2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Construction of the Face-Body studies in transcultural conditions |
Project/Area Number |
17H06343
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
山口 真美 中央大学, 文学部, 教授 (50282257)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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Keywords | 実験系心理学 / 文化人類学 / 顔学 / 哲学 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究期間で顔に関する一般書を公刊し(山口真美.(2018).損する顔 得する顔,朝日新聞出版)、美容や小児といった研究団体や保育の現場や盲学校での研修などで知見を広めた。乳児の学習過程について特筆すべき結果としては、顔処理について縦断的な脳計測のデータを示すことができたことである。生後3か月から8か月までの顔処理に関わる側頭部位の脳活動の縦断計測を、近赤外分光法(fNIRS)を用いて行い、正面顔認知と横顔認知で発達過程が異なり、その発達には個人差があること、生後8か月に向けて個人差が小さくなることを明らかにすることができた。この成果は、顔認知の個人差をその発達初期から明らかにする点において重要な成果であり、個人差の発達とその起源を探る本領域に重要な研究である。日本経済新聞(2018年12月5日)成果が紹介された。(Neuroimage)また、顔の印象形成の発達的変化を検討する論文を発表した。これまで欧米文化圏の乳児で明らかにされていた印象形成が、日本人乳児でも同様にみられることを確認するため生後6~8か月の日本人乳児を対象として、顔から得られる第一印象の重要な2大因子である「信頼感」と「支配性」の獲得過程について検討し、生後6~8か月の乳児で、支配性が高い顔同士のペアでは信頼感の高い顔をより長く注視するという結果が得られ、成人と似た顔の印象評価が既に獲得されている可能性を発表した。この成果もプレスリリースを行い、毎日新聞(2018年9月7日)に紹介されている。(PLoS ONE)さらにイタリアとの共同研究では、近赤外分光法(fNIRS)を用いて、本申請の核となる「知覚的狭小化」、すなわち育てられた環境への適応過程の脳内機構を調べる実験成果を発表した。(Developmental Science)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度に引き続き、顔と身体表現を捉える時の脳活動の機能的分化とその発達過程を検討する研究、異文化間の顔を介したコミュニケーションの比較研究と、シーンの認知の文化差の研究を行った。研究1として、昨年と同様、顔反応領域と身体反応領域の発達過程を探るため、顔と身体情報の処理の独立性を乳児で検討する研究を継続した。研究2として McGurk効果を始め、会話をしている女性の顔と声の統合過程の文化差を検討した。シーンの文化差の研究は、前景と背景への注目の違いを日本とフランスの乳児で比較する実験を開始した。このように今年度は、スイスやフランス・カナダの研究者と共同で文化差の形成過程を検討し、かつ脳科学の研究者と連携しながら、顔身体表現の文化差や個人差とその形成過程の神経基盤の解明を行った。手法としては、眼球運動計測と近赤外分光法(fNIRS)を用いることにより、顔処理の顕在的処理・潜在的処理の学習メカニズムの解明を進めた。乳幼児の顔学習時の顕在処理を選好反応で、潜在反応を眼球運動計測やSCR(皮膚電位反応)計測を用いることにより、顔学習時の潜在処理と顕在処理メカニズムを解明する。さらに、臨床現場において定型児と非定型児の脳計測に近赤外分光法(fNIRS)を適用する。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の成果として最も大きなことは、乳児の脳活動の縦断研究で、顔処理について縦断的な脳計測のデータを示すことができたことである。すなわち近赤外分光法(fNIRS)を用い、生後3か月から8か月までの顔処理に関わる側頭部位の脳活動の縦断的な発達から個人差の成り立ちを明らかにすることができた。この個人差の顕在的な発達過程の研究をさらに展開し、潜在処理の発達を検討する。多様な人々が集う現代社会において、顔と身体表現の文化的な相違や個々のバリエーションを意識と無意識処理の相違から知ることは、異文化理解においては必須とされる。今後もさらに乳児を対象に意識の外に追いやられた潜在的な過程の文化的差異を知るため、顔と身体表現の“顕在処理過程”と“潜在処理過程”の発達を検討する。特に今後は潜在処理に焦点を当て、SCR(皮膚電位反応)や瞳孔反応などの自律性反応を計測することにより、潜在処理過程を明らかにする試みを行う。さらには引き続き、カナダ・スイス・アメリカ・イタリアとの共同研究機関とともに研究を推進する。顔認知が成立する乳幼児を対象に顔認知における潜在的学習と顕在的学習という2つの学習プロセスの結びつきと、その定型と非定型な発達についても検討する。今後はfNIRS(近赤外分光法)だけでなくEEG(脳波計)を用いて乳児の脳計測を行う。個人差と文化差については、アイトラッカーを用いて動的表情の注視行動の文化差をスイスと共同で、環境色の個人差をアメリカと共同で行う。認知科学・認知脳神経科学による新たな視点である潜在学習と潜在処理の視点を加えることによって、顔認知の学習過程、個人差と文化差の成立過程をより深く明らかにすることができると考える。
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Research Products
(21 results)
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[Journal Article] A longitudinal study of infant view-invariant face processing during the first 3-8 months of life.2019
Author(s)
Ichikawa, H., Nakato, E., Igarashi, Y., Okada, M., Kanazawa, S., Yamaguchi, M.K., & Kakigi, R.
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Journal Title
Neuroimage
Volume: 186
Pages: 817-824
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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