2020 Fiscal Year Annual Research Report
脊索動物胚発生の分子発生システムゆらぎ測定と進化的保存性
Project Area | Evolutionary theory for constrained and directional diversities |
Project/Area Number |
17H06387
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
入江 直樹 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (10536121)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上坂 将弘 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 研究員 (20756499)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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Keywords | 進化 / 発生 / EvoDevo |
Outline of Annual Research Achievements |
生物の表現型は進化を通して完全に変幻自在ではない。例えば動物のボディプラン(基本的な解剖宅的特徴)は、5億年以上前のカンブリア爆発期あるいはそれ以前に成立してから大きく変更された形跡がなく、強固に保存されてきた。このように進化的に強固に保存された形質は、系統慣性、あるいは系統拘束といった概念で説明されることが多く、進化しにくい性質があると予想されている。しかし、実際にそうした形質を進化的な多様化から拘束する何らかの仕組みがあるのか、あるいは単に適応的な形質だったために保存されたのか、それとも偶然の産物として保存されているのかについては明らかになっておらず、本課題ではこの問題に取り組んでいる。 発生砂時計モデルによれば、ボディプランが進化を通して保存されるのは、発生過程の保存された器官形成期が保存されるためだとしており、独立した複数の研究がこのモデル成立を支持している。しかし、すでに胚致死による負の選択圧ではこの器官形成期の保存性が説明できないことを明らかにしており、本課題では頑健性(非遺伝的な表現型揺らぎの小ささ)という観点に着目して研究を行っている。これまで、メダカ近交系を用いた器官形成期の揺らぎを測定し、発生初期や後期よりも揺らぎが小さいというデータが得られつつあるものの、技術誤差によるノイズの影響や発現量の影響など、様々な交絡要因が考えられたため、それらを緻密に除去する実験データの追加、再検証を行っている。結果として、やはり揺らぎと進化的保存正の相関を示唆する結果が得られつつある。また、多面的に発現する遺伝子と揺らぎの相関もみられつつある状況にあり、ボディプラン保存の背景にある進化メカニズムに寄与している可能性が濃厚となってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画当初に想定していた揺らぎの測定系構築に成功した他、揺らぎと進化的保存性の相関もみえつつあるなど、順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナ感染症の影響で思うように実験ができていない状況が続いているものの、概ねデータは揃いつつあり、最終的な解析を詰める予定である。また、技術発展もあり、細胞レベルでのボディプランの保存性解明という問題にも今年度は取り組む予定である。
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Research Products
(12 results)