2018 Fiscal Year Annual Research Report
Identification of molecules targeting cancers and neurons based on molecular tracing
Project Area | Chemical Approaches for Miscellaneous / Crowding Live Systems |
Project/Area Number |
17H06356
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
夏目 敦至 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (30362255)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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Keywords | スーパーエンハンサー |
Outline of Annual Research Achievements |
膠芽腫は、最も術後の予見が厳しい脳腫瘍の一つである。最大限の手術及び放射線化学療法を行っても5年生存率は10%以下であり、新たな治療法の開発が望まれている。膠芽腫を難治性たらしめている要因の一つとして、現在、唯一明確な効果が示されている化学療法薬(テモゾロミド:TMZ)に対する耐性が生じることが考えられているが、未だ解明されていない点も多く、そのメカニズムの更なる解明及びそれらの克服は喫緊の課題となっている。 近年の分子生物学研究の進歩に伴い、遺伝子自体の異常のみならず、遺伝子の発現を調整するエピゲノム機構の異常が、悪性腫瘍の発生や性質に大きな影響を与えることが報告されてきている。まず、我々は、その中でも特にダイナミックに遺伝子発現調節を行うスーパーエンハンサーに着目した。スーパーエンハンサーを含むシスエレメントはヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)による調整を受けており、ヒストンH3の27番目のアミノ酸であるリシンがアセチル化される修飾(H3K27ac)がその指標となることが知られている。HDACと相互作用する適切な分子をターゲットとすることで、腫瘍に特異的な形質獲得のメカニズムの解明をした。HDACと相互作用する候補分子としてRET finger protein(RFP)に着眼した。その結果、テモゾロミド(TMZ)が効かない膠芽腫由来の複数の細胞系列においてRFPの発現が有意に高く、また、細胞・マウスモデルの両方でRFP阻害によってTMZ抵抗性が大幅に改善されることが示された。RFP阻害によるTMZ抵抗性改善のメカニズムをさらに詳細に検討するため、次世代シーケンサーを用いた解析を行ったところ、RFP阻害により広範なヒストン修飾(H3K27ac)の変化が起き、それに伴って近傍の遺伝子発現も変化していることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本課題では「細胞の夾雑環境下における分子反応パラメーターに基づく病態の理解と治療分子の構造の解明(新概念の転写機構スーパーエンハンサーの解明)」と「細胞・生体分子の機能理解の深化(分子イメージング)」を目的としている。すでに前者の課題を解決し、インパクトの高い国際科学雑誌(Cell Rep. 2019 Feb 26;26(9):2274-2281)に公表し、新聞紙面においてプレスリリースされた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は後者の目的「細胞・生体分子の機能理解の深化(分子イメージング)」を達成する。具体的には、(1)ナノデバイスを用いた1分子Ex vivoイメージングの確立:すでに我々はA03馬場班と共同でナノデバイスを用いて脳腫瘍における1分子イメージングを行った。このデバイスはタンパクを精製することなく夾雑な細胞溶解液で目的とした分子を高感度でイメージングできる。750例の大規模ゲノム解析で予後不良因子として同定されたPI3K1変異、CDK4増幅を検出するナノデバイスを開発し、より正確な予後予測に必要な情報を網羅する。さらにこれらの遺伝子異常を強制発現させた脳腫瘍細胞株を樹立し、A01班と共同で阻害剤の創薬へと展開する。脳腫瘍検体の大規模研究結果を、酷似した遺伝子改変脳腫瘍マウスで、時間・空間的な腫瘍形成において重要な役割を果たすスーパーエンハンサー機構を解析する。その結果を、脳腫瘍検体で検証、確認したあと、A01班と共同で薬剤効果をモデルマウスで前臨床試験することも検討する。そしてがん研究において腫瘍の発生におけるゲノムとクロマチン構造異常のクロストークメカニズムを証明する新しい概念となり、極めて意義深いものと考える。 (2)生体分子イメージングへの展開:有機化学分野のA01班と共同し、脳腫瘍や神経細胞の発生・分化に関わる変異IDH1の脳内イメージングを開発する。高速C-メチル化反応を活用したPET プローブの開発に向けた合成研究を行う。具体的には、メチル化(およびフッ素化)誘導体を合成し、変異型IDH1に対する構造活性相関研究を行う。続いて、活性を示す誘導体に11C あるいは18F を導入するための前駆体を合成し、実際のPET 装置での合成をシミュレートしたコールド条件でのメチル基導入反応を検討する。
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Research Products
(26 results)