2018 Fiscal Year Annual Research Report
上皮細胞の極性輸送における細胞小器官内選別輸送ゾーンの有無とその意義
Project Area | Toward an integrative understanding of functional zones in organelles |
Project/Area Number |
17H06422
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
原田 彰宏 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (40251441)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木下 タロウ 大阪大学, 微生物病研究所, 寄附研究部門教授 (10153165)
西野 美都子 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (30510440)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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Keywords | 細胞極性 / ゴルジ体 / GPIアンカータンパク / Rab / 上皮細胞 / ノックアウトマウス / 電顕トモグラフィー |
Outline of Annual Research Achievements |
上皮細胞の極性の形成や維持は細胞内の極性を持つ輸送(極性輸送)に依存するが、その詳細な機構や経路は不明である。原田は哺乳類上皮細胞で、頂上面に向かう異なる分子が、ゴルジ体で異なる選別輸送ゾーンを通るか遺伝子ノックイン法と光学・電子顕微鏡を用いて観察した。その結果、従来ゴルジ体のtrans槽に局在すると考えられている2つの分子が全く異なる分布を示すことを超解像顕微鏡と電子顕微鏡で観察した。 GPIアンカー生合成の量的制御機構はこれまで殆ど分かっていなかった。木下は、GPIをタンパク質に付加するGPIトランスアミダーゼが欠損した細胞では、小胞体関連分解(ERAD)によってGPI生合成が強く抑制されていることを見出した。これはGPI生合成を正に制御する未知の成分をERADが分解し、GPIの蓄積を防いでホメオスタシスを維持するメカニズムであると考えられる。 西野は、領域横断的な電子顕微鏡および電子線トモグラフィー解析支援を担当し、これまでに今泉班の斎藤敦氏と公募班の鈴木邦律氏より提供された試料を解析した。斎藤氏の支援において、マウス海馬組織や海馬初代培養細胞の神経樹状突起スパインにおける小胞体の電子顕微鏡観察を行い、電気刺激または薬剤刺激を与えて神経を興奮させ、小胞体の形態が変化するかについて解析をした。その結果、カイニン酸刺激により海馬組織のスパイン小胞体が形態変化する可能性が示唆された。また鈴木氏の支援では、出芽酵母のオートファジー膜(隔離膜)と小胞体のコンタクトサイトを観察するための固定法を検討した。酵母の電子顕微鏡観察は、急速凍結固定法が広く用いられており、細胞内構造の保持が良い反面、小胞体や隔離膜のコントラストが得にくく観察が困難であった。そこで今回、過マンガン酸カリウムを用いた固定法を試みた結果、良好な膜コントラストが得られ、小胞体や隔離膜様構造体が明瞭に認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
原田は従来ゴルジ体のtrans槽に局在すると考えられている蛋白質の遺伝子にtagをノックインすることに成功し、異なる糖修飾を行う酵素が異なる分布を示すことを超解像顕微鏡、電子顕微鏡で観察することが出来た。 木下はERADによってGPI生合成が制御されていることを発見したが、これは全く予期しない発見である。 西野は依頼者との綿密な打ち合わせを行うことで、支援を効果的に進めることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
既に局在が異なることを示したタンパク質については、それら2つのタンパク質が共にゴルジ体の同じ槽に局在するか、超解像顕微鏡、免疫電顕法と電顕トモグラフィー法を用いて確認する予定である。また異なる糖修飾酵素に異なるtagをknockin法によって導入してそれらの局在の比較を行うが、現在使用できるtagが9xc-myc, 3xPAの2つだけであることから、他のtagの導入を試みる。木下と共同でGPIアンカータンパクの生合成に関与する遺伝子のゴルジ体での局在を数を増やしたtagを用いて観察し、GPIアンカータンパクがその遺伝子産物が局在する部位を通過するか、Rush systemを用いてGPIアンカータンパクをERから細胞膜に輸送させ、ゴルジ体における通過部位が酵素の局在と一致するか比較する。 GPI生合成抑制に関与しているERAD関連因子を確定するとともに、ERADの標的になっている未知の因子を同定し、GPIの量的制御機構を解明する。 神経樹状突起スパインの小胞体が神経興奮により確かに形態変化を起こすのか、再現性を確認する。酵母の小胞体と隔離膜のコンタクトサイトを検出する。これら試料について電子線トモグラフィー解析に発展させる。さらに、他の研究者からの支援依頼があれば柔軟に対応していく。
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Research Products
(31 results)