2019 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Spectrum of the Sex: a continuity of phenotypes between female and male |
Project/Area Number |
17H06428
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Research Institution | National Center for Child Health and Development |
Principal Investigator |
深見 真紀 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 分子内分泌研究部, 部長 (40265872)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
緒方 勤 浜松医科大学, 医学部, 教授 (40169173)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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Keywords | ホルモン / 染色体 / 遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ヒトの性が連続する表現型スペクトラムであることを明らかとし、性スペクトラム上の位置を決定する分子基盤を解明することである。本年度の主たる成果は下記のとおりである。 研究項目1. ヒト性スペクトラムの成立と同調に関与する因子の解明:横隔膜ヘルニアなどの合併症を伴う性腺形成異常症を招く新規遺伝子MYRFの発見、インプリンティング遺伝子GNASの生殖細胞系列機能亢進変異に起因する新たな先天性内分泌疾患の同定、思春期早発症原因遺伝子MKRN3変異の人種差の解明、一般小児における母子間マイクロキメリズムの頻度の解明を行った。 研究項目2. 個体内の性スペクトラム同調における性染色体ゲノム安定性の意義の解明:精子形成過程の多焦点性ゲノムクライシスによる複雑染色体構造異常症例を同定し、その発生メカニズムについて検討した。また、インプリンティング疾患を有する女性患者のX染色体不活化解析によって、出生を可能とするモノソミーレスキューが受精直後の3-4細胞期に限局して生じることを明らかとした。 研究項目3. 個体内の性スペクトラム同調における性ステロイドの役割の解明:アンドロゲン不応症患者の培養細胞を用いた薬物投与実験により、アンドロゲンによる外陰部男性化が少数の遺伝子の顕著な発現変動ではなく多数の遺伝子の協調的変動に依存していることを見出した。 本研究の成果は、英文論文、講演、シンポジウム、学会発表、研究班ホームページなどで公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画に沿って研究が遂行され、本年度の目的が達成された。本年度の特記すべき成果として、精子形成過程特異的に生じる多焦点性ゲノムクライシスの発見が挙げられる。さらにこの現象にクロモスリプシスと称される染色体破砕が関与することが明らかとなった。この成果は、男女の配偶子形成過程における染色体再編成機構の解明に大きく貢献する。さらに本年度は、非典型的性の表現型を招く単一遺伝子変異やゲノム構造異常が新たに同定された。また、一般小児において高頻度に母子間マイクロキメリズムが存在することが明らかとなった。このような知見は、表現型スペクトラムとしてのヒトの性の理解に役立つ。
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Strategy for Future Research Activity |
R2年度も研究計画に沿って研究を推進する。引き続き、非典型的性の表現型を招く遺伝的および環境因子の同定、および、個体内の性スペクトラム同調における染色体因子と性ステロイドの役割の解明を行う。なお本年度はこれに加え、こころの性スペクトラムに関する研究を推進する。具体的には、AIを用いた小児の描画解析によるこころの性の評価、および、大学生に対する心理学アンケートと次世代シークエンス解析による性的多様性の分子基盤解明を計画している。
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