2018 Fiscal Year Annual Research Report
菌類が関わる共生・寄生における化学コミュニケーションの解明
Project Area | Frontier research of chemical communications |
Project/Area Number |
17H06402
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
河岸 洋和 静岡大学, グリーン科学技術研究所, 教授 (70183283)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 智大 宇都宮大学, バイオサイエンス教育研究センター, 准教授 (10649601)
稲井 誠 静岡県立大学, 薬学部, 講師 (20621626)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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Keywords | 黒穂菌 / キノコ / マコモタケ / 冬虫夏草 |
Outline of Annual Research Achievements |
「菌類が関わる共生・寄生における化学コミュニケーションの解明」のため,3つの課題を行った。 1)フェアリーリングにおける植物とキノコの化学コミュニケーション: 芝生が輪状に周囲より色濃く繁茂し,後にその輪の上にキノコが発生する現象は「フェアリーリング」と呼ばれている。研究代表者らはフェアリーリング形成菌コムラサキシメジからシバ成長制御物質, AHXとICA,そしてAHXの植物体内での代謝産物AOHを発見した。その後,これら3化合物(fairy chemicals, FCsと略称)は調べた全ての植物にも内生していることを証明し,その生合成がプリン代謝における新しい経路によることを明らかにした。今年度は,高活性AHX誘導体を創製した。植物におけるFCsの生合成・代謝経路の一部を解明した。さらに,これらの物質を産生する酵素活性を見出し,この酵素の部分精製に成功した。 2)マコモタケにおける化学コミュニケーション: イネ科植物マコモに黒穂菌が感染すると共生が始まり,菌糸が蔓延する部分は異常に肥大する。この肥大部分は,マコモタケと称し食されている。マコモタケは,花芽が形成されず実がならない。このことは,未知の制御物質が共生部分の肥大化と不稔を起こすと推定される。一方,黒穂菌は通常の培養では酵母状で増殖するが,マコモタケの中では菌糸を伸ばしている。今年度は,黒穂菌からの新規物質を数種発見し,その構造を明らかにした。 3) 冬虫夏草における化学コミュニケーション: 冬虫夏草とは,菌が昆虫などに感染し,最終的に昆虫体内から子実体が発生するものの総称である。感染メカニズムは未だ明らかになっていない。今年度は,冬虫夏草の1種サナギタケ(Cordyceps militaris)が産生するレクチンを発見し,このレクチンが感染成立に関わっていることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3小課題の全てにおいて以下のように概ね順調に進行している。 1)フェアリーリングにおける植物とキノコの化学コミュニケーション: 今年度は,植物におけるFCsの生合成・代謝経路を解明し,新規代謝産物を発見することを目指し, AOHの新規代謝産物を発見した(論文準備中)。また,名古屋大学伊丹グループとの共同研究で,高活性AHX誘導体を創製した(Org. Lett., 20, 5684-5687, 2018)。さらに,これらの物質を産生する酵素を発見した(未発表データ)。 2)マコモタケにおける化学コミュニケーション: 今年度は,黒穂菌を培養し,その培養液からの植物成長活性を有する新規物質1種を発見した(未発表データ)。 3) 冬虫夏草における化学コミュニケーション: 冬虫夏草とは,菌が昆虫などに感染し,最終的に昆虫体内から子実体が発生するものの総称である。感染メカニズムは未だ明らかになっていない。今年度は,冬虫夏草の1種サナギタケ(Cordyceps militaris)が産生するレクチンを発見し,このレクチンが感染成立に関わっていることを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き,以下の研究を行う。 1)フェアリーリングにおける植物とキノコの化学コミュニケーション: FCsのさらなる推定経路を証明するために,その経路上の推定代謝産物を合成し,コムラサキシメジ,イネなどを用いてその存在の有無をLC-MS/MSによって検証する。また,FCsを処理したイネからFCsの代謝産物を単離・精製し,構造を決定し,それらの化合物の植物中での内生の有無を確認する。また,得られた生合成関連化合物の植物中での内生を確認するため,LC-MS/MSにおける分析条件を確立したため,それを用いて,各種植物の内生量を定量する。FCs関連化合物の生合成・代謝に関わる酵素を精製し,構造や諸性質を明らかにする。さらにこれらの酵素を異種発現し,その生体内での機能を明らかにする。 2)マコモタケ(植物と菌との共生体)における化学コミュニケーション: 黒穂菌からの機能性物質の探索を行う。これまで得られている新規物質の絶対配置を,合成化学的手法を駆使して決定する。さらに,これらの物質のマコモの成長に関する効果を検討する。 3) 冬虫夏草における化学コミュニケーション: 冬虫夏草の1種Beauveria bassianaを培養し,菌糸体,子実体からの機能性物質を探索しする。さらに,人工的な宿主であるカイコに対する得られた物質の活性を検討する。また,冬虫夏草の1種サナギタケ(Cordyceps militaris)の産生するcordycepinなどの核酸アナログの生合成経路の一部を明らかにする。
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[Journal Article] The complete mitochondrial genome sequence of the edible mushroom Stropharia rugosoannulata (Strophariaceae, Basidiomycota)2019
Author(s)
Suzuki, T., Ono, A., Choi, J-H., Wu, J., Kawagishi, H., Dohra, H.
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Journal Title
Mitochondrial DNA Part B: Res.
Volume: 4
Pages: 570-572
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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