2018 Fiscal Year Annual Research Report
Mechanistic Study and New Function of Soft Crystals with Molecular Domino Phase Change
Project Area | Soft Crystals: Science and Photofunctions of Easy-Responsive Systems with Felxibility and Higher-Ordering |
Project/Area Number |
17H06370
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
伊藤 肇 北海道大学, 工学研究院, 教授 (90282300)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石山 竜生 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (00232348)
関 朋宏 北海道大学, 工学研究院, 助教 (50638187)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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Keywords | 発光性錯体 / メカノクロミズム / 分子ローター / 結晶ジャンプ / 結晶多形 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. トリフェニルエテニル構造を持つアリール金イソシアニド錯体の結晶ジャンプ:独自の構造を持つトリフェニルエテニル金(4ークロロフェニルイソシアニド)錯体の合成を初めて行い、顕著な結晶ジャンプ現象を示すことを発見した。室温付近から-150℃まで温度を下げると結晶がジャンプする。単結晶X線構造解析と高速カメラなどによる解析を行い、分子レベルでのミクロな結晶構造変化と、マクロレベルでの結晶の形状変化の間での明確かつ異方的な相関を見出した。DSC測定および温度可変単結晶X線構造解析の結果から-50℃付近で相転移が起こっていることが明らかになった。温度変化に対する結晶の構造変化は異方的であり、ジャンプ時には結晶の表面に亀裂が入るが、これは構造が伸長するb軸と垂直の面に平行である。相転移時の結晶外形の伸長が、ジャンプする原因になっていると推察できた。 2. メカノケミストリーによる固体クロスカップリングの開発:有機合成反応は一般に溶媒を用いて実施することが必要で、反応剤だけを直接反応に用いることはほとんどない。特に反応剤が構造的に安定な固体の場合は、構造変化や反応が起こりにくいため、有効な反応系は限られていた。我々は、ドミノ型結晶相転移やメカノクロミズムに関する研究から、有機結晶の構造がかなり緩やかで反応性に富む可能性があることを見出していた。クロスカップリングは非常に有効な有機合成の手法であるが、固体に適用された例はほぼない。ある種の添加剤を用いると、有機溶媒を用いずに、固体状態で進行するクロスカップリング反応が実施可能であることを見出した。 3. 計算化学による結晶の安定性、発光及び相転移メカニズムの研究:分子動力学法によるドミノ型相転移挙動の解析と、QM/MM法による相転移前後における熱力学的な構造安定性、発光性の要因について検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成30年度の当初研究計画においては、「結晶多形デザインに着目した新しい分子ドミノ・ジャンプ結晶の開発」が目標の一つであったが、上述のように、トリフェニルエテニル金(4ークロロフェニルイソシアニド)錯体が温度の変化に対してジャンプ現象を示すことを明らかにした(Chem. Sci. 2019, 10, 4185)。また、「化合物の合成と機能スクリーニング系の確立」という目標に関しては、新しいスクリーニング系として金カルベン錯体の系統合成をスタートしており、新しい力学特性を持つ錯体の発見に成功している。「分子ドミノ型相転移の動的解析」という目標に関しては、新学術領域内の共同研究によって、計算化学的な手法を用いる方法で大きな成果が上がっている。結晶の構造と発光特性の予測と解析に関しては、A01班の榊(京都大学)らと共同で、QM/MM法を用いる計算化学的な方法を活用することで大きな成果を得た(J. Phys. Chem. C 2019, 123, 4773)。またA02-04班の後藤(豊橋技科大)との共同研究で、金イソシアニド錯体に最適な分子力学力場の作成を行い、結晶構造予測と、相転移のダイナミクスについて検討を行った (J. Comput. Chem. Jpn. 2018, 17, 155)。また、これまで培ってきた結晶や固体が、一定の条件下で構造変化を起こす現象にインスパイアされ、固体での反応について検討を行ったところ、予想を超える結果が得られた。有機合成で頻用される、クロスカップリング反応を、固体基質に対して溶媒を使わない条件で検討したところ、パラジウム触媒のみでは反応があまり進行しないが、アルケンを加えることで効率よく反応が進行することが明らかになった (Nature Commun. 2019, 10, 111)。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度および2018年度で得られた成果をもとに、分子ドミノ型相転移をしめす結晶を、以下の段階に従ったスクリーニング的手法と計算化学的手法を積極的に組み合わせて、発見・開発する。1. イソシアニド金錯体とNHC金錯体をできるだけ多数作成する。2. 発光機能やジャンプ機能、超弾性や強弾性機能を目安に第二段階のスクリーニングを行う。3. 結晶多形について結晶溶媒や温度のスクリーニングを行う。4. 機械的刺激を複数の方法(grinding, pricking, ダイヤモンドアンビル)で与えて、発光と構造の変化を示す錯体をスクリーニングする。5. 結晶相転移に関する詳細な実験を行う。分子ドミノ型相転移の動的解析:分子ドミノ型相転移や結晶ジャンプについて、その原理を明らかにするためには、変化の途中についての挙動、動的な挙動の解明が重要である。2018年度の研究成果で計算化学的な手法を共同研究で確立したので、これを積極的に推し進め、メカニズムの詳細な解明とデザインコンセプトの抽出を行う。領域内の研究者と協働して、時間分解X線分子動画撮影法や赤外振動分光を用いた分子構造変化の追跡を行う。2017年度に導入した新しい単結晶X線構造解析装置を用いながら、微小な結晶の構造解析を迅速に行い、本研究計画を達したい。
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Research Products
(17 results)