2020 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Spectrum of the Sex: a continuity of phenotypes between female and male |
Project/Area Number |
17H06424
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
立花 誠 大阪大学, 生命機能研究科, 教授 (80303915)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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Keywords | 性スペクトラム / 性決定遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、マウスの胎児の生殖腺の性スペクトラムの成立機構を明らかにすることが目的であった。この目的を達成するため、XYマウスの胎仔期生殖腺からmRNAを単離し、次世代シーケンス解析を行った。その結果、Sry遺伝子座の近傍に、これまでに知られていなかった転写産物が存在することを見出した。CAGE-シーエンスによって解析したところ、本転写産物をコードするDNA領域には転写開始点が含まれていなかった。長鎖mRNAシーケンス解析を行ったところ、本転写産物はこれまで知られていなかったSryの「隠れた第2エキソン」であることが明らかになった。さらに、分子生物学的、生化学的、および遺伝学的な解析を進めることで、以下の事実を明らかにした。 1)マウスSry遺伝子座にはこれまで見過ごされていた「隠れたエキソン」が存在する。2)「隠れたエキソン」により、Sry遺伝子座からは新規翻訳産物であるSRY-Tが産生されている。3)Sry第2エキソンはマウスのオス化に必須である。4)既知のSry翻訳産物であるSRY-Sは、C末端にデグロン配列を有しているため、生体内では機能不全の性決定因子である。5)新規Sry翻訳産物であるSRY-TはC末端にデグロン配列がないため、タンパク質分解を受けない。 これらの研究成果により、これまで知られていたSry翻訳産物であるSRY-Sではなく、私たちが新たに同定した翻訳産物であるSRY-Tこそが真のマウス性決定因子であることが明らかになった(Miyawaki et al., Science 2020)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
マウスを含め、すべての有単盤ほ乳類のSryは単一エキソン遺伝子と考えられていた。この概念は、1990年にヒトとマウスでSRYが発見されて以降、生物学の一般常識であった。私たちの上記の研究成果は、30年の長きにわたって信じられてきた「Sryは単一エキソン遺伝子である」との教科書の記載を塗り替えることにつながった。この結果は本研究を申請した当時はは全く予期していなかったものであったことから、当初の計画以上に進展したと言える。それを裏付けるように、本研究の成果は日本の新聞の各朝刊やテレビなどで報じられただけでなく、海外のメディアでも取り上げられた。この成果を公表した論文(Miyawaki et al., Science 2020)はFaculty Opinions推薦論文にも取り上げられた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに私たちは、ヒストンH3の9番目のリシンの脱メチル化によるエピジェネティック制御が、マウスSryの活性化に必須であることを見いだしている(Kuroki et al., Science 2013)。今回の成果は、Sry遺伝子座の構造の全容を明らかにすることになった。今後の研究の目標は、真の性決定因子であるSRY-Tがどのようにして生殖腺をオス化するのか、その分子機構を明らかにすることである。Sryの遺伝子構造の解明、Sryの発現機構の解明に引き続いて、SRY-Tの作用機序を明らかにすることで、ほ乳類のオス化の分子メカニズムを包括的に理解することが可能となる。
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[Journal Article] Inhibition of histone methyltransferase G9a attenuates liver cancer initiation by sensitizing DNA-damaged hepatocytes to p53-induced apoptosis2021
Author(s)
Takuma Nakatsuka, Keisuke Tateishi*, Hiroyuki Kato, Hiroaki Fujiwara, Keisuke Yamamoto, Yotaro Kudo, Hayato Nakagawa, Yasuo Tanaka, Hideaki Ijichi, Tsuneo Ikenoue, Takeaki Ishizawa, Kiyoshi Hasegawa, Makoto Tachibana, Yoichi Shinkai, Kazuhiko Koike
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Journal Title
Cell Death and Disease
Volume: 12
Pages: 99, 111
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Deletion of Histone Methyltransferase G9a Suppresses Mutant Kras-driven Pancreatic Carcinogenesis2020
Author(s)
Hiroyuki Kato, Keisuke Tateishi*, Hiroaki Fujiwara, Hideaki Ijichi, Keisuke Yamamoto, Takuma Nakatsuka, Miwako Kakiuchi, Makoto Sano, Yotaro Kudo, Yoku Hayakawa, Hayato Nakagawa, Yasuo Tanaka, Motoyuki Otsuka, Yoshihiro Hirata, Makoto Tachibana, Yoichi Shinkai, Kazuhiko Koike
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Journal Title
Cancer Genomics Proteomics
Volume: 17
Pages: 695, 705
DOI
Peer Reviewed
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