2019 Fiscal Year Annual Research Report
Studies on chemical communication on host-selective toxins
Project Area | Frontier research of chemical communications |
Project/Area Number |
17H06407
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
上田 実 東北大学, 理学研究科, 教授 (60265931)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高岡 洋輔 東北大学, 理学研究科, 准教授 (80599762)
|
Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2022-03-31
|
Keywords | 宿主選択的毒素 / AK-トキシン / コロナチン |
Outline of Annual Research Achievements |
宿主選択的毒素に関しては、大きな進展があった。AK-トキシンなど数種の宿主選択的毒素に共通して含まれるエポキシデカトリエンカルボン酸(EDA)ユニットのグラムスケール供給を可能にした。AK-トキシン類のうちAK-トキシンIIはEDAユニットとL-フェノルアラニンの縮合体であることから、16種類の天然型アミノ酸とEDAユニットを縮合させたケミカルライブラリーを構築し、二十世紀ナシおよび数種のモデル植物への病変誘導活性を観測した。その結果、二十世紀ナシに加えてモデル植物イネ(Oriza sativa)にも有効な誘導体Ile-EDAを得ることができた。興味深いことに、Ile-EDAは別種のモデル植物シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)には効果を示さず、2種のモデル植物間において宿主選択性をもっている。この特性により、遺伝学的研究資源が豊富なモデル植物間での作用の差異を比較することが可能となり、Ile-EDAは今後の作用機構研究に有利な分子ツールとして期待できる。またIle-EDAには活性酸素産生を誘導する作用が確認された。従ってIle-EDA は、AK-トキシンと同様に活性酸素産生により、二十世紀ナシ、イネの2つの植物に病変を誘導することが確認でき、オリジナルの化合物であるAK-トキシンと同様の作用機構でモデル植物イネに毒性を示す分子ツールを開発できた。 宿主非選択的毒素に関しては、毒素構造をもとに植物免疫機能を制御する化合物NOPhを開発した(Nat. Commun., 2018)。さらに活性の強い化合物の開発や実用作物に対して有効な化合物の開発を行うべく、ケミカルライブラリーの構築(未発表)と実用作物の受容体に対するリガンドスクリーニングにも有効な蛍光異方性変化を利用したin vitro検定法を開発した(J. Biol. Chem., 2019)
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
宿主選択的毒素、宿主非選択的毒素のいずれに関しても、化合物ライブラリーの構築を終了し、有望な化学プローブ分子を見出すことができた。いずれに関しても特異な生物活性が確認できており、作用機構解析に進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初計画では、モデル植物シロイヌナズナにおいて作用を示すEDA誘導体を探索し、これを用いて研究を行う予定であった。しかし、研究の進展に伴い2種のモデル植物(イネとシロイヌナズナ)間で宿主選択制を示し、イネ選択的に毒性を示す分子Ile-EDAの開発に成功した。これを用いることで、遺伝学的解析が容易な2種のモデル植物間での生物応答を精密に解析できることになり、当初計画時よりも優れた研究内容を期待できる。このため、研究の主体をイネに作用するIle-EDAに変更した。また、植物宿主非選択的毒素コロナチンを用いることで、植物-微生物間の化学コミュニケーションの制御に成功したので、これを計画研究の一部に組み入れた。
|