2017 Fiscal Year Annual Research Report
Studies on chemical communication on host-selective toxins
Project Area | Frontier research of chemical communications |
Project/Area Number |
17H06407
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
上田 実 東北大学, 理学研究科, 教授 (60265931)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高岡 洋輔 東北大学, 理学研究科, 講師 (80599762)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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Keywords | 宿主特異的毒素 / AK-トキシン / 植物毒素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、植物宿主特異的毒素の構成単位であるトリエンデカカルボン酸部位の合成的供給と、これをベースとした化学ライブラリー構築を行った。化学ライブラリーとして、各種アミノ酸および脂肪酸部位を結合させたものを準備した。これらをホスト植物である二十世紀ナシに投与するともに、植物における活性酸素種の発生をモニターした。その結果、残念ながら植物種非選択的毒素は得られなかったが、従来の理解と異なり、活性酸素種の発生と病変発生が、必ずしもリンクしないという結果を得た。すなわち、一部の化合物において、活性酸素種を発生させないにもかかわらず病変を引き起こす活性が確認された。また、植物種によっては(ミヤコグサ、イネ)、活性酸素種の発生が確認される一方で、病変が認められなかった。また、モデル植物シロイヌナズナにおける活性酸素種の発生はRbOH阻害剤によって阻害された。この極めて興味深い結果に基づき、化学ライブラリーの拡張とともに、標的同定、作用機作解明を継続する。 また一方、植物病原菌毒素には、植物ホルモン類似の活性を示すものがある。これをベースとした構造展開によって、植物ホルモンの活性を選択的に切り分けて活性化することに成功した。この成果は、これまで困難であった成長ー防御のトレードオフ関係を解消できる新たな化学技術の開発に繋がる。植物病原菌毒素は植物ケミカルバイオロジー研究における分子ツールとして極めて有用である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究のセットアップにおいてキーとなるのは、植物宿主特異的毒素(HST)の合成的供給法の開発であった。ツール分子の開発には、徹底的な構造活性相関研究が必須であり、このためには化合物の共有がネックとなる。また、過去のHST研究においては、合成的供給が不十分であったため、詳細な研究が中止された経緯がある。この観点から考えると、本年度の研究において、トリエンデカカルボン酸ユニットを、高い光学純度で、グラムスケール供給できた点は極めて重要である。このため、化学ライブラリーの拡充を実現することができ、これまでの理解を超える作用機作が明らかになりつつある。以上のように、本研究は、順調に進展していると考えられる。 また、植物病原菌感染において極めて重要な成長ー防御のトレードオフ関係を改称できる化学的戦略を開発できた点は、応用的な展開を考える上でも非常に意義深い。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、グラムスケール供給を実現できたトリエンデカカルボン酸ユニットを用いて、各種化合物ライブラリーの合成展開と、プローブとして有用な化合物の選抜を開始したい。モデル植物での遺伝子発現解析を可能にする、広範な植物種に有効な宿主非選択的植物毒素の開発を目標として設定したい。これにもとづいて、モデル植物での作用機構解析を継続することで、道の作用機作解明に繋げたい。
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