2018 Fiscal Year Annual Research Report
分子系及び半導体系光触媒の動的機能に関する実験・理論解析
Project Area | Creation of novel light energy conversion system through elucidation of the molecular mechanism of photosynthesis and its artificial design in terms of time and space |
Project/Area Number |
17H06438
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
野澤 俊介 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 准教授 (20415053)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山下 晃一 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任研究員 (40175659)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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Keywords | 人工光合成 / XAFS / 自由電子レーザー / 量子ビーム / 光触媒 / 光合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
可視光照射下で高活性水素発生を示す不均一系光触媒について時間分解XAFSを実施した。当該サンプルはTiO6八面体で構成された面間にCuが配置された結晶構造を持つ。パルスレーザーを用いてバンドギャップを励起したところ、Cu K端の高エネルギー側への化学シフトがナノ秒スケールで観測されたことから、バンドギャップ励起によってCuサイトからTiO6面内への電荷移動が起こったと考えられる。吸収端の化学シフトと同時にEXAFS構造も大きく変調することから、基底状態のO-Cu-O構造も電荷移動によって、大きく歪むこと示唆される。現在、理論計算と連携して、この構造変化の可視化を試みている。 金属タンパク質の化学反応をより詳細に理解するため、X線回折で結晶全体の構造を捉えると同時に、X線発光分光によって活性中心金属の電子状態を観測する装置の開発をXFEL施設にて進めている。構造解析に加え、X線分光測定により複数の金属サイトにおける経時的な酸化還元反応を同時に観測することで、光化学反応を構造化学的に理解し、PSIIの時分割構造解析との連携を目指している。 水素生成用と酸素生成用の二種類の光触媒を用いるZスキーム型光触媒について、第一原理計算を用いて Cu3VS4のバンド端の位置を評価する手法を開発し、Cu3VS4は水素生成能を持つという実験結果を支持する結果を得た。 trans(Cl)-Ru(bpy)(CO)2Cl2、[Ru(bpy)2(CO)2]2+とそれらの誘導体は、高い活性とプロトンからの水素生成よりもCO2還元に対する高い選択性のために広く使用されており、現在までに多数の反応機構が提案されているが、コンセンサスは得られていない。そこで密度汎関数理論B3LYP法を用いて、CO2還元生成物の選択性を合理的に説明できる妥当な反応メカニズムを提案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、放射光とXFEL施設において回折・散乱・吸収・発光といった時間分解X線測定を応用して、領域内において活発に共同研究を実施していくことで、高度な知識ネットワークを有機的に融合させ、天然-人工光合成研究の架け橋となるような共同研究を領域内で展開することを目標としている。現在まで、薄膜, 溶液, 粒子懸濁液、単結晶と行った領域内で取り扱われている多様な形状のサンプルにX線測定システムを対応させることで、計画班間共同研究を5件、公募班との共同研究を6件実施してきており、当初の計画は概ね順調に進展している。 人工の光合成系材料を取り扱うC班とは、新規に合成された金属錯体光触媒や半導体光触媒について、活発な共同研究を展開しており、固有のサンプル条件に特化した計測システムを構築することができている。領域内において計測を担うB班の中での共同研究も、公募班が合流してから一段と進んできており、領域内研究の有機的な融合に貢献している。領域内で研究されている天然光合成システムや、新規に開発された人工光合成系の光触媒サンプルに対して、異なる波長領域における先端的な動的プローブを相補的に利用し、それらの光化学反応を多角的に理解する試みが実施されている。 加えて、天然の光合成系を取り扱うA班との共同研究も平成30年度から新たに開始された。光合成蛋白質の機能を理解するために領域内で展開されているXFELを用いたシリアルフェムト秒時間分解構造解析に、X線分光学的手法を加え、活性中心金属周りの電子状態変化の情報も同時計測する試みであり、複雑な蛋白質の反応をより正確に深く理解することが可能となると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
時間分解X線測定装置において、更に多くの領域内共同研究を遂行するために、嫌気環境下での測定等について、今後早急に対応していく予定である。半導体光触媒系については、時間分解XAFSによるキャリアトラップサイトの動的構造解析を実施し、欠陥構造の電子状態及び光吸収過程の高精度第一原理解析と連携して、欠損と光触媒活性との関連を明らかにしていく。またキャリアダイナミクス等、フェムト秒の時間分解能が必要な場合はXFELを利用して研究を進め、密度汎関数法に基づいた多体摂動論的手法を用いる欠陥構造における無輻射遷移過程の数理解析と連携し、欠陥にトラップされた正孔キャリアの無輻射遷移過程と光触媒活性との関連を明らかにする。金属錯体光触媒系については、領域内の異なるプローブを相補的に利用し、領域内で合成された材料の光励起構造を包括的に可視化して、その活性特性を構造的視点から議論する。天然光合成との共同研究に関しては、XFELにおいてフェムト秒構造解析とフェムト秒X発光分光測定の同時計測の準備を進め、構造変化と酸化還元反応との相関について議論していく。
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Research Products
(21 results)