2020 Fiscal Year Annual Research Report
Mechanistic Study and New Function of Soft Crystals with Molecular Domino Phase Change
Project Area | Soft Crystals: Science and Photofunctions of Easy-Responsive Systems with Felxibility and Higher-Ordering |
Project/Area Number |
17H06370
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
伊藤 肇 北海道大学, 工学研究院, 教授 (90282300)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石山 竜生 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (00232348)
関 朋宏 北海道大学, 工学研究院, 助教 (50638187) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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Keywords | ソフトクリスタル / 有機結晶 / 錯体 / 発光 / 機械的刺激 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. NHC配位子を用いたアンフィダイナミック結晶の創成:アンフィダイナミック結晶とは、結晶内の分子構造の一部が回転などの運動性をもつ分子性結晶であり、近年大きな興味を持たれている。しかしその分子設計・結晶のデザインは一般に難しい。本研究では、stator(固定子)として立体障害の大きなNHC配位子を用い、rotator(回転子)としてピラジンを用いて金属錯体を形成させ、新しいアンフィダイナミック結晶を作成した。単結晶X線構造解析に加えて、固体NMRを用いた動的挙動についても詳細に検討し、その分子レベルでのダイナミックな挙動を解析した。NHC配位子と金属イオンは非常に多くのバリエーションを持つため、今後多種多様なアンフィダイナミック結晶を作り出すことができる(J. Am. Chem. Soc. 2021, 143, 1144)。 2. 発光性・刺激応答性をもつアシルホウ素化合物誘導体の合成:アシルホウ素化合物は、カルボニル基に直接ホウ素基が置換した化合物であるが、この化合物の環状イミン誘導体が発光特性・メカノクロミズムなどを示すことを明らかにした。(BCSJ just accepted)。 3. メカノケミカル合成条件による新しい炭素-炭素結合形成反応:我々はこれまでの研究で、ボールミルを用いると、固体のまま共有結合形成が可能になることを明らかにしている。今年度は、系中での結晶化を利用した選択モノクロスカップリング反応の開発(J. Am. Chem. Soc. 2020, 142, 9884)、空気中でも実施可能なC-Nカップリング反応の開発(ACS Sustainable Chem. Eng. 2020, 8, 16577)、不溶性ハロゲン化物のクロスカップリング反応にそれぞれ成功している(J. Am. Chem. Soc. 2021, 143, ASAP)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、特にアンフィダイナミック結晶に関して大きな進展が見られた。このタイプの分子結晶は、結晶でありながら、一部の分子構造がダイナミックな動きを持つ。この動きを実現するためには、結晶中に空隙が必要であるが、立体障害が大きなNHC配位子を用いることで、その合理的設計に成功した。また今年度に報告した結果のみならず、らせん構造をもち、連続的に回転運動する結晶や、スタジアム型の新しい結晶構造についても作成することに成功している。さらに、これまでの強弾性結晶の研究を拡張に成功し、金NHC錯体において、非常に多様な「形状記憶現象」を示す錯体の作成に成功している。この錯体は、強弾性と熱相転移の両方の性質を持つため、ある温度で機械的刺激を与え、構造を変化させた後、温度相転移を起こさせることで、変化した構造を消失させたり増強させたりすることができる。また、メカノケミカル合成についても大きな進展が見られた。新たなメカノレドックス反応の開発に成功したほか(Angew. Chem. Int. Ed. 2020, 59, 22570)反応中に起こる結晶化や分子間相互作用の変化を積極的に活用した反応性のコントロールに世界で初めて成功した。これは「ソフトクリスタル」の性質を有機合成に活用できた例として、画期的といえる。また、不溶性有機ハロゲン化物からメカノケミカルクロスカップリングによって、これまでにない構造を持つ新たな発光材料の合成にも成功している。よって本年度は「当初の計画以上に進展している」と結論づけた。
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Strategy for Future Research Activity |
新たな分子ドミノ型ソフトクリスタルを開発する戦略として、スクリーニング実験と計算化学の活用による高速探索系の確立をもとに、「設計の基本設計概念」を確立し、さらに精密測定によるドミノ現象メカニズムおよび超弾性・強弾性のような力学特性の解明と機能開発を基軸に研究を行う。研究を行う対象としては以下の通りである。(1)新しい観点からの再スクリーニング:これまでに我々が開発した数百にのぼる刺激応答性金錯体は、単なる発光性メカノクロミズムという点で検討を行ってきたものが多いが、これらに対して、「異方的な力学的刺激」に対する応答に関して再スクリーニングする。また、近年新たに注目を浴びている機械学習の方法によりこれまでの錯体を分類し、その構造から機能を予想する方法を構築する。(3)高速AFMによる相転移機構の解明と微細構造の作り込みによる新材料開発:これに関しては、新たに見出したアンフィダイナミック結晶や強弾性結晶についても解析を試みる。(4)ソフトクリスタルにおける共有結合の形成を活用した発光材料の合成:これまでの研究で、ボールミルによる強制的な撹拌と構造変化により、固体のクロスカップリング反応を実現している。これらの反応は、同時にこれまでに使うことのできなかった、不溶性有機ハロゲン化物をベースにした新しい発光性・結晶材料の合成手段としても有用であるため、これらの反応の性能向上と、これを活用して新たなソフトクリスタル、発光材料の合成を行う。固体の結晶性が反応性に大きく関わっていることがわかったので、それを利用した結晶相転移型の選択的反応の開発を試みる。また、ボールミル条件中で、添加剤との共結晶形成を利用した反応制御について検討を行う。
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Research Products
(20 results)