2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Spectrum of the Sex: a continuity of phenotypes between female and male |
Project/Area Number |
17H06432
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
宮川 信一 東京理科大学, 基礎工学部生物工学科, 准教授 (30404354)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 源 和歌山県立医科大学, 先端医学研究所, 教授 (80174712)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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Keywords | 性決定 / 爬虫類 / 温度 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はこれまでにアメリカアリゲーター(Alligator mississippiensis)性決定の温度感受性期における発生時系列トランスクリプトーム解析を実施し、生殖腺分化カスケードの決定など爬虫類の温度依存型性決定(TSD)の分子基盤を構築した。本年度は、アカミミガメ(Trachemys scripta)を用いてde novo RNAシークエンス(RNAseq)解析を実施し、TSDに普遍的に適用できるかを検討した。両者の比較解析の結果、DMRT1など既知の性分化マーカーのほか、KDM6B(ヒストン脱メチル化酵素)などエピジェネティック制御に関わる複数の因子がクサガメとアメリカアリゲーターの温度感受期において共通して変動していることを見出した。さらに、クサガメ(Mauremys reevesii)を対象にTRPチャネルに関連する薬剤の暴露実験を実施し、性分化におけるTRPの寄与の一般性を検証した。その結果、一部のTRPチャネルアゴニストあるいはアンタゴニストを曝露した卵から得られた胚の生殖腺において、性マーカー遺伝子の発現が、オス産生温度あるいはメス産生温度によって予想された性での発現と逆のパターンを示した。さらに少数の個体ではあるが、組織レベルでの性転換も確認された。これらの結果は、温度依存型性決定において、TRPチャネルが普遍的な環境受容因子であることを示唆する。さらに本年度は、未分化生殖腺のメタボローム解析を実施しており、現在トランスクリプトーム解析とともにデータ解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カメの温度感受性TRPチャネルの温度感受域はまだ決定できていないものの、薬剤投与実験によって性マーカー遺伝子発現変動を明らかにすることができたため、おおむね順調であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
カメの温度感受性TRPチャネルの温度感受域を電気生理学的に明らかにする。カメ卵への薬剤(TRPチャネルアゴニスト・アンタゴニスト)塗布実験も引き続き行い、カメの性分化に関与するTRP群の全容を明らかにする。カメ同様に温度依存型性決定をおこなうワニなどの結果と比較するほか、トカゲ類(遺伝的性決定と温度依存型性決定を行う種がある)やメダカを含む魚類や両生類(遺伝型性決定を行うが、発生中に温度を人為的に変えることで性転換するものがある)も解析に供し、TRPチャネルを中心とする温度感受性の観点から、環境受容システムが性スペクトラムをどのように動かしうるかの理解を深める。なお、既に魚類やその他の爬虫類(トカゲ類)の飼育を始めている。また、カメの生殖腺のトランスクリプトーム解析及びメタボローム解析について、前年度から引き続きデータ解析をおこなう。両者を関連付けて解析を進めていく予定である。メタボローム解析では、すでに興味深い標的代謝物を見出しており、質量分析計によるより詳細な解析を進めていくほか、その代謝物に関連する薬剤塗布実験をおこなう。さらに今年度は、アデノ随伴ウイルスを用いたin vitro(器官培養)あるいはin ovo遺伝子操作実験系の確立を目指す。
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