトランセクト上の夏季の氷縁域、周極深層水の湧昇域および冬季の氷縁域に当たる3地点に長期係留系を設置することに成功した。3系の係留系はいずれも底層水班と共同で設計しており、従来の生態系観測と比べ遥かに多くの流速計、CTDを設置できた。詳細な物理場を背景に生物ポンプの機構解明に関する新知見が期待される。これらの係留系は2020年1月に回収予定である。 論文の公表はやや遅れているが、15件の国際学会、2件の招待講演を含む合計17件の学会発表が行われ、今後論文として公表されることが期待される。 以上のことから、進展はほぼ計画通りといえ、概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られたサンプルについて、生物試料の安定同位体分析、魚類仔魚・動物プランクトンの消化管内容物、環境DNAの分析を行う。海鷹丸の練習航海(8月と10月)では、観測機材の取扱いの習熟、サンプル処理方法の確認などを主に行う。本航海(1月)では前年度に設置した係留系3系の回収、MOHTやVMPS等を用いた生物採集を実施する。「しらせ」においても研究分担者と大学院生が乗船し、海氷の採取を始めとした海洋観測を実施する。また、海氷融解期の海氷下における生物の動態と生物ポンプの機能を解明する目的で、「しらせ」で海氷域に12月上旬に漂流系を投入し、1月に当該海域から海氷が消失するタイミングに再びしらせで漂流系を回収する。漂流系には各種センサーやセジメントトラップを搭載し、海氷下の沈降粒子の動態を把握する。タスマニア・ウェッジ島でのハシボソミズナギドリの行動生態調査(1-2月)。日本海洋学会(富山)での発表。4月には、豪州との海鷹丸における共同研究を見据えてLouise Emmerson博士(鳥類生態学)とNatalie Kelly博士(数理生態学)を招聘して東京でワークショップを開催する。
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Research Products
(21 results)