2020 Fiscal Year Annual Research Report
Sex spectrum specified by sex steroids
Project Area | Spectrum of the Sex: a continuity of phenotypes between female and male |
Project/Area Number |
17H06427
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
諸橋 憲一郎 九州大学, 医学研究院, 主幹教授 (30183114)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
馬場 崇 九州大学, 医学研究院, 准教授 (40435524)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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Keywords | 性差 / 性ステロイド / ライディッヒ細胞 / 骨格筋 / Ad4BP |
Outline of Annual Research Achievements |
雌雄を連続するスペクトラムとして捉え、性スペクトラム上での定位(オス化・メス化のレベル)と移動(オス化・メス化のレベルの変化)を制御するメカニズムを解明することが、性の本来の姿を理解するために必須である。本研究では、内分泌要因(性ステロイド)と遺伝要因(性染色体上の遺伝子)による性スペクトラム制御の分子基盤を明らかにする。実験では、性ステロイドを産生する精巣ライディッヒ細胞と性ステロイドの影響を受ける骨格筋細胞を対象に、細胞が独自に有する性を性スペクトラムの観点から明らかにすることを目的とする。以下の成果が得られた。 1) 精巣ライディッヒ細胞における性スペクトラムの制御機構 胎仔精巣の間質にはライディッヒ前駆細胞を含む細胞集団が存在する。これまでに、1細胞シークエンス法にて前駆細胞の存在を確認するとともに、前駆細胞に発現する数個の遺伝子を同定した。Tmsb10はその遺伝子の一つで、この遺伝子のノックダウンはライディッヒ細胞の分化を強く抑制する。ライディッヒ細胞の分化を制御するヘッジホックシグナルとの関わりを調べたところ、本因子がRASシグナル経路の抑制を介して、一次絨毛の形成を制御することでヘッジホックなどの細胞外からのシグナル伝達を制御していることが示された。 2) 骨格筋細胞における性スペクトラムの制御機構 骨格筋は雌雄で大きさと強さが異なる。性ホルモンと性染色体が、この性差を制御する要因と考えられる。骨格筋を構成する速筋繊維より、性腺摘出マウスとその後の性ホルモン処理マウスの筋繊維を調製し、トランスクリプトームを取得した。その結果、オスではPfkfb3遺伝子の発現を通じ、解糖系が活性化されていることが、またメスではPdk4遺伝子の発現が女性ホルモンによって誘導されることで脂肪酸代謝系がより選択的に働くことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1) 精巣ライディッヒ細胞における性スペクトラムの制御機構 胎仔型ライディッヒ前駆細胞を含む細胞集団より1細胞トランスクリプトームを取得し、前駆細胞集団に発現する遺伝子を得た。Tmsb10はその遺伝子の一つで、ノックダウンにより胎仔型ライディッヒ細胞への分化が抑制された。一方、胎仔型ライディッヒ細胞の分化を活性化するDHHシグナルの受容には一次絨毛が不可欠である。Tmsb10をノックダウンしたところ、一次絨毛が消失した。また一次絨毛の形成を抑制するRASとの関係を調べたところ、Tmsb10はRASとの相互作用を通じ、RASを抑制することが示された。 2) 骨格筋細胞における性スペクトラムの制御機構 雌雄の骨格筋の速筋繊維よりcDNAライブラリーを作成した。トランスクリプトームより、発現に性差を示す遺伝子が同定された。これらの遺伝子の機能や性ホルモン処理による発現変動をもとに、オスでのPfkfb3遺伝子の発現増加が解糖系を、メスでのPdk4遺伝子の発現増加が脂肪酸代謝系を増強すると考えた。そこで、雌雄の骨格筋繊維の初代培養系を確立し、解糖活性、脂肪酸代謝活性を測定したところ、オスでは解糖系が強く、メスでは女性ホルモン依存的なPdk4の発現を介して、脂肪酸b-酸化活性が強いことが示された。なおこれらの活性はPfkfb3とPdk4遺伝子のノックダウンによって大きく低下した。 遺伝要因の寄与を問うに当たり、性染色体上の4種のヒストン脱メチル化遺伝子(SMCX、SMCY、UTX、UTY)に着目している。これらの脱メチル化酵素の標的サイトをChIP-seqにて同定するため、FLAG-tagを挿入したマウスを作出した。現在、少数細胞で行うことができるCut&Run法の予備実験を行いつつ、データの取得を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
1) 精巣ライディッヒ細胞における性スペクトラムの制御機構 ヘッジホックシグナルが胎仔型ライディッヒ細胞の分化を誘導し、このシグナルの下流にTmsb10が関与するステップが存在すると考えられる。Tmsb10はRas-Rafの結合を阻害することで、一次絨毛の形成を促進する活性を有することも明らかになった。また、Tmsb10を発現する細胞をmChrry陽性細胞として採取することができるようになったので、この細胞の機能解析を加え、論文発表に向け、これらの結果をまとめる。 性染色体にコードされる4種のヒストン脱メチル化遺伝子(SMCX、SMCY、UTX、UTY)のノックアウトマウスとこれらの脱メチル化酵素の標的サイトを同定するため、FLAG-tagを挿入したマウス系統を樹立している。これらのマウスとCut&Run法により、ライディッヒ細胞ならびに間質細胞のヒストン修飾や各種転写因子の標的遺伝子に関するデータの取得を進める。
2) 骨格筋細胞における性スペクトラムの制御機構 昨年度に、上記の結果を含む論文を投稿したところ、いくつかの点で追加実験を要求されたので、それらの実験を行っている。これらの実験を終了したのちに、SMCX、SMCY、UTX、UTYなどのヒストン脱メチル化酵素が遺伝子発現の性差に関与する可能性を見据えつつ、上記のマウス系統を用い、骨格筋の変化の有無を調べる。存在する場合にはヒストンメチル化の変化を検討し、性染色体にコードされるこれらのヒストン脱メチル化因子による性差の構築の解明につなげる。
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Research Products
(11 results)
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[Journal Article] Gene expression and functional abnormalities in XX/Sry Leydig cells.2021
Author(s)
Shogo Yanai, Takashi Baba, Kai Inui, Kanako Miyabayashi, Soyun Han, Miki Inoue, Fumiya Takahashi, Yoshiakira Kanai, Yasuyuki Ohkawa, Man Ho Choi, Ken-Ichirou Morohashi
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Journal Title
Sci Rep
Volume: 11
Pages: 719
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Presentation] Sex chromosome composition affects gene expression and function in Leydig cells.2020
Author(s)
Yanai S, Baba T, Inui K, Miyabayashi K, Han S, Inoue M, Takahashi F, Kanai Y, Ohkawa Y, Choi MH, Morohashi KI
Organizer
第43回日本分子生物学会
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