2018 Fiscal Year Annual Research Report
On-demand activation of metal complex catalysts by photochemical/electrochemical stimuli
Project Area | Hybrid Catalysis for Enabling Molecular Synthesis on Demand |
Project/Area Number |
17H06444
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
正岡 重行 分子科学研究所, 生命・錯体分子科学研究領域, 准教授 (20404048)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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Keywords | 光化学 / 電気化学 / 錯体化学 / 触媒科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、光あるいは電気化学的刺激により金属錯体触媒を狙い通りに活性化し、生じた活性種を活用した独創的なハイブリッド触媒系の構築を目標としている。この目的を達成するために、課題(1):光/電気化学的刺激により活性種を自在に作り出す手法の開拓、課題(2):光/電気化学的刺激をトリガーとするハイブリッド触媒系の構築、の2つの課題を設定し、研究を行った。 課題(1)に関連し、電気化学的刺激によりオキソ活性種を生成する鉄5核錯体に対し、配位子部位に電子供与性ならびに電子吸引性の置換基を導入した誘導体を新規に合成し、その触媒機能を評価した。どちらの化合物においても、電気化学的酸素発生反応の過電圧の低下がみられた。電子供与性置換基を導入した系においては、活性種生成の電位が低電位側にシフトしていることが確認された。一方、電子吸引性置換基を導入した系では、活性種の電子構造が劇的に変化していることが分かった。以上より、オキソ活性種を低電位で生成させるための2つの異なる戦略が見出された(Chem. Sci., 2019, 10, 4628)。 課題(2)では、光刺激を駆動力とする小分子変換反応に向けたハイブリッド触媒系の創出を試みた。代表的な成果として、ルテニウムイオンにポリピリジン系配位子とホスフィン系配位子が配位した金属錯体を用いることで、反応系中に光捕集サイトならびに触媒活性サイトを共存させた二機能ハイブリッド型の触媒を開発する手法を確立した。その結果、高効率な分子性二酸化炭素還元触媒を創出することに成功した(J. Am. Chem. Soc., 2018, 140, 16899)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、光あるいは電気化学的刺激により金属錯体触媒を狙い通りに活性化し、生じた活性種を活用した独創的なハイブリッド触媒系の構築を目標とし、以下の2つの課題を設定した。 課題(1):光/電気化学的刺激により活性種を自在に作り出す手法の開拓 課題(2):光/電気化学的刺激をトリガーとするハイブリッド触媒系の構築 研究実績の概要でも述べた通り、上記の2課題の両者において、一定の成果を得ており、本研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、安定小分子を原料に高付加価値分子を効率的に合成可能なハイブリッド触媒系の創出を目指し、研究を展開する。今後の研究計画について、年度ごとに示す。 平成31年度:平成30年度までの研究により得られた触媒活性種のオンデマンド生成手法をハイブリッド触媒系に活用し、光化学的刺激/電気化学的刺激をトリガーとする独創的なハイブリッド触媒系の構築およびその最適化を行う。平成31年度の研究では、水の2電子還元反応ならびに二酸化炭素の2電子還元反応に焦点を絞って研究を進める。本研究では、従来の反応系で必須となる水素源や電子源となる犠牲試薬を利用することなく、外部刺激を加えるのみでエネルギーキャリアの効率的な合成を行うことができる極めてクリーンなプロセスでの反応が可能なハイブリッド触媒系の創製に向けた礎を築く。 平成32年度:平成31年度の研究により得られたハイブリッド触媒系をさらに発展させ、二酸化炭素の6電子還元によるメタノール合成・トルエンの水素化によるメチルシクロヘキサンといった、より高度な反応の達成が可能な反応系の創出を目指す。 平成33年度:単純有機分子を原料とする高付加価値分子の効率的合成に挑戦する。オンデマンド活性化により生じた触媒活性種を単純有機分子と反応させ、高反応性中間体を生成させる。そして得られた中間体を引き続く触媒サイクルにより変換し、高効率な自在分子変換系の構築を目指す。
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