2019 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Construction of the Face-Body studies in transcultural conditions |
Project/Area Number |
17H06343
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
山口 真美 中央大学, 文学部, 教授 (50282257)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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Keywords | 実験系心理学 / 文化人類学 / 顔学 / 哲学 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究期間で、日本心理学会・日本顔学会などでシンポジウムを行い、保育の現場での一般講演などで知見を広め、一般誌やウェブのコラムの連載などを行った。乳児の学習過程について特筆すべき結果の概要を以下に示す。(1)ADHD児の表情知覚の異方性(怒り顔認知の困難さ)に対する治療薬(コンサータ)の効果を、fNIRSを用いて検討した。笑顔を観察する際には一貫して顔活動部位である右下後頭回の活動が見られたのに対し、怒り顔は治療薬服薬後のみ左下後頭回の活動が上昇したことから、治療薬が怒り顔の脳内処理を促進することが示された。(Neurophotonics)(2)顔をめぐる視覚注意を調べるため高速逐次視覚提示課題を用い、7-8ヶ月児では短時間(100ms)でも複数の風景画像の中から個人の顔を検出し、かつ人物同定ができることが判明した。(Journal of Experimental Child Psychology)(3)生後5-8ヶ月の乳児が、あくびを表情のような顔の動きの一つとして知覚していることを、fNIRSを用いて検討し、顔に反応する側頭領域があくびに対しても活動することが示された。あくびの伝染現象の発達に先立ち知覚機能は発達していることが示唆された。(Scientific Reports)(4)様々な潜在処理の基盤となる受容野機能の発達を検討した結果,生後半年頃まで,受容野の周辺抑制が未発達であることがわかった。周辺抑制は高齢者で低下していることが知られており,低月齢の乳児の視覚は高齢者と似ている可能性が示された。(Current Biology)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度に引き続き、顔と身体表現を捉える時の脳活動の機能的分化とその発達過程を検討する研究、顔を介したコミュニケーションの比較研究、シーンの認知の文化差の研究を行ない、社会的なふれあいについての実験研究を、それぞれカナダ・フランス・イタリアと準備を進めているところである。顔反応領域と身体反応領域の発達過程を探る研究は現在論文執筆中で、McGurk効果の研究はFrontiers in Psychologyに1本論文が受理され、2本の論文を投稿中である。また、会話をしている女性の顔と声の統合過程の文化差を検討する実験は、イギリスからの研究員と共同研究を進めているところである。瞳孔反応を用いた同調現象の研究も現在論文準備中である。さらにシーンの文化差の研究は、前景と背景への注目の違いを日本とフランスの乳児で比較する実験を実施中である。このように今年度は、スイスやフランス・カナダの研究者と共同で文化差の形成過程を検討する研究を行っているが、いずれの実験室も現在被験者を呼べない状況が続いている中で、メールやスカイプなどで情報交換を行っている。これまでの手法としては乳幼児の顔学習時の顕在処理を選好反応で行ってきたが、潜在反応を見る手法として眼球運動計測だけでなく、SCR(皮膚電位反応)計測を導入する段階にある。また、fNIRSの親子同時計測やEEG計測など多様な手法の導入の段階にあり、これにより顔学習時の潜在処理と顕在処理メカニズムをさらに多元的に解明する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の成果として最も大きなことは、ADHD児の表情知覚の特性に対する治療薬(コンサータ)の効果を、fNIRSを用いて明らかにしたこと、顔をめぐる視覚注意を調べるため高速逐次視覚提示課題手法の導入に成功したこと、様々な潜在処理の基盤となる受容野機能の発達を解明したことなどがあげられる。これらの成果は個人差の解明や、潜在処理の発達を検討する手段として、今後の研究に有用な手法として展開することができる。多様な人々が集う現代社会において、顔と身体表現の文化的な相違や多様性を意識と無意識処理の相違から知ることは、異文化理解においては必須とされる。今後もさらに乳児を対象に意識の外に追いやられた潜在的な過程の文化的差異を知るため、顔と身体表現の“顕在処理過程”と“潜在処理過程”の発達を検討する。今後の計画としては、顔のみならず身体についての研究も行い、特に身体に関する2つの研究を計画している。1)身体意識を構成する重要な要素である身体所有感の獲得過程を解明するため、ラバーハンド錯覚を利用した実験。2)身体接触を伴う社会相互作用の神経基盤を明らかにするため、身体接触の伴う親子の脳活動ハイパースキャニングを行うこと。fNIRSを2台用いて同時計測を行うための準備を進めている。また、昨年度に引き続き、潜在処理を計測するための手法についてさらに検討を行い、特にSCR(皮膚電位反応)や瞳孔反応 などの自律性反応を同時計測することを試みることにより、潜在処理過程を明らかにする試みを行う。さらには引き続き、カナダ・スイス・アメリカ・イタリアとの共同研究機関 とともに研究を推進する。個人差と文化差については、アイトラッカーを用いて動的表情の注視行動の文化差をスイスと共同で、環境色の個人差をアメリカと共同で行う。
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Research Products
(33 results)
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[Journal Article] Hemodynamic response to familiar faces in children with attention deficit hyperactivity disorder2019
Author(s)
Shimamura, K., Inoue, T., Ichikawa, H., Nakato, E., Sakuta, Y., Kanazawa, S., Yamaguchi, M. K., Kakigi, R., & Sakuta, R.
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Journal Title
BioPsychoSocial Medicine
Volume: 13
Pages: 30
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Presentation] Identifying cortical area for processing of emotional facial expressions in ADHD children measured by near-infrared spectroscopy.2019
Author(s)
Kobayashi, M., Nagashima, M., Tokuda, T., Ikeda, T., Monden, Y., Kanazawa, S., Yamaguchi, M. K., Sakuta, R., Yamagata, R., & Dan, I.
Organizer
The 15th Asia-Pacific Conference on Vision
Int'l Joint Research
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[Presentation] The neural basis underlying impaired recognition of angry expression in ADHD children measured by near-infrared spectroscopy.2019
Author(s)
Kobayashi, M., Nagashima, M., Tokuda, T., Ikeda, T., Monden, Y., Kanazawa, S., Yamaguchi, M. K., Sakuta, R., Yamagata, R., & Dan, I.
Organizer
Vision Sciences Society 19th Annual Meeting
Int'l Joint Research
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[Book] かおかおばあ2019
Author(s)
山口真美・金沢創・ミスミヨシコ
Total Pages
28
Publisher
角川書店
ISBN
9784041070321
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