2017 Fiscal Year Annual Research Report
脊索動物胚発生の分子発生システムゆらぎ測定と進化的保存性
Project Area | Evolutionary theory for constrained and directional diversities |
Project/Area Number |
17H06387
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
入江 直樹 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (10536121)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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Keywords | 進化可能性 / 進化発生学 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の分子レベルでの研究により、発生進化の法則性には、発生の最初期ではなく「発生の途中段階(特に器官形成期)」が強固に保存されているというこれまでの予想に反した結果が支持されることが明らかになった。しかし、なぜ「発生の途中段階」がこのように限られた多様性しか示さないのかについては、自然淘汰や中立説などの従来の進化理論では十分な説明ができておらず、その進化メカニズムも不明のままである。それが解明されれば、「ボディプラン」と呼ばれる解剖学的特徴が数億年以上にわたって変化してこなかったという進化的事実が説明される可能性があり、さらには、進化学に「進化の方向性や制約」という新たな視点を加えることができると期待できる。 今年度は、こうした問題に取り組むべく、個体ごとの全胚由来遺伝子発現量を測定する技術確立を行った。対象とした生物は、メダカならびにマウスで、特にメダカに関しては、高精度なゲノムに加えて、高い制度の推定遺伝子領域の同定が必要であったため、初期胚から成体までの全胚由来RNAseq(stranded RNAseq)を行った(Nature Communications 1833 (2017)、DRA databaseに生データ掲載済)。また、発生段階のうち、器官形成期が脊椎動物亜門において保存される要因のひとつとして、遺伝子の使い回しによる多面拘束効果が寄与している可能性がみえてきた。これは、脊索動物8種の初期胚から後期胚までの遺伝子発現プロファイルを多角的に解析した研究により得られたものであり、多くの発生段階で発現している多面発現遺伝子の比率が高い発生段階ほど進化的に保存される傾向にあること、多面発現遺伝子は、変異により致死的な表現型を示す傾向が高く、より多くの遺伝子群と相互作用している傾向にあることなどから示唆されたものである(Nature Ecology and Evolution, 9:7, 2018)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画書通りに進んでいる他、前胚由来遺伝子発現プロファイルの個体間差を検出するという高い精度での実験系の確立も成功した。さらに、本課題では、進化可能性を拘束しうる因子として、揺らぎの小ささを候補としてあげているが、多面拘束効果も候補のひとつとしてあがるという予期せぬ発見があった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の計画としては、以下の3つを考えている。 [1] 脊索動物発生システムの遺伝子発現情報からの揺らぎ・応答測定 [2] 古典概念、揺らぎ・応答関係と大進化スケールで保存された発生システムとの相関解明 [3] 発生と進化の関係性を進化メカニズムから説明する進化制約理論の構築 今年度、多面拘束が進化可能性を拘束しうる効果の1つとしてみえてきたので、今後は多面発現遺伝子の揺らぎ・応答測定という観点からも研究を進めることで、計画にあげた問題解明に取り組む予定である。
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Research Products
(10 results)
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[Journal Article] Centromere evolution and CpG methylation during vertebrate speciation2017
Author(s)
Kazuki Ichikawa, Shingo Tomioka, Yuta Suzuki, Ryohei Nakamura, Koichiro Doi, Jun Yoshimura, Masahiko Kumagai, Yusuke Inoue, Yui Uchida, Naoki Irie, Hiroyuki Takeda* & Shinich Morishita*
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Journal Title
Nature Communications
Volume: 1833
Pages: -
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Weighted gene co-expression network analysis reveals potential genes involved in early metamorphosis process in sea cucumber Apostichopus japonicus2017
Author(s)
Yongxin Li, Mani Kikuchi, Xueyan Li, Qionghua Gao, Zijun Xiong, Yandong Ren, Ruoping Zhao, Bingyu Mao, Mariko Kondo, Naoki Irie, Wen Wang*
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Journal Title
BBRC
Volume: 495:1
Pages: 1395-1402
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Constrained vertebrate evolution by pleiotropic genes2017
Author(s)
Haiyang Hu, Masahiro Uesaka, Song Guo, Kotaro Shimai, Tsai-Ming Lu, Fang Li, Satoko Fujimoto, Masato Ishikawa, Shiping Liu, Yohei Sasagawa, Guojie Zhang, Shigeru Kuratani, Jr-Kai Yu, Takehiro G. Kusakabe, Philipp Khaitovich, Naoki Irie*; the EXPANDE Consortium
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Journal Title
Nature EcoEvo
Volume: 1
Pages: 1722-1730
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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