2019 Fiscal Year Annual Research Report
Fabrication of Soft Photonic Crystals for Novel Functions
Project Area | Soft Crystals: Science and Photofunctions of Easy-Responsive Systems with Felxibility and Higher-Ordering |
Project/Area Number |
17H06376
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
グン 剣萍 北海道大学, 先端生命科学研究院, 教授 (20250417)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
黒川 孝幸 北海道大学, 先端生命科学研究院, 教授 (40451439)
野々山 貴行 北海道大学, 先端生命科学研究院, 准教授 (50709251)
|
Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2022-03-31
|
Keywords | 高分子構造・物性 / ソフトクリスタル / 構造色 / 生体模倣 / 刺激応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.レーザー刻印による自在な構造色応答を示すラメラゲル 脂質二分子膜と高分子ネットワークが交互に積層されたラメラゲルは、構造色を示し指圧程度の弱い力で膜間隔が変化し構造色が連続的に変化するソフトクリスタルである。このゲルに高強度レーザーでパターンを刻印すると膜が破壊され、そこへ高分子ネットワークと反応する物質を拡散させることで、局所的に高分子を改質することができる。この改質された高分子ネットワークは元のものと比べて、膨潤度が異なるため、レーザー刻印に沿った構造色の変化が観察され、ゲル材料全体を目的の形状に変形することができ、構造色ゲルのさらなる多機能化の技術として期待できる。 2.高温で1000倍以上弾性率がジャンプする相分離ゲル 一般的な高分子は低温で硬いガラス状態、高温で柔らかいゴム状態をとる。この性質とは逆の昇温過程におけるゴム-ガラス転移を示すゲルを初めて合成した。このゲルは、スピノ-ダル分解型の相分離を示し、ある温度以上では高分子濃厚相と希薄相に分離する。これまでの相分離ゲルは、強い相分離を達成できず、濃厚相は依然としてゴム状態であり弾性率の向上も大きくはなかった。本ゲルは、好熱菌のタンパク質が高温でも変性せずに構造を安定化させている機構を導入した。具体的には静電相互作用が疎水環境で増強されることを利用し、相分離後の高分子濃厚相(低含水率)にイオン結合が取り込まれることで、高分子間の相互作用が急激に上昇し、ガラス状態へ達する。その結果、弾性率が瞬時に3桁以上ジャンプする。この性質を利用して、事故の際に発生する摩擦熱を利用して硬くなるリアクティブプロテクターを試作し、優れた耐摩擦性を示した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脂質二分子膜ゲルは、膜の配向を保つために大きなせん断応力を掛けて、分子の配向が緩和する前に重合して構造を固定することで作製しているため、単一色のゲルは作製できても精細なデザインには課題があった。機械制御のレーザー刻印による局所的改質によって、自在な構造色パターンとゲルの変形をチューニング可能となった。 相分離ゲルでは、これまでの高分子の常識を覆す逆のガラス転移現象を示す初めての材料の合成に成功した。この相分離は、既存のゲルと比べて極めて高速で大きな熱吸収を伴う。これにより、プロテクターなどの高速応答が求められる応用や、吸熱剤としての応用が期待できる。本成果は、材料分野で権威ある雑誌Advanced Materials (IF=25.6)に掲載され、カバーアートにも採択された。以上より概ね順調に進んでいると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
1)ラメラ構造を有する構造色ゲルの構造解析を、小角X線散乱、偏光顕微鏡及び透過型電子顕微鏡を用いて行う。比較的硬い二分子膜と柔らかい高分子網目が積層された本構造色ゲルの破壊過程において、硬い二分子膜が亀裂の進行を抑制していことで、マクロの靭性が向上していると考えられるため、二分子膜の並びとゲルの強靭性の関係性を評価する。 2)高温で弾性率が3桁以上ジャンプする相分離ゲルの熱物性及び構造形成過程の評価を行う。前年に引き続き、東京工業大学 森川淳子教授の温度波熱分析装置を用いて、相分離構造の形成と成長、及びゴム-ガラス転移の際の熱伝導率の変化を測定する。また、名古屋大学 内橋貴之教授の高速原子間力顕微鏡技術を用いて、相構造の形成の直接観察と高分子濃厚相及び希薄相の弾性率測定を行う。 3)青山学院大学 長谷川美貴教授の開発した水分子と配位するソフトクリスタルは、溶液状態の水とハイドロゲル中の水では、発光特性が異なる知見が得られている。様々なハイドロゲルを作製し、それらの水分子の構造とソフトクリスタルの発光特性の関係性を評価する。
|