2020 Fiscal Year Annual Research Report
高分解能・時間分解構造解析による水分解反応の機構解明
Project Area | Creation of novel light energy conversion system through elucidation of the molecular mechanism of photosynthesis and its artificial design in terms of time and space |
Project/Area Number |
17H06434
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
沈 建仁 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 教授 (60261161)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神谷 信夫 大阪市立大学, 人工光合成研究センター, 名誉教授 (60152865)
山口 兆 大阪大学, 産業科学研究所, 特任教授 (80029537)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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Keywords | 光合成 / 光化学系II / 水分解 / 酸素発生 / 高精度量子化学計算 / Coupled-Cluster (CC)計算 / 人工光合成 / 光触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
X線自由電子レーザー(XFEL)を用いて、1閃光照射によりS2状態が作り出されるまでのMn4CaO5クラスター及びその周辺の構造変化を、ポンプ-プローブ法によりナノ秒からミリ秒までの時間帯で時間分割構造変化のデータを測定し、得られた構造をS3状態が作りだされるまでの時間変化と比較した。その結果、1閃光照射により誘導される、電子伝達や水素結合ネットワークでの構造変化を検出することができ、S3状態までの時間分割構造変化と異なる点を見出した。同様の手法を用いて3閃光照射によりS3→(S4)→S0の遷移に伴う構造変化も測定したが、明らかな変化は見られず、結晶中でS状態の遷移がS3まで限定されることが示唆された。また、pHを5-8の範囲で変化させた結晶のX線構造解析を完了させ、pHに依存したMn4CaO5クラスターの構造変化が非対称単位中の2個のモノマーで互いに異なることを見出した。 理論計算の研究では、CaMn4XYZ(H2O)3 (X=O(5), Y=W2, Z=O(4))クラスターのS0状態で可能な中間体にDFT法とDLPNO-CCSD(T)法を適用し、DFT法では(3433)の原子価をもったS0bbb (X = Y = Z = OH-)の安定性が判明した。一方、CC 法では(3433)の原子価をもつ二重項S0bbbの構造と(3442)の原子価をもつS0acb (X = O2-, Y = H2O, Z = OH-) の構造の2構造がエネルギー的に近似縮退しうることが判明した。 上記の研究と並行して、シアノバクテリア由来光化学系I(PSI)四量体やクロロフィルfを有するシアノバクテリアのPSI、珪藻由来PSI-光捕集アンテナFCPIの超分子複合体、緑色硫黄細菌由来反応中心複合体、等の構造を、クライオ電子顕微鏡法を用いて解明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は「水分解反応の中間状態の構造を解析し、そのメカニズムを解明する」ことであり、その最終目的に向かって順調に進行している。今回はS1→S2遷移での時間分割構造変化をポンプ-プローブ法により解析し、すでに解析しているS2→S3遷移での構造変化と比較することで、S2状態を生成するための特異的な構造変化を検出した。また、新型コロナウイルスが蔓延していた時期があったが、ネットワークを利用して研究の一部(特に理論研究)をリモートで行い、その中で十分な成果を得た。上記の研究と並行して、クライオ電子顕微鏡を用いた構造解析で多数の重要な成果を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は光化学系II(PSII)の水分解反応の最終段階であるS3→(S4)→S0の遷移の構造変化を解明することに向けて、光照射によるPSIIのS状態遷移の効率を上げる条件の探索、S3状態で可能な中間体のDLPNO-CCSD(T)計算による構造、エネルギー、電子状態、分光実験定数の解明、水素結合ネットワークやタンパク場を考慮したLarge-Scaleモデルを用いたDFTおよびDLPNO-CCSD(T)による多階層(CCSD(T)/DFT/MM)連結計算により、S3状態での反応場の効果の解明、S4状態で可能な中間体と酸素-酸素結合反応の遷移状態構造のDLPNO-CCSD(T)計算による解明等を実行していきたい。同時にクライオ電子顕微鏡を用いた各種光合成生物由来PSII, PSIと光捕集アンテナ超複合体の構造を解析し、光エネルギーの高効率吸収、移動のメカニズムを解明したい。
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Research Products
(76 results)