2017 Fiscal Year Annual Research Report
ケミカルバイオロジーを用いた炎症性疾患に対する分子標的予防研究
Project Area | Preventive medicine through inflammation cellular sociology |
Project/Area Number |
17H06398
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
酒井 敏行 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20186993)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
早川 芳弘 富山大学, 和漢医薬学総合研究所, 教授 (10541956)
飯泉 陽介 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20533178)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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Keywords | SASP / 細胞老化 / スクリーニング / 天然物 / NK細胞 / IL-6 / T-bet / Eomes |
Outline of Annual Research Achievements |
種々の機能性食品成分は、p15、p21、p27などのCDK阻害因子の発現を誘導することにより、がん抑制遺伝子RBタンパク質を活性化型にする。その結果、がん細胞の増殖を抑制するため、がんの分子標的予防に極めて有用である。しかし、RBの活性化は細胞老化も誘導し、その結果SASP(細胞老化関連分泌現象)を介した炎症細胞社会の「乱れ」をもたらし、逆に炎症の誘発やがんの増悪に寄与する恐れがある。本研究では、このSASPを阻害する天然物を見出し、慢性炎症を克服する戦略及び新規予防標的分子の発見を目的としている。 平成29年度では、SASPを阻害する天然化合物を探索するためのスクリーニング系の構築を行った。ヒト線維芽細胞にブレオマイシンを添加することで不可逆的な細胞周期停止及び細胞老化を誘導し、ELISA法を用いてIL-6の大量分泌つまりSASPを検出できる系を確立した。この線維芽細胞の系を用いて、天然物ライブラリーからスクリーニングを実施し、複数のIL-6の分泌を阻害する天然物を見出した。 また、SASPを起こした細胞がNK細胞により攻撃・排除されることから、NK細胞を活性化する化合物を探索するための、転写因子を指標としたスクリーニング系の樹立も行った。特にT-betとEomesのNK細胞の機能成熟化における役割に着目し、これらの転写因子特異的ルシフェラーゼレポーターを安定発現する細胞株樹立を行った。ヒトT-betならびにEomesの結合領域をホタルルシフェラーゼレポーターベクターに組み込み、T-bet及びEomesレポーターベクターを作製した。Jurkat細胞にトランスフェクションし、そのレポーター活性をin vitroにおいて確認した。現在、シングルセルクローニングを行い、安定発現細胞株の樹立を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画通り、ヒト線維芽細胞を用いたSASP阻害物質のスクリーニング系を構築し、それを用いて複数のSASPを阻害する天然化合物の候補を見出すことに成功した。NK細胞活性化を誘導する化合物のスクリーニング系のセットアップについても、概ね当初の計画した進捗が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
見出したIL-6の分泌を阻害する天然化合物が、SASPを阻害できるか否かを定量RT-PCR法により複数のSASP factor(IL-6、IL-8、CCL20など)を測定することで評価する。さらに、作用機作が明らかになっていない天然物に関して、この天然物固定化ナノ磁性ビーズを作製し、SASPを阻害する天然物に対するヒト結合タンパク質を精製・同定し、作用機序を明らかにしていく。また、樹立したNK細胞活性化を誘導する化合物のスクリーニング系を用いて、候補化合物の絞り込みを行う。
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Research Products
(10 results)