2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Spectrum of the Sex: a continuity of phenotypes between female and male |
Project/Area Number |
17H06428
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Research Institution | National Center for Child Health and Development |
Principal Investigator |
深見 真紀 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 分子内分泌研究部, 部長 (40265872)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
緒方 勤 浜松医科大学, 医学部, 教授 (40169173)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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Keywords | ホルモン / 染色体 / 遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本計画研究の目的は、科学的根拠をもってヒトの性が連続する表現型スペクトラムであることを証明し、さらに、細胞―器官―個体の各階層における性スペクトラム上の位置を決定する分子機構を解明することである。研究開始からこれまで当初の計画に沿って研究が行われ、重要な成果が得られた。主たる成果は下記のとおりである。 研究項目1. ヒト性スペクトラムの成立と同調に関与する因子の解明:STX2変異を介した生殖機能障害の新たな発症メカニズムの解明、生殖細胞系列GNAS機能亢進変異に起因する新たなヒト遺伝疾患の発見、および、性分化/性成熟/生殖機能の表現型バリエーションを招く多数のゲノム・エピゲノム変化を同定した。 研究項目2. 個体内の性スペクトラム同調における性染色体ゲノム安定性の意義の解明:性スペクトラムの成立と位置移動における体細胞性モザイクY染色体喪失の意義と卵巣機能不全を招くX染色体複雑ゲノム再構成の発症機序を解明し、特異的内分泌異常を伴う新たなインプリンティング異常症を発見した。 研究項目3. 個体内の性スペクトラム同調における性ステロイドの役割の解明:新規男性ホルモン11-oxygenated C19 steroidsの生理的および病的意義、外性器男性化におけるアンドロゲンシグナル経路構成因子、NR5A1機能亢進変異が全身の性スペクトラムに与える効果、SAMD9体細胞リバージョン変異獲得による表現型レスキューを解明した。 これまで研究遂行において特記すべき問題は生じていない。本研究期間の成果は、論文、著書、講演、シンポジウム、学会発表、研究班ホームページ、NHKテレビ出演、一般向け書籍などさまざまな形で公開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画に沿って研究が遂行され、各年度の目的が達成された。さらに、性スペクトラムに関するエピジェネティック異常について当初予想していなかった新たな知見が得られた。 研究開始からこれまでに、細胞―器官―個体の各レベルにおいて非典型的な性の存在を明らかにし、ヒトの性が「連続する表現型スペクトラム」であることの科学的根拠を見出すことに成功した。また、性スペクトラム上の位置の決定と移動に関する因子を明らかとした。とくに重要な点として、ヒトの性スペクトラム上の位置が胎児期から老年期までのさまざまな時期において変化し得ることを示した。 本研究期間の成果は、論文、著書、講演、シンポジウム、学会発表、研究班ホームページ、テレビ出演、一般向け書籍などさまざまな形で公開した。本計画研究に参画した多くの研究者および大学院生が賞を受けた。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度以降もこれまでと同様に、成育医療研究センター分子内分泌研究部と浜松医科大学小児科のグループで研究組織を形成する。若手研究者を含む26名の研究協力者が参画する。2019年度の研究計画の概要は下記のとおりである。 研究項目1. ヒト性スペクトラムの成立と同調に関与する遺伝的因子の解明:これまでに集積した性分化疾患患者などの臨床検体を対象として網羅的ゲノム・エピゲノム解析および臨床データ解析を行い、性の表現型バリエーションを招く遺伝学的変化を同定する。 研究項目2. 個体内の性スペクトラム同調における性染色体ゲノム安定性の意義の解明:ゲノム再構成を有する患者の全ゲノムhaplotype phasingや切断点の解析に基づき、減数分裂過程および体細胞分裂で生じる染色体構造異常の発症メカニズムを解明する。また、片親性ダイソミーや性染色体異数性を有する患者のX不活化解析を行い、卵割期から胚盤胞期の胎児に生じる染色体動態を明らかとする。 研究項目3. 個体内の性スペクトラム同調における性ステロイドの役割の解明:患者や非罹患者を対象とするステロイド解析によって非古典的性ホルモンがヒト性スペクトラムに与える効果を明らかとする。また、一般人の心理検査や遺伝学的検査などを行い、こころの性のバリエーションとそれに影響を与える遺伝的因子と環境因子を同定する。
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